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楽しい転生  作者: ぱにこ
46/122

34話

 昨日の盗賊事件が解決した後、気が抜けて一気に眠気が……。

 ぐっすりと眠っていたようで、気が付けば朝になっていました。

 傍らには、まだ眠っているケンゾー……起こしちゃまずいよね。

 昨晩の盗賊騒ぎで疲れているだろうし……もう少し寝かせてあげましょう。

 馬車の中を見渡すと、こっくりこっくりと居眠り?してるアルノー先生と馬車の出入り口を警戒している師匠が目に留まりました。

 

「ししょう、おはようございますぅ」

 囁くような小声で挨拶すると、師匠がこちらを向き直り、

「ああ、おはよう。よく眠れたか?」

「はい。じゅくすいできたようです」

「なら、良かった」


「あの、ししょう。とうさまは、すでにおきていらっしゃるのですか?」

「いや、起きてるのは起きてるが……」

 

 師匠は歯切れの悪い返事をして、外の方に視線を向けました。

 ……なんでしょう?

 父様は、捕らえた盗賊を監視しているのかしら?

 

 まあ、兎にも角にも朝ご飯の準備をしなくてはね。

 父様達が寝ずにいたのだとしたら、すごくお腹が空いてるだろうし。

 美味しいご飯を作りましょう。


「ししょう。あさごはんのよういをしてきますね」

 小さな声で伝え、馬車を降りました……。

「アッ!━━」



 あら?父様……とても難しい顔をして、誰かと話し合っています。

 誰かしら?盗賊ではないわよね……。

 辺りを見渡すと、少し離れた大木に数珠繋ぎで拘束された盗賊が視界に入りました。

 では、誰?


 珍しい白銀の髪に……変わった瞳……どこかで見たことが……。


 あ、ああ!


 羊!

 もしかして、獣人さん?!獣人さんですか!!


 少し、興奮して父様達の方へ近づいた時。

 会話が聞こえてきました。



「邪神復活の兆しが見えたと……そして、邪神に奉げられる供物として羊の獣人が集められているのだと……なぜ、私達が供物になるのか、詳しい事は知りません。ですが、邪神が封印されている遺跡を確認する為、海を渡りやってきたのです……」


 邪神の供物?ゲームの物語が始まる前に、そんな話があったのっ!!

 ………………。

 供物……確か、神に奉げる贄として羊があげられていたわね。

 それと同じような意味合いなのかしら……。

 

「せいかいでは、ないかもしれないけれど、ひつじはしんせいなものとして、かみにささげられてきたとされているわ。かみにはんぱつして、じゃしんのくもつにしようとしたのかもしれないわね」


「「「ルイーズ(様)」」」


「おはようございます。とうさま、カリンさん、リョウブさんと、えっと、じゅうじんさん?!」


 推測でしかないけれど、一つの可能性として父様達に伝えました。


「申し訳ありません。引き留めようとしたのですが……」

 後ろから声がしたので振り向くと、父様に頭を下げる師匠が……。


「あ、ししょう…………とうさま、そとにでては、だめだったのですか?」

「いや、いい。おはよう、ルイーズ。カツラ殿も、子供たちを見ていてくれて感謝する」

 疲れた様子の父様が、師匠に労いの言葉をかけました。

「いえ、当然の事をしたまでです」


「あの、とうさま。しょくじのじゅんびをしますが……」

 そう言って、獣人さんの方に視線を投げる。

「あ、ああ、この人達の分も頼んでもいいかい?」

「はい!おまかせを」


 さて、食事の準備を始めようと思いますが……。

 獣人さんの様子を窺うと、長い間、過酷な旅をされていたのか衣服はボロボロだし、憔悴してるように見えます。

 体力が衰えているのだったら、消化に良いものがいいわよね……。

 お粥?それとも、雑炊にしようかしら。

 う~ん……中華粥!

 お好みのトッピング次第で、楽しめるし。

 では、作り始めましょう。


 ・

 ・

 ・


 鶏の骨で出汁をとって、中華粥が完成しました。

 鶏肉で作ったチャーシュー、体を温める生姜のみじん切り、半熟の煮卵……。

 ネギがあったら良かったのだけれど、まだ見たことがないのよね……。

 だから、青物としてほうれん草みたいな野菜を炒めました。


「さて、みなさんーー!!ごはんですよーー!!すわってくださいねー!」

 私の声を聞くまでもなく、みんな椀を持ち待機していました……。


「おじょうさま、おはようございます。おてつだいいたしますね」

「あ、ケンゾー、おはよう。めがさめたのね。……では、このおかゆをもっていってくれる?」

「かしこまりました。……今朝はおかゆですか。いいかおりがします」

 ケンゾーが大鍋を火からおろし、皆の前まで運んでくれました。


 今か今かとソワソワしているカリンさんとリョウブさん。

 ん?アルノー先生とぴよたろうがいない。


「ケンゾー、アルノーせんせいとぴよたろうはまだ、ねむっているの?」

「いえ、おきていらっしゃいましたよ。……あ、でてきました」


 馬車の方を見ると、ぴよたろうを頭に乗せたアルノー先生が、欠伸をしながらやってきました。

 ってか、重くないの?!

 ぴよたろう、アルノー先生の頭より大きいんだよ……。


「ルイーズ様、おはようございます……そのドロリとしたものはなんですか?」

 欠伸を噛みしめお粥について問うアルノー先生、ぴよたろうはスヤスヤと眠っております……。

 居心地いいの?

「……?アルノーせんせい、おはようございます。せんせいは『おかゆ』をみたことがないんですか?……これは、おこめをやわらかくなるまでにたものです。このなかのすきなものをおかゆにのせてたべるのですよ」

「ほぉ、いい香りがします……では、座って待っていますね」


 お粥を見て目が覚めたのか、ウキウキしながら席に着こうとしていらっしゃいます。

「あっ!せんせいっ、あたまはおもくないのですか?」


「へっ?…………ぴよたろうっっ!今朝は寝不足で頭が重いのだとばかり…………」

 そんなアルノー先生の様子を見て、皆で大爆笑しました。


 お粥が行き届いたのを確認して。

「では、いただきま~す!!」

「「「「「「いただきます」」」」」


「あ、美味しい……お腹の中がじわりと温かくなって、冷えた体にいいわね」

 うん、うん。

「この味付けされた鶏肉や玉子をのせても、また違った味わいでいいですね」

 そうでしょう、そうでしょう。

「美味い!さすがはルイーズっ!」

 父様も気に入ってくれたようで、良かったわ。

 無言でガッツリ食べている師匠とケンゾー。

 アルノー先生は、全ての具材を贅沢にトッピングして楽しんでいますね。

 賑やかしい私達とは違って、まだ手も付けていない獣人さん達……。

 

「あの、とうさま。じゅうじんさんたちがめしあがっていません……おすすめしてきてもよろしいですか?」

「ああ、危険な人達ではなさそうだし、お勧めしてきなさい」


「あの、おくちにあいませんでしたか?」

 椀を持ったまま、固まっている獣人さん達に声を掛けました。

「初めてみる食べ物なので……」


 そうかぁ、見た目はドロリとしてるから、初めてみる人には抵抗があるのかな?!

 でも、アルノー先生は拒否反応を示さなかったし、お国柄ってやつ?


「あ、おこめという、こくもつをやわらかくにたものです。みたところ、つかれていらっしゃるようなので、しょうかによいように、おかゆにしたのですが……たべかたとしては、まず、そのままめしあがっていただいて、ものたりないようでしたら、このとりにくや、にたまごをのせると、おいしいですよ」

 

「はぁ、……では、いただきます」

 恐る恐るお粥を口に運ぶ獣人さん達。 

「あっ、美味しい……」

「本当だ、優しい味がする」

 一口食べると、顔が綻んでいますね。

「美味しいね……」


 ……?

 今、女の子の声がしたわ。


「あの、おんなのこ?」

 一際小柄な獣人さんに聞いてみると。

「あっっ……」


 その声を聞いて、一人の獣人さんが、女の子らしい獣人さんをグイっと引っ張って腕で隠しました。

 威嚇するような目で見られています……。

 ってか、幼女相手にそこまで警戒するか?!

 憤りを感じつつも、冷静な口調で語りかけました。

 笑顔もプラスして。


「えっと、きがいをくわえるつもりはないですよ……」


「あ、すみませんっっ!!…………この子は、私の娘なんです。年頃の娘だと隠したかったもので……旅を始める時に髪を切り、男の格好をさせた訳です」


 バツが悪そうな引きつった笑顔を向け、訳を教えてくださいました……。

 確かに、女の子だと色んな意味で危険だわね……。


「そうなのね……でも、このなかにいれば、わたくしもおんなだし、カリンさんもじょせいだし、しんぱいするようなこと、ないとおもうわ。……あ、じこしょうかいが、まだだったわね。わたくし『ルイーズ』ともうします」

 

この先、この方達とどう接するのか、父様に伺ってみない事には、迂闊に家名を名乗る訳にもいかず、ただのルイーズにしました。


「私……『カチヤ』って言います。あの、食事、美味しかったです。ありがとう」


 もじもじして、頬を赤らめ、名前を教えてくれました。

 可愛いな……守ってあげたくなるタイプ?

 うん、この子のお父さんが警戒する気持ちわかるわ。


「いえいえ、たくさんたべて、げんきをとりもどしてくださいね」

 私がそう言うと、カチヤさんのお父さんが自己紹介をしてくださいました。


「私は、獣人国から参りました。カチヤの父『イザーク』と申します。そして、こっちが『フリッツ』と言いまして私の弟です」

「フリッツです。よろしくお願いします……食事もありがとうございます……盗賊に捕らえられて、飲まず食わずだったので、助かりました……」

 

 獣人さん達、同じ種族だからなのか、血が繋がっているせいなのか、見分けがつかないくらいそっくりです……。

 あ、カチヤさんは線が細く、仕草も女性っぽいので見分けられますが……。

 イザークさんとフリッツさんの見分けがつかない……。


 あああああ!!


「イザークさんとフリッツさんはふたごですか?」

「あ、はい。双子です……見分けがつかないですよね……ハハハ、よく言われるんです」

 

 よく言われているのか、でも良かった。

 全ての獣人さんが種族によって、見分けがつかないくらい似た顔だったら、どうしようかと思っちゃったわ。


「カチヤさんのとしは、いくつなんですか?」

「私は17歳になりました」

 

 17歳の娘さんが遥々、海を渡ってやってきたのね。

 そして、盗賊に捕まったと……。

 辛かったね……。

 せめて、お粥をたくさん食べて、元気を出してね。

 そう思って、空になった椀にお粥をつぎ足します。


「あ、ありがとう」

 ついでに、イザークさんとフリッツさんにも、おかわりをよそって。

「たくさん、めしあがってくださいね」と、声をかけ父様に元に駆け寄りました。

 だって、涙腺が弱い私は、うっすらと涙を流してしまったんだもの。

 

 父様の背中に飛び込み、涙を拭いて(父様の背中で)報告します。


「とうさま、じゅうじんさんたちに、おなまえをおしえていただきました。それと、カチヤさんとイザークさんはおやこなんですって。イザークさんとフリッツさんはふたごのごきょうだいなんだそうです」

「そうか、あの人達も共に旅をする事になりそうだから、仲良くなって良かった」

 

「いっしょに?『サクラこうこく』までですか?」

「ああ、ルイーズが起きて来る前に、色々聞いたんだが、あの人達もサクラ公国まで行く必要がありそうだ」


「でも、ばしゃにのれませんよ?」

 今でも、定員オーバーなのに……。

 走行中は、私がウロウロ(カリンさんやリョウブさんの馬車へ)移動してるので差し支えないけれど。

 座る所もないし、寝る場所も当然ない。

 私が外で寝るくらいだからね。

 次は、朝まで寝れるように結界を張っておこうかしら……。

 まあ、その為には、魔法を構築?理論を定めて、一から作ることになるのだけれど。

 

「それは、次の町『シュクル』で用意する。捕らえた盗賊も衛兵に引き渡さくてはいけないし……父様は忙しくなり、ルイーズとゆっくり観光できないが、許してくれるだろうか?」

「……かんこうはおあずけですの?」

「ああ、泣かないでおくれ。カツラ殿に付き添ってもらって楽しんでくればいいから……父様も辛いんだ……クッ」

 涙の後は……さっきのものだけれど……。

 良いように解釈してくれるのなら黙ってましょう。

 

「とうさまっ!ルイーズはししょうのそばをはなれずに、たのしんでまいりますわっ、そして、とうさまにおみやげをもってかえってきますね」

「あああ。愛娘はなんて、優しいんだ……土産を楽しみにしているからね」

「はい、とうさま」




 ◇ ◇ ◇




 そして、定員オーバーで馬車に乗れない獣人さん達、数珠繋ぎにされた盗賊達を引き連れ『シュクル』に向かっている訳ですが……。

 遅い……。

 仕方がないけれど……今日中に着くのかしら??

 もう、お口の中は、まだ見ぬお菓子の事でいっぱいだと言うのに。


「とうさま~きょうじゅうにたどりつきますか?」

 父様は後ろを振り向きつつ、溜息を吐き、

「…………想像以上に遅いからね……どうだろう?!」

 

「あ、うかせて、ひっぱっていけば、はやくなるんじゃあ━━」

「駄目だよっ。盗賊だけならまだしも、獣人さん達が驚いてしまうではないか」

「あっ!では、わたくしととうさまがとんで、ケンゾーをもちあげいどう。ぎょしゃはししょうにおねがいすればいいし、じゅうじんさんたちは、ばしゃにのれるようになるし、いかがでしょう?」

「で、盗賊は浮かすという訳だね……」


 うんうんと大きく頷いて賛同を待ちます…………。


「駄目だ……魅力的な提案だが、目立ちすぎる……」

「ええーーーっ!」

 



 ◇ ◇ ◇




 そうして、夕暮れ時になり、やっと着きました。

 お菓子の町『シュクル』

 町に入った瞬間、甘い匂いがするの。

 どこもかしこも、お菓子を焼いているのかしら……。

 父様とカリンさんとリョウブさんは、衛兵の詰め所に盗賊を引き渡しに行きました。


 もうすぐ、日が沈むので観光は明日に。

 残念ですが、仕方がない……宿をとり、フロントで貰ったガイドブックを部屋で熟読する事にしましょう。

 短い時間で効率よく回れるようにしなくては。

 明日ならば、父様も観光出来るかも知れないので、楽しみだわ♪


 



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