ページ.2 フェスタ-3
シオンちゃんしてん、フェスタへんそのさん。
ヴィオさん!?
ロベリアさんのパンチがヴィオさんのおなかにつきささる。
苦しそうなかおだ。ヴィオさんがあそこまでおいつめられてるなんて……!
早くどうにかしないと……!
「どうした? 気持ちが浮ついてるぞ? よそ見をするんじゃない!」
「くぅ……っ!」
だめ、ブロードさんがつよすぎる……!
これほど剣のあつかいに長けている人にであったことがない。けいけんぶそくだ……!
わたされたぶきがダガーナイフで良かった。辛うじてだけどうけながせる。でも……この人ぜんぜん本気じゃない。わたしが相手だからてかげんをしてくれてる……!
これじゃ長くもたない……かてないよ……。
ヴィオさん……どうしたらいいの……? いつもみたいにおしえてよ……!
「……シオン。君はヴィオラがいないと何もできないのか?」
「うぅ……!」
「命令されて動いた方が楽か?」
ブロードさんはわたしのこうげきをよけながら、わたしのおもいを言い当てる。まるで心をのぞかれてるみたいに。
「っ! だって、わたしはずっとそうやって生きてきました!」
あの「ろうごく」の中でも、それだけが正しい生き方だった!
それしか知らない。それ以外をこなせるじしんがないから。
「それじゃ君をこの先へ進ませる訳にはいかない。故郷へと帰るんだ。その方が安全だし何より幸せだろう」
それは……いやだっ……! あの森をぬけたときから決めたんだ。
ヴィオさんはわたしを助けてくれた。力になってくれた。いっしょにいるって言ってくれた。
だったらわたしも助けたい。力になりたい。いっしょにいたい……っ!
「やだ……。やだよぅ……。ヴィオさん…………」
「自分で決めろ! シオン!! お前は何がしたいんだ!?」
わたしは何をしたいの?
そんなの――。
「――決まってる」
「っ!?」
何かをかんじとったのか、ブロードさんが一歩あとずさる。
「ブロードさん、気をつけてくださいね。わたし、おさえられないと思いますから」
「ああ。元よりそのつもりで参加した。思いっきり来い、シオン」
「解放――すてーじ、つー」
――解放。ゆいいつわたしがとくいなまほう。体をけものにちかづけるまほう。
これまでどおりじゃだめ。さらにはやく。もっと、もっと。
さいぼうまで変わっていくかんかく。今までとはちがう。もっとほんしつてきなへんか。
きっと見た目も大きく変わってるんだろう。目の前のブロードさん、おどろいてるから。
「なるほどな……。君の魔法は『変化』じゃなく『進化』だったわけだ。格好良いじゃないか」
「ふふ、ありがとうございます。でも、すごいのはこれからですよ?」
二足じゃない。四足。ぶきをにぎったまま手足をじめんにつける。これがさいそくの形。
ふみだした先の世界はじかんが止まってるみたいだった。
いっしゅんでブロードさんの剣のまあいに入る。ここまで来たら振りぬけない。
まだブロードさんはちょっと前までわたしがいたばしょを見てる。
すかさず、一振りっ!
「くそ、目で追えな――くうっ! これほどまでか!!」
ぎりぎりでふせがれた。ほとんどかんで。さすがはブロードさんだ。こんどけいこをうけたい位のセンス。ちょくごに体当たりできょりを取らせられる。
「急に強くなりすぎだろ……。ちょっとは良い所見せさせてくれよ……」
「えと、ごめんなさい。でも次で終わりです……!」
いちどめと同じ。でももっとふかく、もっとはやく。
ふところに入って、こんどはいきおいをいかしたまま、かいてん。
手にしたダガーナイフをさかてでもって――ふりきるっ!
「う、ぐっ!?」
いわばにたたきつけられて、ブロードさんがぐったりとうごかなくなってしまう。血はながれてないけど、ぴくりともうごかない。
「あ、わわっ! だ、大丈夫ですか!? わ、わたしやりすぎた……? ブロードさん! おきて下さい、ブロードさんっ!?」
『ブローディア・クグロフ。気絶。規定により戦闘区域より離脱させます』
「あ……」
アナウンスがなると、いしきのないブロードさんがまほうの光に包まれてきえちゃった。
きぜつしたらちりょうしつへ行くんだよね……。大丈夫かな……? けがしてない……よね?
あとでちゃんとあやまりに行こう。
でも、これで……!
ヴィオさん……わたし、やりました。
だから……ぜったいにかってください……ね――。
編集中でさえ読み辛いと思うんだから読者の皆さんはもっと読み辛いと思います。ここまで読んでくれてありがとう。
でもこうしないと文字を勉強中なシオンちゃんを表現できないんです。ごめんなさい。
どうでも良い設定コーナー、今日はあまりいいのが浮かびません。
折角シオン視点なので彼女の設定でも書きましょう。
ここまでの話で分かる通り、彼女はかなりの綺麗好きです。特別獣人種や半獣人種が綺麗好きというわけではないので、これにはちょっとしたストーリーがあります。
昔々、まだヴィオラと出会うよりかなり前。薄暗い屋内の檻に入れられてた彼女はとても不衛生でした。檻から出たこともなく、体を洗うという概念すら知らなかったため、定期的な洗浄でも水を頭から浴びるだけの毎日……。
しかし、ある日看守に言われます。
「お前は香ばしい香りだなあ! ガッハッハ!!」
ちょっとアレな看守です。別に特段彼女のみが臭かったわけじゃありません。だいたいみんな同じくらい臭かったので特に深い意味もなく、彼女の反応を見ようとからかっただけでした。
しかし、女の子に言う冗談としてはかなりの衝撃度。どうすれば良いのかさえ分からぬまま、その日は正体不明の敗北感を前に酷く落ち込んでしまいました。
そこから彼女の綺麗好きは始まります。普段は声も聞きたくない看守や奴隷商人の立ち話に耳を傾け、「清潔」という概念を手に入れた彼女は、後日看守に「お日様の香りがしやがるぜ……!」とお墨付きを貰うほどになりました。それからしばらくは「お日様の子」として看守間で有名になります。なんだ、看守も割とほのぼのしてるじゃん。
髪の手入れはヴィオラに教えてもらうまで知らなかったからボサボサですけどね。
あ、アザミは割とヴィオラに似てズボラなので臭いです。かなり。
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