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楽しい転生  作者: ぱにこ
91/122

59話

 冒険者の方達の自己紹介が終わり、さあ! 出発という時に殿下が颯爽と現れました。

 白馬に跨り、闊歩する姿は遅刻してきた人間とは思えぬほど堂々としています。

 やっぱり、殿下って王子だけあってキラキラしてるわね。

 しかしなんだろう、この空中に舞うキラキラは?!

 ゲームでは、然程気にならない視覚効果でも、現実だと摩訶不思議に感じてしまう。


「うん? どうしたの? ルイーズ」

「いえ、このキラキラとした粒子が掴めるかと思って…………」

「ふ~ん…………(パシッ)掴めないね………」

「ええ」


 半ば無意識にパシッと手を出したものの、キラキラ粒子は掴めませんでした。

 フェオドールも然り。

 舞うキラキラに気を取られた私に釣られ、ララが手で空中をパタパタ扇いでます。

 扇いだら、散るって事はやっぱり粒子なのかしらね。

 

 あら、キラキラに気を取られている内に、殿下が先頭に到着した模様です。

 殿下の周りをグルっと騎士さん達が取り囲んだ後、学園長が号令を掛けました。


「それでは、出発します! 」


 ふむ。キラキラ粒子の解明は、暇で気が向いた時にでもする事にして、規則正しく並び行進しましょう。

 

 ちなみに、殿下と近衛騎士団長であるダリウスパパを含む騎士さん達は先頭で、その他の子供達を見守る役目は冒険者の方が担っております。

 2組の子供パーティにつき、1人の冒険者の方が担当。

 私達のパーティを担当してくれるのは、Bランク冒険者であり、冒険者登録時に『冒険者イロハ』を教えて下さった内の1人、銀髪のシモンさんです。

  

「いやぁ。貴族の坊ちゃんや嬢ちゃん達ばかりだと聞いて身構えていたが、嬢ちゃん達で助かった」

「いやぁ、シモンさん。私相手に気後れしないのであれば、身構える必要もないでしょう」

「? 」

「? 何をきょとんとなさってるのですか? そんなお顔をされても、あまり可愛くはありませんわよ」

「っつ、ち、違うっ! ん、あまり? いや、で、どういう意味なんだ? 」

「あ、ああ。父が宰相でもある侯爵家の私に気後れしないのでしょう? なら、問題なしですわ」

「…………言葉にされると、気後れしそうになるが……でも、嬢ちゃんだとしないのはなんでなんだ? 」

「さぁ? 不思議ですわね」

「ああ」

「そうそう、私に気後れしないと言っても、先頭にいらっしゃる王太子殿下には十分敬意を払い接してくださいね。そうでないと…………」

「そうでないと? …………(ゴク)」

「首が飛びますわ! 」

「ひっ」

「ふふ。半分、冗談ですわ。殿下も気さくな方ですし。相当、無礼でない限り咎めたりはしませんわ」


 多分ね…………。殿下はともかく、周りを取り囲む騎士さん達がどう出るかわからなもの。

 

「先頭集団には、あまり近づかない方が良さそうだな………」


 なにやら、ぶつくさ言っているシモンさんはさておき。

 寝坊して、鍛錬をして来なかった私は、移動しながら鍛錬をする事にしました。

 まずは、マナを循環させることから始めましょうか。


「??? 嬢ちゃんは何をやってんだ? 」

 私の鍛錬姿を見たシモンさんが、素朴な疑問を投げかけます。

 それに答えるのは、フェオドール。

「あれはね。体の中でマナを循環させる為の瞑想だよ」

「へぇ…………あれは、みんな出来るのか? 」

「ううん。あれを出来るのはルイーズと侯爵様くらいだよ。僕も出来る様になりたいんだけど、闇属性が苦手だからね…………」

 

 そう、フェオドールは闇属性が苦手だものね。

 それを聞いたララが、シモンさんとフェオドールの会話に加わります。


「私は闇と風属性の素質があるので、ルイーズに習ってるんですよ。まだ、少ししか浮けないけれど」

 まだ、教え始めて1週間にも満たないのに、ほんの少しでも浮かべるって才能あるんだよ。

「少しでも浮かぶなら、才能あるって事だよ」

 私の脳内とシンクロしたのか、フェオドールがララに同じ事を告げました。

 さすが、幼馴染ね。

「そうなら嬉しい…………また休憩の時にでも、練習してみます! 」

 俄然やる気になっているララを見て、カリーヌが呟きます。

「いいですわね、ララは。私は火と風属性しか使えませんので羨ましいですわ…………」

 そんなカリーヌに対して、ダリウスが言葉を挟む。

「しかし、カリーヌも得意属性である炎系の魔法を教えて貰ってるのだろう? 」

「ええ。最近、教えていただいたのは『炎の鞭』ですわ。でも、使用する時の高笑いが恥ずかしくて……」


 そう。私がカリーヌに教えた『炎の鞭』は、その名の通り、短いロッドの先に炎の鞭を発現させる魔法である。

 鞭と言えば高笑いと決めている私は、カリーヌに鞭を振るう際は『オホホ』をセットで行う様に指導した。

 カリーヌ、恥ずかしかったのか…………炎の熱気で頬が赤いのかと思っていたけれど、違ったのね。


「…………見た事はないけれど、高笑いは必須? 」

「「必須ですっ! 」」


 素朴な疑問を投げかけたダリウスに、私とララの返事が重なった。

 ララ、貴方も私と同じ気持ちで嬉しいわ。


 さてと。マナの循環も良くなったし、次は各属性を纏ってみましょうかね。

 

「今度は何を始めたんだ? 」

 今度も、疑問を投げかけるシモンさんの問いに答えるのはフェオドール。

「次はね、各属性を順に纏って、滞りなく使える様にする鍛錬だよ」

「へぇ、これも嬢ちゃんと侯爵様だけが出来るのか? 」

「う~ん、得意な属性を纏うだけなら、みんな出来るけど。全属性となると、ルイーズと侯爵様だけかな?! 」

「それじゃあ、俺も得意属性なら出来るって事か? 」

 

 すごく嬉しそうな声色で食い付くシモンさん。

 瞑想中の私の体をゆっさゆっさと揺さぶる。

 やめれ。


 その状況を見兼ねたフェオドールが、そんなシモンさんの手を払い除けてくれた。

「駄目だよ、シモンさん。瞑想中の体に触ると、魔力が暴発しちゃうんだからね」

「えっつ!! 」


 えっつ?!?!

 閉じていた目をカッと見開き、フェオドールを凝視する。


「嘘だよ~っ」

 おいっ!

 悪びれもなく、ハハハと笑うフェオドール。

 この、小悪魔めっ。

 

「もう、フェオドールったら。私まで騙されたではありませんか」

「おう、びっくりしたぜ」

「ルイーズは暴発しないのをわかっているんだから、騙されちゃ駄目だよ」

「それはそうだけれど。フェオドールがあまりにも真剣な声色で言うから」

「へへ。だって、鍛錬中に邪魔をされたら困るでしょう。脅かすつもりで言ったもん」

 フェオドールの配慮って訳ですね。

「ありがとう、フェオドール」

「どういたしまして。それより、鍛錬はまだ続けるんでしょう? 」

「ええ、もう少し」

「じゃあ、頑張って」


 フェオドールが拳をあげて、激励してくれています。

 では、あと少しなので頑張りましょうかね。

 

「しかし、プカプカ浮きながら、移動してる様を見るって奇妙なものだよな」

 そんな事をしみじみと呟くシモンさん。

 今更ですか!?

 …………しかし、よくよく考えると、目立つ?


「ねぇ、これって目立ってる? 」

「大丈夫じゃない? ルイーズだもん」

 首を傾げ、そう断言するフェオドール。

 私だから、大丈夫って言う定義がわからん。

「そうですわね……私達が、囲って見えない様にしているので、大丈夫だと思うのですが」

 カリーヌの言葉を聞いた私は、クルクルっと辺りを見回しました。

 ふむ、後ろにはダリウス。左右にはララとカリーヌ。

 前は、フェオドールとシモンさん。

 うん、見えなくなってるね。

 ちなみに、私達は最後尾なのですよ。

 何故かって?

 殿を務めるのは、強者たる者の役目。

 その大任を担うのは、私達の他いないでしょう。

 …………というのは、建前であって、のんびりと進みたいから、ズルズルと最後尾に移動したのが真実です。

 無論、最後尾である以上、脱落者を保護したり、周辺の警戒は怠りませんよ。


「しかし、胡坐をかいた体勢のまま浮かんで、くるくる回ったり、前に進んだり、目を閉じてても逸れずに済んでるのは、何故なんだ? 」

 奇妙と言ったり、不思議に感じたりするシモンさんの問いに答えるのは、またまたフェオドール。

「それはね、糸状にしたマナを僕に括り付けてるからなんだよ」

 解説を幼馴染に任せっきりですわね。後で、美味しいお茶と菓子でお礼をしましょう。

「へぇ。要するに、縄を括り付けて引っ張っていってる感じか? 」

「うんうん、そんな感じかな」

「やっぱ、貴族様だけあって、魔法には長けてるってことか」

「いえいえ、貴族とかは関係ありませんわ」


 朝の鍛錬を終えた私は、胡坐から正座に変え、浮かんだままシモンさんにそう告げます。

 繋げていたマナを解いたのが分かったのか、フェオドールが口を開きます。

「鍛錬は終わったの? 」

「ええ、終わったわ。先導、ありがとう」

「どういたしまして」

 微笑むフェオドールに微笑み返した後、シモンさんに話の続きをします。


「貴族だからとかは関係なく、生活魔法を使える人であれば、鍛錬次第でこれくらいできるようになるんですよ」

「それは本当かっ」

 いい食いつきっぷりです。

「ええ、シモンさんは………銀髪に相応しく、風と光が得意属性ですね」

「えっ、ええっ! 銀髪、髪色って関係するのか?! 」

「いえ、全く関係はありませんが、似合ってるって意味で」

「…………そうか」

 何故か、しょんぼりするシモンさん。その姿を見て、皆がクスクスと笑っています。

 Bランク冒険者であっても、子供の様に好奇心が旺盛で、反応もちびっ子みたいですわ。

「シモンさんは、魔法が不得手ですの? 」

 体の中に流れるマナは滞っている風には見えないけれど、容量が少ない。

 このマナ量だと、疲れやすかったり、傷の治りが遅いなどの弊害がある。

 これは、筋肉だけでどうにかしてる風よね。

「いや、俺は…………生活魔法すらまともに使った事がない」

 やはりね。

「魔法を使ってみたいのですか? 」

「まあな、使えるなら使ってみたいな」


 では、究極魔法の出番ですわね。

 ニヤリと笑う私を見て、察した皆が『あれだね(ですね)』と言う顔でコクンと頷く。

 防音結界発動! 浮遊魔法発動! 究極魔法、発動準備良し!


「お、おおっ、何だ? 浮いてるっ」

 体が浮いて、少々嬉しそうな反応をするシモンさんですが。

「今から、魔法を使えるようにする、ある()()を行いますね。お覚悟を」

「えっ?? ええーーーーーっつ?! ギャアーーーーーっつ!! 」

 結界内部に、悲鳴が轟く。

 うんうん、良い絶叫。では、なく。

 いい感じでマナが巡り始めていますわ。

 若いと少しの治療で効果抜群ね。

 

 …………。

 叫びながらのた打ち回っているシモンさん。

 体が大きいから、時々結界からはみ出しそうになるのを皆で突き戻します。

 これ、説明しにくい絵面だから、最後尾で良かったわ。

 そろそろ頃合いね、魔法を止めましょう。

 すると、疲労困憊なシモンさんが恨めし気にこちらを見ている。

「………………」

 あら、恨み言でも言うのか思ったけれど、何も仰いませんね。

「体の調子はいかがですか? この治療、始めは辛いですが、効果は抜群なんですよ。マナの循環も良くなっているし、今なら、魔法を発動出来るかもしれません」

「ほっ、本当かっ! 」

 シモンさんは、恨めし気な表情から一転。嬉々とした表情に変化します。

「はい。では、簡単な魔法から試してみます? ん~初心者ですし『ウィンドカッター』がいいですわね」

 防音結界を防御結界に変え、誰も居ない後ろに向かって、お手本を飛ばします。

 目に見えないとイメージし難い事を踏まえて、色付き『ウィンドカッター』ですわ。

 これは幼い頃、フェオドールと一緒に訓練をしていた時に気付いたこと。

 

「おおっ!! すげぇっ! 」 

「さあ、シモンさんもやってみて下さいな」

「おう、やってみるぜっ! 『ウィンドカッター』!! 」

「「「「「…………?? 」」」」」


 …………。

 何も出ません。


「えっと、出ねぇな。あれ、魔法名を叫ぶだけじゃだめなのか? 」


 これは、マナを練る事から練習しないといけない感じ?!


「そうですわね、叫んだからといって、魔法が飛び出す訳ではありませんもの」


 シモンさんに、手のひらに乗せた色付きマナを見せて説明します。


「まず、これを手本にして、手のひらにマナを乗せるイメージをしてみて下さい」

「お、おぅ」

 …………。

 悪戦苦闘しているシモンさん。

 マナを練るセンスが、皆無の様です…………。

 これは生活魔法ですら、ほとんどではなく。全く使った事がないのではないでしょうか。

 見守っている皆も、じれったく思っているのか、イメージしやすいようにあれやこれやと説明しておりますが、シモンさんを余計に混乱させているだけになっています。

 どうしよう、これ。

 私は、ほんの一時、現実逃避した後。

 斯くなる上はと、全身に巡るマナを色付けする事に決めました。

 視覚として捉えたら、マナを出すのもイメージしやすいくなるのではないでしょうか。

  

「シモンさん。今から、シモンさんの体の中を巡っているマナを視覚で捉えられるように色を付けますね」

 私は、そう断りを入れ、シモンさんの体のマナと同調するように、色づけしたマナを流し込みました。

「うおっ! すげぇ! 俺、発光してる」

 確かに、発光しているけれども、喜んでいないでコツを掴んで欲しい。

 この状態は、UMAみたいで目立つからね。


「それが、シモンさんの体に流れるマナです。それを手のひらに集める様に、意識してみて下さい」

「おう! 」


 毎度、返事だけはいいのですが……。

 

「ふんっ、ううぉーっ、とりゃぁっ! 」

 シモンさんの、気合に満ちた声が響く中。見守っていた皆が諦めた様に、頭を振っております。

 駄目っぽいかな。

 長期戦を覚悟した私は、せめてマナを掴む感覚だけでも覚えて貰おうと、見本として手に乗せていたマナの塊をシモンさんに手渡しました。

 すると。

「おっ、おおぉぉっ!! これか、これなのかっ! 」

 おおっ、ここで奇跡が起こりましたよ。

 手渡した以上に膨れ上がったマナの塊が誕生したのです。

 シモンさん、マナを練るコツは掴んだようですわね。

 ならば。

「その塊を使い、先ほど見せた『ウィンドカッター』を放ってみて下さい」

「よしっ! 『ウィンドカッター』っ!! 」

 …………。

 効果音で表現すると、ぼよよんでしょうか?

 マナの塊が弾んで、落ちました。


「「「「「…………」」」」」

「すまねぇ」


 魔法に関して、ここまでセンスのない人に出会ったのは初めてではないでしょうか?

 申し訳なさそうに頭を掻くシモンさんに掛ける言葉が見つかりません。

 皆が、一様にそっと視線を逸らします。


「本当にすまねぇ。ここまでしてもらっといてこのザマじゃあな。合わす顔もねぇや」

 そう言って、シモンさんまで、そっと視線を逸らしております。

 なんだこれ。

 変な空気が漂う中、私は言葉を振り絞りました。


「えっと。…………シモンさん。お気になさらずに。…………今日は、マナが練れただけでも進歩したと考えて、遠征中、頑張って練習しましょう。…………まずは、マナを練るのを日課、いえ、常に意識してみて下さい。後は、ウィンドカッターを放ってる自分を脳内で想像するのです」

 イメトレってやつです。

 これで、少しは上達するといいのだけれど。


「嬢ちゃん………まだ、教えてくれるのか? 」

 強面の冒険者が、泣きそうな顔をしないでくださいよ。

「ええ、もちろんですわ。私で良ければ、遠征中に限らず、時間が合えばお教えいたしますわ」

 ニッコリ微笑んで、シモンさんを元気付けると、とある場所から殺気が飛んでまいりました。

 シモンさんはゾクッとしたのでしょうね。

 声にならない悲鳴を発し、私達の後ろに隠れてしまいました。


「な、なな、な、なんだっ!? Sランク級の魔物が出たのか? 」

 シモンさんは、なにをとんちんかんな事を言ってるのでしょう?

 殺気を放ったのが、魔物であるならば、シモンさんの行動は問題ですよ。

 護衛を兼ねている冒険者が、子供の後ろに隠れたのですからね。


「侯爵様━━━━違った。赤狼仮面さんは、やきもちを焼いてるんじゃない? 」

 仮面に隠された素顔を知るフェオドールが、小声で耳打ちしてきます。

 ちなみに、真実を知っているのは、ダリウスとフェオドールと私だけ。

 カリーヌは父様に会った事がないし、1度会った事があるララも気付いておりません。

 あ、ぴよたろうはバレバレですよ。

 王都テリアでは、人気者ですもの。


 数列前の生徒を護衛している赤狼仮面が、こちらをジッと見つめております。

 父様、楽し気な私達の輪に入りたいのね。

 シモンさんと変わりたくて仕方がないのね。

 でも、殺気を放つのは止めてあげて。

 くじで決まった事なのだから、諦めて下さいませ。

 そう、伝説の冒険者である金狼仮面と赤狼仮面の人気が凄すぎて、公平を期すためくじ引きになったのです。

 結果、父様は私達の数列前、陛下は、前方寄り、ぴよたろうは、何故だか騎士さん達に囲まれ、先頭に居ます。

 仮面越しから凍てつくような視線をまだ送り続ける赤狼仮面。

 ブルブルと震えるシモンさんを捨て置くわけにもいかず、私は意を決して、

「少し、行ってきます」

 そう断りを入れ、父様の元へ走って行き、すぐに戻って参りました。


「ルイーズ、何をしたの? 」

「うん、何をしてきたの? あれ程までの殺気を放って置きながら、今は凄くご機嫌な様子だし」

 私は、小声で話しかけてくるダリウスとフェオドールに簡潔に説明いたしました。

「赤狼仮面さん、素敵です。けれど、私の父様ほどではないわね。って、そう言ってきたのよ」

 きっと、父様は身バレしていないと思っているだろうし。

 後で、実はってな感じで、驚かそうとしているに決まっている。

 なら、私もそれに合わせないとね。

「う~ん……複雑だよね」

「そうですね。複雑ですが、現状では最高の言葉でしょう」

「そうね、同一人物だものね。真実を語られた暁には、もう少し気のきいた台詞を言う事にしますわ」

「それがいいね。僕も、何か気の利いた言葉を考えておこうっと」

「ふふ、フェオドールったら。思いついたら、私にも教えてね。参考にするわ」

「いいよ」

「ダリウスも、何か気の利いた言葉を考えておかないと、金狼仮面さんや赤狼仮面さんの反応次第で、お父様が気を揉むことになるわよ」

「そうですね! 父に心労をおかけする訳にも参りませんし、何か言葉を見繕っておきます。フェオドール、何か、良い言葉が見つかったら、私にも教えて下さい」

「いいよ」


 こうして、殿下を先頭にした大名行列は、途中休憩を挟み、事件や事故もなく順調に進んで行きました。

 魔物除けが施された道に、魔物が出没する訳もなく。

 この騎士を含む、異様な集団? を前にして、盗賊なども身を潜めている始末。

 なぜ、盗賊が、身を潜めているのが分かったかって?

 それは、時々、父様が森の方に駆けて行くのを目撃したからです。

 意気揚々と駆けて行き、満足気に帰って来る。

 あの様子だと、討伐などはしていないのでしょう。けれど、気を失わせるか、戦意を喪失させるかはしたはず。

 真実は父様が身バレしてくれた後、聞いてみる事にします。  

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