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なんとも言えない見えない力

作者: 斉藤独尊

1日前から雪が降り続いて、唇はいつもより少しは赤みを帯びている。外は電飾でエロティックな雰囲気を出し、いつもの駅前通りはカップルたちがざっと見ただけで、5組は目に入る。


そろそろクリスマスだね。と女は呟いた。こたつでゆっくりしている私に向かって言ったのだ。私は意味など深く考えないで、スマホでゲームをしながら、頭を上下に動かすだけ行動した。こたつの暖かさで、わたし達カップルは穏やかな時間が流れているとわたしは思っていた。そうだ、明日クリスマスプレゼントを買いに行こう。わたしは心の中で立ち上がったように思いついた。


そろそろクリスマスだね!わたしは呟いた。男は何も言わない。頷いただけだった。もう勘弁してほしい。私はもうそろそろ結婚を考えているのに。相手が何を考えているのかわからない。付き合って3年が経って私は25歳。男も同い年。もうそろそろ結婚してもいい年だというのにその話は触れずにいた。付き合った記念日も私の誕生日も男は仕事で帰りが遅くなったことで私は男に愛想をつかしていた。しょうがない。明日1人でクリスマスプレゼントを買いにでも行こう。私は心の中で呟いた。私は最近なぜかしょうもないことで頭にきてしまう。体調のせいか。


次の日男はネックレスを見に行っていた。うわ。高すぎる。

呟いたのと同時に女の定員さんから話しかけられた。

彼女さんへのプレゼントですか?

笑顔で言っているが、男から見たら営業スマイルがバレバレでこのまま話を聞かせれたら買う羽目になる。なんとかして会話を自分のフィールドに持ち込もう。そう男は考えた。

そうなんですよ。クリスマスだし、飛び切りに彼女に似合うやつを買ってあげたいなって思ってるんですよ。

男も笑顔で会話を続けた。すると定員さんは

じゃあ、こちらなんかいかがですか?

出た、マニュアル通りの返しで高いのを買わせる作戦だ。その手には引っかからない。

わあ、良いですね。あっちにも良さそうなの見つけたんで、あっちの方見てきますね。

うまく定員から逃げた。男の勝ちだ。男はあえて高い方のネックレスを見に行った。でも、何買うのか決めてもいない。

男は一回外に出て、違う店に行こうと歩き出した。子供がぬいぐるみを持って嬉しそうに走っていた。親に買ってもらったのだろう。お父さんと思われる人は笑顔で子供の後ろをついていきながら、見守っている。男は思いついた。一直線に店に入った。


女は友達と買い物をしていた。雑貨を見て、自分の化粧用品を自分へのプレゼントとして、ちょっと高めのものを買った。女は初めからプレゼントを決めていた。マフラーだ。もうプレゼントの買い物を済ませたので、彼女は当てもなく違う店、違う店と入って見歩いて、そして出ての繰り返しを4回ほどした。店を出たところの近くにはキッズコーナーがあり子供達はそこで遊んでいた。滑り台をするもの、スポンジが敷き詰められているところで走り回ったり転げ回ったり、足を取られて倒れるもの。

女は思い立った。あ、そうだ!女は友達と一緒にあるところに向かった。


クリスマス当日、男と女は料理を食べていた。男はいつも通りの顔をしていて、女は少し寂しげでいた。

外はホワイトクリスマス。雪が妖精のように舞い降り、地面にゆっくり着地をする。人々を見守るようにゆっくりと舞い降りてくる。男と女は外で歩いていた。あ、なんだろう。この気持ちは。雪のせいか、クリスマスのせいか、はたまた外が賑わっているせいか、男女には振動の鼓動が早くなるのを感じていた。


男は突然に結婚しようか。と言い放った。2人には外が静寂に包まれたかのように周りの声が聞こえなかった。女は男に抱きつき、ありがとう。その一言だけ言った。女は泣いているのか、寒いのか、顔は赤くなっていた。男は買っておいた、指輪を女につけてあげた。それは雪と同じくらい綺麗で、光っていた。クリスマスが2人だけの空間を作った。そこには温かいぬくもりを感じた空間だった。


そして男はもう一個プレゼントを買っていた。それはベビーカー。まだ子供もいないのに。


また、女もベビーカーを買っていた。女はベビーカーを見せてお腹に子供がいること、それに男に結婚を諭そうとしていたが、意味はなかった。


2人はこの事実がわかった時にちょっとした喧嘩をした。それはそれは愛に満ち溢れている喧嘩だった。はじめての夫婦喧嘩、それは子供のためのベビーカーを相談なしにそれぞれが買ってしまったこと。

子供はどっちのベビーカーに乗るのかな。


三年後、わたし達は子供達とピクニックに来ている。子供達は元気にお父さんとサッカーをしている。空気が透き通っていて、体にその空気が入ってきて、体が透き通っていく感じがする。え?二つのベビーカーの話?見ればわかるじゃない?子供達よ。双子ちゃん!ベビーカーは二つ使うことになった。もう使ってないけど。倉庫には二つのベビーカーがほこりをかぶっている。


子供には力がある。物理的な意味ではない。結婚する前の冷めた関係も夫婦になった後にも良くも悪くも心をつなげていく力が。

子供には力がある。精神的に私たちを強くしてくれる力が。

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