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~悪夢の後の淡い幸せ~
瞼を持ち上げると、そこは自分のお屋敷の薔薇園だった。まぁ私ったら、これは夢なのに…。どうしてかしら。こんな夢なのに…涙が止まらないわ。
しばらく考え込んでいると、恋人がこちらに近づいて来るのが視界に入った。涙を拭って、私は急いで駆け寄った。「お嬢様、探しましたよ」執事である恋人の顔を見ると、とても安心するのは好きだと思えるから。
「私ね、アリスになりきってみたの!お昼寝して、不思議の国に行けるかどうか試したかったのよ!」ニコニコと微笑んで見せれば、ぎゅっと抱きしめられる。「不思議の国に参られるのでしたら、是非私も貴方とご一緒に」私も抱きしめ返した。「特別ご招待よ」あんな残酷な夢を見たことは、胸に内緒に閉まっておこう。今はこの恋人を大切に、そしてこれから何があったとしても、絶対に離さないと決めた最愛の人に誓うキスは、ハチミツのように淡い日差しに溶け込んだ。