何回目の今日
誰かが死ぬほど生きたかった今日を
平気で無駄にすることだってできる
誰かが大事に温めてきた想いを
無情にも踏みにじることだってできる
朝、光を浴びる
1年に365回、新しい光に照らされて、
正常化された街の風に撫でられて、
めぐる季節の息遣いを確かめている
いつか登ろうと夢見た高い塔
「秘密基地」と名づけて入り浸った広い空き地
夜の公園で見上げた怪しげな月
もう自分とは関係なくなった学校のチャイム
朝を、昼を、夜を駆け抜けて、
降り注ぐ矢に射抜かれないように、
滲んだ血に気づかないふりをして、
時折面影を探したりして
誰かが死ぬほど生きたかった今日は
自分にとってもそうだったのだ
自分だって紛れもなく生きたかった
死んでもいいなんて冗談でも思っちゃいない
僕を追いかけていた月光はやがて消え、
世界は静かに色づき始める
リセットされていた世界は、
6825回目の「今日」に動き出していた