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Page.8 フェスタ-2

 フェスタ編そのに。

 いつもと比べたら短めです。

 私には彼女と出会うまで友達と呼べる存在がいなかったかもしれない。

 落ちこぼれと罵られ、蔑視されてたからじゃない。ただ、友達を作る意味を見出せなかったから。どうせここから抜けるからそんなの必要ないって思ってたんだ。

 私が本当に望んでたのは友達じゃなくて、家族だったんだから。

 

 そんな私にもずっとくっついてくる女の子が一人だけいた。

 私の何がそんなに面白かったのか、学園の中でも外でもずっと一緒。仕舞いには私の暮らしている宿舎の隣室に引っ越してくる始末。良いとこのお嬢様のくせにと出会ったばかりの頃は不思議に思ってた。

 私の想いなんて知らないくせに、遠慮なく踏み込んでくる変なやつ。


 でも、そんな彼女がいたからこそ、四年間をここで過ごしていけたのかもしれない。



「まさか、決勝が第四階級グレード・フォー同士になるなんてね。先輩たちに僻まれるんじゃない?」

「言いたい輩には言わせておけばいいでしょう? この祭典では力が全てを決するのだから」

「あはは、確かにそうだ」


 フェスタ決勝戦。

 勝ち上がってきた相手は私の良く知る相手、ロベリアとブロードくんのペア。


「こうして刃を交えることが出来る機会に感謝してるわ」

「私も。帰ってきたのがたまたまフェスタの時期でよかったね」


「……よ、よろしくおねがいします。ブロードさん」

「ああ、よろしく。こうして君と刃を交えるのは初めてだな。良い試合にしよう」


 設定されたフィールドは荒野。見晴らしがよく、パトリア姉弟戦のような隠密&奇襲作戦はとれない。岩場の陰に隠れるくらいは出来るだろうけど、向こうの魔法系統を考えると旨味はあまりない。

 ロベリアは強化を得意とする強化魔法使いエンハンサー

 ブロードくんは属性を纏った魔法剣を扱う生粋の剣士。

 私だけが遠距離戦を選択する方法はあるが、近接最強のブロードくんがいる以上、まず距離を取らせてもらえないだろう。そんな単純な相手じゃないことは誰よりも私がよく分かってる。この二人とは昔、幾度となく戦ったんだから。


「じゃあ、始めよっか」 

「では、私の全力をもって相手して差し上げましょう」


 魔法の詠唱を始めるロベリア。

 始まる。決勝戦が。この学園のトップを決める戦いが。


「シオンちゃん! ブロードくんを全力で抑えて! 私はロベリアを速攻で落とすっ!!」


 ブロードくんが強化魔法エンハンスで強く成りきるまでにロベリアを倒す!

 その後にシオンちゃんと二人がかりでブロードくん。これが現状とれる最適解だ!


「了解です!!」


 向こうもそれを織り込み済みなのか、初手は私たちを分断するような結界魔法を唱えてきた。二対一でロベリアを攻撃されたら勝ち目がないと考えてのことだろう。それは裏返せば、私と一対一なら勝算があるという事。舐めやがってっ!

 だったら最速で――。

 銃を構え、引き金を引いた指に違和感が走る。


「あれ?」


 撃てない。ここに来て故障……? いや、指は確実にトリガーを引ききっているし、シリンダーも一発分回転してる。考えられる可能性……弾が入ってない?

 普段は手で込める弾丸。だけど今回は魔法製だから装填するのを目視していない。


「なにをしたのロベリア!」

「驚いた? この結界の中では魔法が使えない・・・・・・・・。それどころか範囲内、つまり私とヴィオラ、貴女の魔力は逐次消費されていくの」


 やられた……!

 魔法弾を撃ち出すイメージが霧散してく。銃はもう使えない……!

 この時点で私は攻撃速度による優位が封じられた。

 それが意味するものはとてつもなく大きい。そもそもの話、魔法使いというのは足りない能力を魔法によって補っている。見方を変えれば魔法とはすなわち剣や盾のような装備と同じなんだ。たった今装備を全て奪われた私は、丸裸同然。

 

「確かに貴女は魔法の天才かもしれない。応用力とセンスだけなら学園長も超越するほど。でも――」

 

 彼女が何を言わんとしているか、最後まで言われなくとも理解した。

 ロベリアに背を向け結界の領域外へ向けて全力で走る。形振りなんて構っていられなかった。

 この中にいたら……確実に負ける!


「魔力量はどうかしら?」


 私が圧倒的に他の魔法使い達に劣っている点――魔力の最大量。

 人は元より魔法が使えない特例を除いてほとんどが自身の最大魔力量を持っている。最大魔力量は特訓すれば僅かに上限は上昇するけど、まず生まれたまま変化しない。私はそれが極端に少なかった。

 入学当初から落ちこぼれだと言われ続けた魔法を扱う者において致命的過ぎる欠点。


 ――その魔力量、およそ常人の十分の一。


 自然界に溢れている魔力から力を借りることが出来る、特例中の特例である起源魔法は別として、普通の魔法を延々撃ち続けるという競技があるなら私はこの学園でも下から数えたほうが確実に早いだろう。つまり、このまま結界の中にいたら敗北は必至。そして私が負ければシオンちゃんは二人を相手取らなきゃいけない。今までの多対一とは話が違う。単身でブロードくんを抑えているだけでも大健闘なのに、だ。


 左手の拳を強く握り、助走をつけて力任せに結界を思いっきり殴る。ぐしゃりと嫌な音がした。

 だめだ……素手じゃ壊せない。透明な壁が私の行く手を阻んで通さない。


 助けは来ない。シオンちゃんはブロードくんを抑えるので精いっぱい。こっちまで来て外から結界を壊す余裕なんてあるわけない。ブロードくんももちろんそれを許す気はないだろう。そうならない様に立ち回ってるはずだから。

 最初っからこれが目当てだったんだ。私とロベリア、シオンちゃんとブロードくんの二組に分かれることまで計画通り。その上で自爆覚悟で私の弱点を突いてきた……!


「やってくれたなぁー……っ!」

 

 じりじりと間を詰めてくるロベリアに吐き捨てるように恨み節を投げつける。


「どうしても貴女と戦いたかった。今日という日を逃したらもう二度と巡り合わない気がしたから」

「魔法武闘大会の決勝で魔法を禁じるとか大ブーイング間違いなしだよっ!」

「関係ありませんわ。外野が何を言おうが私たちには関係ない。違う?」


 打開策はただ一つ。魔法抜きの肉弾戦でロベリアを気絶させるほかない……!

 そしてロベリアがこの策をとってきた以上、彼女には勝算がある。素手でも私に勝てると踏んでこの作戦を実行に移した。


「歯を――食いしばりなさい」

「ぐっ……ぁっ!」


 鋭い握りこぶしが私の横腹をねじ切る様に貫く。

 やっ……ば…………!

 

「ヴィオラ。貴女がどうしてもこの先に進まなくてはいけないというのなら、力を示すしかない」

「…………お、鬼めぇ……っ!」


 折りかけた膝を伸ばしてロベリアから距離をとる。

 視界が明滅しかけた! 危うく一撃で落されるところだった!


 ロベリア……私に体術で相手しろって言うの?

 シオンちゃんならともかく、運動はからっきしのこのわたしに。

 あなたなら魔法で決着を付けたがると思ってたのに。


「無理だというのなら、貴女はあの子・・・にも勝てない。違うかしら?」

「くそ……! 言わせておけば……っ!」


 そういうことか。なら……やるしかない。

 左手はさっき壁を殴った時に潰れてる。足もまともに動くか怪しい所。

 それでも、やるしかない。ロベリアを倒す。

 倒さないと……旅は終わり。

 

 ――体内魔力消費までの残り時間、あと三分。

 いつもの一口設定コーナー。

 

 ここまで割となんでも出来る主人公として書いてきましたけど、今回はヴィオラの欠点について掘り下げてみました。

 落ちこぼれと呼ばれてたのはこの辺が原因ですね。シャトルランを超丁寧に誰よりも速く十回走れる(十一回目は走れない)様なピーキーさなので同期の生徒からはかなりバカにされてました。欠点を考慮する必要のない起源魔法を要所要所で自身の意志で扱える様になってからは周囲の評価は一変します。ちなみに欠点について知っているのは同期の生徒と一部の教師のみです。更にちなみに彼女の三回の昇級の内、二回はフェスタ上位入賞によるものです。


 とある事情で自身についてかなりのコンプレックスを持ってるので、周囲の評価と彼女自身の心の内にある自己評価にはかなりの乖離があります。幼少期などは特に自己否定的な考えが激しかったので少し荒んだ性格でした。でも今では楽観的に物事を捉え、たまに自虐(だと周りに気づかれていない)を吐いたりするくらいには明るく元気な子です。主にシオンちゃんとパン屋さんのパンプキンパンの影響が大きいです。良かったね。

 ふう……今回も設定を昇華してしまった……!


 こんな場所にまで目を通していただいてる方、ありがとうございます。貴方の存在でこのコーナーは存続してます。半分ウソです。



 ブックマーク、感想、ご意見など頂けるとうれしいです。頑張れます。

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