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楽しい転生  作者: ぱにこ
54/122

42話

 馬車の後ろに座って、流れゆく景色を見ております。

 これが異世界の景色なのね。

 前世との違いはあまりないけれど…………。

 ふふ、違いといえば奇怪な声で羽ばたいている鳥くらいかしら。

 しかし、まだなの?

 横に座る父様とアルノー先生をチラリと見て軽いため息を吐きます。


「あの、けっかいをいじするのも、つかれますので、とりあえず、うってみてくださいませんか?」

「ルイーズはそう言うが、なかなかに……うぅぅぅ…………」

「そうなのです。ルイーズ様は簡単に仰いますが、自分自身の体ではないので、マナを練るのが難しいのです。んんん……」


「はぁぁぁぁ。わかりましたわ」


 深いため息を吐き、結界を解除いたします。

 これは移動する馬車に合わせて、結界も移動させる面倒な魔法なのです。

 暴発を防ぐための処置だったのですが、必要なかったわね。


「まず、とうさま。とうさまは、ぜんぞくせいがつかえたのですから、アルノーせんせいのとくいぞくせい、つちまほうをしようしてみましょう。つぎにアルノーせんせいは、おもわぬさんじょうが、くりひろげられるかのうせいがございますので、せいかつまほうのみ、ためしてみてください。はい、がんばって!」


 父様は全属性が使えました。ですので、アルノー先生が得意とする土魔法のみを提案。

 アルノー先生には、生活魔法のみを提案しました。チート級の威力を誇る父様の魔法を、初心者であるアルノー先生がコントロールできると思わないからね。

 幼子に刃物を持たせてる気分よ。


「土魔法か。ならば『ストーン・グレイブ』!」


 パラパラパラ


 …………。


 父様の手から、砂利が落ちました。



「……とうさま。はつどうしただけでも、いっぽぜんしんですわ」


 微笑みを浮かべ、父様を励ますと、うっすらと目尻にたまった涙を拭き、微笑み返してくれました。

 なんだか、子供みたいね。

 何事もスムーズに出来た父様ですもの。初めて、挫折を味わっている気分なのかもしれませんね。

 少し、しんみりしていると、アルノー先生が引き攣った顔を浮かべて、手をプルプルさせておりました。

 

「ル、ル、ル、ルイーズ様………コ、ココ、コレ━━」


 わぁ、なんて巨大な火の玉なんでしょう………。


 っっつ!!


「ウォーターーっ!!」


 ジュッ



「はぁ、あぶなかったですわ。アルノーせんせい、なぜ、ひまほうをはつどうさせたんですの?」

「生活魔法と言えば、種火でしょう?!ライトは昼間ですし、必要がないかなと思いまして……」



 …………。



「で、では、みずまほうにすればよかったではありませんか」


「…………あっ、思い至りませんでした。申し訳ございません」


 項垂れているアルノー先生ですが、今回ばかりは反省していただきますよ。

 なんなの、あの巨大な火の玉。見た瞬間、現実逃避をしそうになったわよ。

 あんなものを投げたら大惨事になってたわ。

 本当にもう、めっ!ですわ。


「うっっ」

「おっっ」


 はっ!うっかり、睨んでしまいました。

 アルノー先生、幼女の睨みにたじろがないでくださいませ。

 父様は喜ばないのっ。

 もう……。


「では、きをとりなおして、もういちどやってみましょうか。とうさまは『ストーン・グレイブ』がきちんとはつどうするまで、つづけてください。アルノーせんせいは、みずまほうからはじめましょう」


「はい」「うむ」


 父様はコツさえ掴んだら、難なく発動させるでしょう。

 問題はアルノー先生ね。今度は目を離さないわ。

 じ~っとアルノー先生の手元を見つめます。


 …………。


「あ、あの、ルイーズ様。そんなに見つめられると緊張します……」

「きんちょうしなくてもだいじょうぶよ。きけんがないか、みているだけですもの」

「はぁ。では、参ります。『ウォーター』!」



 バッッシャーーーン!!



 …………。



 ほぅ、これが生活魔法の『ウォーター』ですか。

 まるで、庭プールの水を一気に流したみたいな勢いでしたわ。

 今日はいい天気だし、あの水溜まりと言っては大きすぎるものも、乾いてくれるわよね。

 うん、人的被害も、自然破壊もしていない、大丈夫だわ。


「ルイーズ様……」


 また、叱られると思ってるのでしょうか?

 アルノー先生は、怯えた目でこちらを見ています。

 叱らないわよ。


「きにしなくてもへいきよ。きっと、あのみずたまりもしぜんにかわくだろうし、ね?!でも、アルノーせんせいはマナをねることから、はじめましょうか?わたくしが、おてほんをみせるので、まねてくださいね」


 うん、フェオドールもお手本を見せると上手に出来たし、アルノー先生もきっと上手くいくはず。


「はい、お願いします」

「では、てのひらにマナをあつめてみるのでみてくださいね」


 手のひらにこぶし大のマナを集めます。アルノー先生にも目視できるように、光属性のマナを。


「これは、もくしできるように、ひかりぞくせいのマナにしています。さわってみてください」

「は、はい。あっ、ポカポカとしていて、温かいです」


「マナはめにみえませんが、あたたかさでかくにんできるのです。では、これとおなじものをイメージしてごじぶんのてのひらに、マナをあつめてみてください」


「はい……」


 手のひらを上にして、瞑想するアルノー先生。属性は付与していないので、目視は出来ませんね。

 目に魔法をかけます。

 ほう、ドッジボールサイズのマナの塊が出来ています。


「アルノーせんせい、しょうしょうおおきいので、もうすこしちいさくできますか?」

「はい……小さく、小さく……」


 アルノー先生はそう呟きながら、マナの調節を始めました。

 よしっ!いい感じの大きさになってきたわね。


「ストップですわ。いまのおおきさをいじしてください」

「はい」

「せいかつまほうをつかうのなら、それくらいのマナをしょうひするイメージではつどうすると、しっぱいしませんわ」

「はい。これくらいの消費量でいいのですね。しかし、今まで、マナの消費量などは気に留めておりませんでした」


「はっ?」


「元々、魔法が苦手だったので、自分のマナを絞り出すイメージで発動させていたのですよ……」


 絞り出すねぇ、だから、あんな大きな火の玉や、水が出てきたって訳ね。

 

「アルノーせんせい。ひとそれぞれに、にがてとするものはありますが。がんらい、ひとにはぜんぞくせいがそなわっているのですよ」


「はぁぁぁいぃぃ?」


 アルノー先生は素っ頓狂な声を出し、口をポカーンと開けております。

 父様のお顔でやめて欲しいわ。

 イケメンが台無しじゃない。 

 ……仕方がないわね、補足説明をしますか。


「しらなかったようですね。では、くわしく、せつめいしますね。このせかいでまほうをはつどうさせるには、まほうをふくごうすることが、ひつようふかけつとなっております。ですが、せいかつまほうは、どうです?ほとんどのひとがつかえる、せいかつまほうには『ライト、ファイヤー、ウォーター』がありますね。そして、ひをつよめるために『ウィンド』をつかいます。『ライト』をけすために『ダーク』をはつどうさせますよね。つちまほうは、のうふのかたが、たはたをたがやすのにしようしていると、きいたことがございます。ね、ぜんぞくせいをつかっていますでしょう?」


「…………」


「つづけます。そのことをふまえて、かんがえてみてください。しようできないまほうが、そんざいするのは、マナのちょうせつがうまくできていないからなのです。ケンゾーはかぜまほうがとくいですが、ほかのまほうはにがて。アルノーせんせいは、つちまほうはとくいだけれど、ほかのまほうはにがてですよね。しかし、コツさえつかめれば、しょきゅうまほうは、だれでも、はつどうできるはずなのです」


 一気に説明したから、疲れたわ……。

 アルノー先生は情報の処理が追い付いていないのか、黙ったままだし。

 喉が乾いてきたわね。休憩でもしようかしら?

 そう思っていると、ケンゾーがお茶を淹れて持ってきてくれました。

 

「おじょうさま、どうぞ」

「ありがとう、ケンゾー。いただくわね」


 は~美味しい、染み渡るわ。


 しかし、生活魔法は殆どの人間が使えるのに、初級魔法を使えないと思っている人間が多いのは変よね。

 マナの循環が悪い人やコントロールが上手くできない人、マナを上手く練れないで、得手不得手があるのは仕方がないけれど。

 初級魔法って、生活魔法よりマナの消費は少ないのよ。

 まぁ、これはここだけの話なんだけれどね。こんな話を公開すると混乱を招くと言って、父様に口止めされているの。


「ルイーズ様……では、私も初級魔法が使えるのですか?」


 優雅にお茶を飲んでいると、アルノー先生が話しかけてきました。

 復活したのね。


「ええ、そうですわ。こううんなことに、ぜんぞくせいをもうらしている、とうさまのからだをおかりしているいま、コツをつかんでしまいましょう」


「はいっ!」


 アルノー先生は、今日一番の笑顔を浮かべております。

 しかし、不穏な空気を纏う、その隣の人物に、私は釘付け…………。

 ストーン・グレイブとブツブツ囁きながら、小石を飛ばし続けている父様に。


「と、とうさま??」


「何故、ルイーズはアルノー先生にばかりかまけているんだい?私には、助言もないのかい?『ストーン・グレイブ』っ!!」


 最後に魔法名を大声で唱えた父様の手のひらから、巨大な大岩が現れました。


「けっかいっっ!!」


 ドッコーーーーーーーン!!!


 耳を劈くような轟音と、土煙が視界を遮ります。

 咄嗟に張った結界の内部は、まだ土煙でもうもうとしておりますが、間一髪でした……。


「とぅぅぅうさぁまぁぁあ?」


 引き攣った笑みを浮かべ、下から覗き込むように父様を見据えます。

 

「い、いや、これは、じ、事故だ━━━━悪気があった訳ではない━━━━なぃ…………んだ……」

 

 父様はご自分でも予想外だったのか、冷や汗をかきながら、言い訳をしております。

 結界が間に合ったから良かったものの、これは、お説教が必要ですわね。


「いつも、れいせいちんちゃくで、どんなことにも、たいしょができる、たよれるだいすきなとうさまが、こんなしっぱいをするなんて……ほんとうに、びっくりしましたのよ。ん?あら?あれは、なにかしら?」


 腰に手を当てて、ぷんすかと怒っていると、奇怪な声を発していた鳥が近づいてきました。

 ずっと、馬車の上を旋回していたので、気にはしていたのですが……。



【キェェェェェェエェェェェッ!!】



 猛スピードで急降下してくる鳥は━━━━

 いえ、あれは鳥ではないわっ。


「とうさま、ワイバーンですわっっ!っつ、けっかいっっ!!」


 バシィッッ!!!!


【ギャアァァァァァッ!】


 馬車に衝突する寸前に張った結界にぶつかり、鼓膜が破れそうな程の声をあげるワイバーン。

 本日は間一髪が多いですわねっ!!

 咄嗟の事なのでしょう。私を守る様に父様が覆いかぶさっておりました。

 ありがとうございます。


「ししょう!ワイバーンですっ!どうしましょうっ?」


 しかし、今の父様とアルノー先生は、戦力外です。

 師匠にお任せするしかないと、大声を張り上げ、お伺いします。


「待ってろっ!」


 師匠はそう返事をすると、馬車を停車させました。

 そして、素早く剣を抜き、馬車を降りてワイバーンと対峙します。


「ルイーズは馬車を守るために、結界を張ってろ」

「はいっ!」 


 師匠に言われた通り、馬車全体を覆う様に、結界を張ります。

 あ、後続の馬車の異変に気が付いたのでしょうか?カリンさんとリョウブさんが走ってきました。

 遠くに獣人さん達の馬車も停まっておりますが、大丈夫でしょうか?

 翼を広げると3メートルほどもあるワイバーン。戦闘の余波がいかないとも限りませんよね……。


「とうさま、けっかいはしようできませんか?」

「結界?少し待ってなさい。━━ん、出来そうだ」


「やはり、とうさまは、たよれますね。では、じゅうじんさんたちのばしゃをけっかいで、ほごしていただけますか?」


 入れ替わりで不自由をしているはずなのに、ここぞという時は頼りになる父様。素敵ですわ。

 

「うむ、余波で被害が出るかも知れないからだね。父様に任せておきなさい」


 父様は頼もしい言葉を仰った後、馬車を飛び下り、獣人さん達の所まで駆けて行きました。

 ワイバーンって、目の前で見ると大きいわね……。

 ゲーム画面で見るのとは違うわ。


 師匠がワイバーンの隙を狙っております。あれはケンゾーも得意とする抜刀術ですわね。

 しかし、暴れまわっているワイバーンになかなか近づく事が出来ないみたいです。

 剣が届く間合いまで詰めなければ、いくら剣豪でも勝機はありません。

 カリンさんも懸命に戟を振り、傷つけているものの、堅いのでしょうか?小さな傷以外見当たりませんし。

 あ、リョウブさんが飛びました。大きく開けたワイバーンの口に何かを投げ入れました。


 ボフッッ!


【ギャアァァァァア!!】


 口から煙を吐き出しながら、奇声をあげるワイバーン……。

 これも致命傷ではないようですね。


「おじょうさま……」

「ケンゾー、だいじょうぶよ。ししょうはもとSSランクのぼうけんしゃでしょう?」


 不安気な表情を浮かべ、戦闘の様子を見ているケンゾーの背中に手を当てて、励まします。


 ワイバーンの口が大きく開き、光が集まりだしましたっ。

 あっ、ゲームでのワイバーンの技と言えば、ブレスだわっ。

 かなりの広範囲だったはず。


「ししょうっ!ブレスがきますっ!!」


「ちぃっ!!」


 私の声が届いたのか、師匠たちが大きく後退します。


「あの、ルイーズ様?」

「はい、なんでしょう?」


 この緊迫した状況に似つかわしくない声色で話しかけるアルノー先生。


「皆さんは何故、苦戦されているのですか?」


 ん?苦戦しているのは何故かですって?


「それは、ワイバーンのすきが、なかなかみつからないのと、からだがかたいせいで、ちめいしょうがあたえられないせいではないでしょうか?」


「…………あの、ルイーズ様。この侯爵様のお身体を通して見ると、ワイバーンの動きがとても遅くに感じますし、一つ一つの動きに対処出来る、思考が生まれるのです」


「はいっ?!」


 いやいやいやいや、へっ?!

 いえいえ、何を仰っているの?

 あの動きに対処する思考?

 いえ、駄目よ。


「ですから、私が戦った方が早く決着がつくのではないかと。ルイーズ様、ここは、男らしく行ってまいります!」



 だめーーーーーっ!!!



 ひょいと軽やかに飛び下りたアルノー先生を引き留めようと頑張りましたが届きませんでした。

 なんて素早いのですか。


「………だいじょうぶでしょうか?」

「けんももたずに、いってしまいましたわね……」


 ケンゾーと共に、アルノー先生を眺めます。

 ほら、剣を探して、あたふたしているわ。

 仕方がありませんわね。

 父様の剣をお貸ししますわ。

 馬車の中に置いてある、父様の愛剣を持ち、アルノー先生の方へ投げました。


「アルノーせんせい、けんですっ!!」


 投げられた剣に気付き、華麗にキャッチしたアルノー先生は「ありがとうございますっ!」と、簡素に礼を言うと、ワイバーンに向かって駆けて行きました。


【ギャアァァァァ!!】


 カキンッ


【キェェェェェエ!!】


 ザシュッッ

 ドンッッ


【ギャッッ】


 …………。


「ねえ、ケンゾー。わたしくたちはゆめでも、みているのでしょうか?」

「………おじょうさま。これは、はくちゅうむかもしれません」


 アルノー先生の武勇を説明をするわね。

 まず、ワイバーンがまたブレスを吐いたの。

 そのブレスを、何故そんなことが出来るのか不明なのだけれど、剣で弾き返したの。

 次に、飛び上がろうとしたワイバーンの翼を剣で切り裂いたの。

 ワイバーンは飛び上がれずに、地面に叩きつけられて悲鳴をあげたわ。

 …………。


 あ、ワイバーンが叩きつけられた時の隙に、師匠が抜刀術を繰り出したわ。


 ザシュッッッ


【ギャァァァァアァァ】


 ワイバーンの首を一閃したのだけれど、やはり堅いようね。

 外皮を傷つけただけだわ。しかし、ワイバーンってこんなに強かったかしら?

 元SSランクの冒険者である師匠が致命傷を与えられないなんて……。

 おかしいわ。


 あっ、アルノー先生が飛んだ。

 剣を持ち替え、落ちる衝撃で貫こうとしているのね。


 ザシュッ!!


【グギャァァァァ】

 

 

「うぷっ━━」

「ケンゾーだいじょうぶ?きぶんがわるいなら、よこになっているといいわ」

「いえ、平気です」


 ケンゾーは気丈に振舞っていますが、顔色が悪い。

 確かにこの惨状を見ると、気分が悪くなるのも無理はないでしょう。

 悍ましい断末魔をあげ事切れたワイバーン、その周りにはおびただしい血が流れている。


 これもゲームでは表現されない惨状ね……。

  

 師匠たちは剣を納めているわ。もう安全そうね。

 結界を解除して、怪我の有無を確かめる為、皆の傍に駆け寄りました。


「ししょう、アルノーせんせい、カリンさんもリョウブさんも、おけがはしていませんか?」


「ええ、大丈夫よ。ありがとう」

「はい、怪我はしていません」

「私も、怪我はしておりません」


 カリンさんもリョウブさんも怪我はしておりませんでした。

 アルノー先生も無傷と。


「ああ、俺も大丈夫だ」

 良かった。師匠も、無傷なのね。

 怪我をしていたら、ケンゾーが悲しむものね。


「ししょう。ワイバーンって、こんなにつよいものなのですか?」


 気になっていたワイバーンの強さについて、師匠にお伺いしてみると、師匠は首を傾げながら、仰いました。


「いや、おかしい。これほど堅く、苦戦するはずはないんだが……確かに、冒険者をしていた全盛期に比べると、腕は鈍っているが、ワイバーンはAランク程度の魔物だ。しかも、こんな場所に出てくることも滅多にない」


 …………。


「そうなのよね。ワイバーンは高山に棲む魔物だから、人里が近い場所へ降りて来ることはないのよ」


 カリンさんも腑に落ちないのか、考え込んでいます。

 以前も、滅多に姿を見る事がないとアルノー先生が仰ってたものね。

 

「とりあえず、魔石だけ取って、土に埋めてしまいましょうか?」

「そうね、頼んだわよリョウブ」

「いたっ!痛いですよ」


 カリンさんは、魔石を取ろうかと提案するリョウブさんの背中をバシバシ叩いております。

 痛そう……。


 リョウブさんがワイバーンから魔石を取り、アルノー先生が魔法で大きな穴を作り埋めました。

 血だまりも、土を掘り返して、綺麗にした後、馬車に乗り込み出発です。


 ・

 ・

 ・


 気分の優れないケンゾーに付き添う師匠に代わり、父様が御者をしております。

 その横に腰かけて、父様に話しかけます。


「とうさま。もとのおからだのつよさもすばらしいし、ごじしんのからだではないのに、たよりになるなんて、すてきでしたわ。とっさにまもっていただいたときも、ほんとうにうれしかったです。ありがとうございます」


「ルイーズ…………ああ、愛娘を守るのは父である私の役目だからね……クッ!早く、元の体に戻りたい……」


 いつもの様に、苦悶の表情を浮かべる父様。そんな所も大好きですわよ。

 あ、忘れない内に、アルノー先生にも。


「アルノーせんせい。たたかいにでかけるまえ、おとこらしくて、かっこよかったですわよ」

「「へっ?」」 

 

 何故か、手に持っていた本を落とし、ポカンとするアルノー先生。

 そのアルノー先生を睨む父様。

 なんだか、このお二人、名コンビに見えてきましたわ。

 よく、返事が被っておりますし。

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