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楽しい転生  作者: ぱにこ
37/122

29話

 無事『スルス』の町に到着した私たちは、別行動をすることになりました。

 アルノー先生とリョウブさんは買い出し(主に着替え)に出かけ。

 あ、リョウブさんは、アルノー先生の護衛兼案内役です。

 カリンさんは『乙女の秘密よ』ってどこかへ消え。

 私たちは念願の温泉場へ向かいました。

 スルスの町って、某コメディドラマ『勇者○○○○』の村みたいで少しテンションが上がったのはここだけのお話です。

 人口300人ほどの小さな町なんだけど、観光客や湯治で足を運ぶ人でごった返していました。

 住人の数だけで考えると、村?集落規模なんだけれどね。

 町のあちらこちらで湯気がのぼっており、その湯気も高温と聞いたので、迷わず『蒸し野菜』を作ろうとしたら、父様に阻止されました。

 高温の湯気を無駄にするなんて、考えられないわ!

 温泉饅頭も蒸せるほどの温度よ!饅頭が作れる材料が揃ったら、きっと温泉饅頭を蒸しに来てやるんだから。

 それだけでなく、小川かと思ったら、溢れ出る余分な源泉を流しているだけだと聞いて、足湯にでもすればいいじゃない!温泉卵も出来るのにっ!と、一人静かにぷんすか怒っていたのもここだけのお話です。


 町並みは、メインストリートだけ石畳で舗装されており、狭い路地はまんま某ドラマの様……。

 砂利道に雑草が生い茂っています。

 こういう雰囲気は好きなんだけれど、観光客で賑わっている分、私腹を肥やしているだけにみえる町長?に一言、物申したい気分になりました。

 だって、見えるところだけ綺麗にするって、嫌じゃない?

 見えない所にも気を配るのが、本当のお洒落って言うものでしょ。

 うん?お洒落は関係ないか……。

 綺麗で豪華な食事が出来るレストランの厨房が汚いと嫌なのと一緒。

 まあ、町長がいるのかどうかも知らないけどね。このあたりの土地を所有する貴族の事も、アルノー先生の『貴族ノウハウ』(勝手に命名)で教えてもらったんだけど、興味の持てない話だったんで耳からする~っと抜けていってしまって記憶にないし……。

 こんな事を一人で悶々と考えていたら、街作りをするゲームを思い出してしまったわ。

 コツコツと街を発展させるのが楽しくて、やめ時もわからなくて、最長記録500時間オーバー。

 どんなやりこみ要素たっぷりなRPGも、追いつけない記録。

 はぁ、久しぶりにゲームで遊びたいな……。

 召喚する巫女が携帯ゲーム機を持ってたら、貸してもらおう……携帯ゲーム機がなくても、きっとスマホくらいなら持ってるはずだわ。

 

 メインストリートをまっすぐ行ったら、貴族もお金持ちも御用達の温泉場に到着。

 リゾートホテルのプールみたいな大きな浴場で、水着の様なものを着用して入ります。

 貸出水着と入浴料で一人当たり銀貨1枚……高いのかな?侯爵令嬢は物価に疎いのです。

 冒険者になるのだから、そのうち経済観念も身につけないとね。

 ちなみに混浴ですよ。

 湯あたりしないように休憩所スペースも設けられおり、そこで寝っ転がるおじい様やおばあ様。

 お腹がたっぷりしたおじ様も、走り回っている小さなお子様も、雑談に花を咲かせているおば様も、皆、一様にお肌がツルツル……きっと、常連さんなのでしょうね。

 日本の温泉をイメージして、のんびりできると思っていた私には不満もありましたが、横で気持ち良さそうに『ぐだぁっ』としている父様やケンゾーを見ていると、どうでもよくなりました。


「ふふふん♪ふん、ふん♪はぁ~いいおゆだわ~」

 アルカリ性のお湯かしら?肌がすべすべする。

 美人の湯ってやつね。


「とうさま。おはだがツルツルのすべすべになりますわ」

「そうか、父様もスベスベだぞ……(はぁ~)」

「私もスベスベです……(ふぅ~)」


 父様とケンゾーは自分の腕を撫でて返事をした後、再び『ぐだぁ』っと……。


「もうもう!とうさま!はじめてのおんせんですよ!むすめといっしょにおふろですよ!ぐだぁっとしてないで、おはなししましょうよっ」

「それもそうだね。では、話してみなさい……(ふぅ~)」

 あくまでも、ぐだぁっとした姿勢は貫くおつもりなのですねっ。

 完全に体の力が抜け、プカプカ浮き始めていますわっ!

 ケンゾーは、縁に頭を乗せぼーっとしてるし。


「では、おききしたいのですが、このまちをしょゆうするきぞくのなまえをおしえてくださいませ」

 次回訪れた時に、蒸し野菜に温泉卵、温泉饅頭を作る許可をいただきたいので、目を細め、湯に身を任せて浮いている父様にお聞きすることにしました。

「うーん、確か……この辺りは『ビズラ伯爵』だったと思う……」

「あいまいなへんとうですわね……」

「そうだね…………」

「おじょうさま、あっていますよ。この辺りは『ビズラはくしゃく』とアルノー先生がおっしゃっていました」

「そうなのね。ありがとうケンゾー」

 ケンゾーにお礼を言って、父様に目をやると……。


 目を細め浮いている……ん?瞑ってるわ!


「と、とうさまっ!ねてはいけませんわっ!!」

「はっ!寝てたかい?」

 父様は、びくっとした後、浮いていた体を正し、浴槽の縁に腰かけました。

「ええ、ねむっておりましたわ」

「あまりの心地よさに、気が緩んだようだ。温泉というものは……危険だね」

 眉間に皺を寄せて、ダンディーな物言いで仰っても、今のはカッコ悪かったですよ。

「とうさまもケンゾーもきをぬきすぎですわ。さきほどまでのとうさまなら、いちげきをあたえられるほど、すきだらけでしたし━━」

 そう言った瞬間、あちゃーってなりました。

 どんな時でも、攻撃OKを出してくださっていたのに……。

 いえ、公衆浴場でバトルを繰り広げる訳にはいかないから、忘れてて正解よ。

 ……でも、あと一歩なのにと、悔しい気持ちが拭いきれない。


「ふっふっふ、残念だったね。確かに、温泉場というのもあるし、この状況で一撃を入れようとは、露とも思っていなかった。これからの父様は、温泉に浸かっていても気を抜くことはないだろう」

 胸を張り、自信満々に仰る父様の背後にケンゾーがそろりと近づきます。


 ━━━━バシッ!!


「くっ!」

 父様の呻き声を聞いた瞬間、歓喜に打ち震える気持ちを抑え、ケンゾーに問いました。

「やりましたか?!」

「いえ……」

 苦悶の表情を浮かべ、返事をするケンゾー。父様の首筋で止まっているケンゾーの手を見ると……父様の手に掴まれ、阻止されていました。

「おしいわ……」

「ふむ、惜しかった。2人で来られていたら、父様も一撃くらいはもらっていたかもしれないね。ハッハッハッ」

 ふん。2人で攻撃しても、きっと阻止されてたはずよ。

 でも、裏の裏をかく事が大事ってよくわかったわ。

 私は悔し紛れに、手のひらを合わせて、水鉄砲を作り温泉水を飛ばします。

 

 ━━バシュッ!


「おっ!」

 温泉水が顔に直撃した父様は、驚いた後、嬉しそうに「どうやったんだ?」と、聞いてきました。

「てのひらをこのようにあわせて、おやゆびとおやゆびのあいだから、こうやって……(バシュッ)みずをとばすのです」

 これはコツが必要だけれど、慣れてしまえば簡単な遊び。

 プールやお風呂で、子供たちとよくやったわ。


 この後、父様とケンゾーが水鉄砲を習得するまで付き合うことに……。

 「ハハッ!どうだ!あれ?」「なかなか、むずかしいですね……」「次こそはっ!……ふ~む……」「行きますよっ。あぁ、しっぱい……」「お、コツが掴めてきたぞ……」「やりましたよ!」

 そして、水鉄砲の的にされ続けた結果、私は湯あたり寸前。倒れる前にコツを掴んでくれて、ありがとう……。

 もう、へろへろです。


 ◇ ◇ ◇


 湯上りに冷たい果実水を飲んで人心地ついた後、町の入り口で別行動をとっていた先生達と合流しました。

 大荷物を抱え、満面の笑顔を見せるアルノー先生と憔悴しきった顔つきのリョウブさん……何があったのでしょうか?

 カリンさんは『乙女の秘密』な用事を済ませたのでしょうか?別れた時と変わらぬ荷物量ですし、見た目にも変化がありません。

 気になることもありますが、今はお留守番をしてくれたレグルスにお土産を渡さなくては♪

 お肉屋さんで鶏、豚、牛の新鮮なお肉と干しているものを買ってまいりました。


「とうさま。レグルスにおみやげをわたしたいので、さきにばしゃにのりこみますね」

「ああ、すぐに出発するから乗って待ってなさい」

「では、さきにしつれいします。ケンゾー、いきましょう」

「はい。おじょうさま」

 ケンゾーの手を取り馬車へ乗り込みます。

 すると【ぴぃぃぃ】と悲しそうな鳴き声をあげたレグルスがケンゾーの頭に飛び乗ってきました。

 生まれたばかりの雛にしては、なかなかの跳躍ね。

 将来が楽しみだわ。


「レグルス、おるすばんしてくれてありがとう。おみやげをかってきたわ」

 お肉屋の包みを広げ、レグルスの鼻先に近づけます。

「おいしそうでしょう?」

【ぴぃ~】と、返事をしたレグルスは、ケンゾーと私の顔を交互に見て『たべていいの?』と伺うようなそぶりを見せます。

「たべていいのよ。たくさんたべておおきくなるのよ」

「さあ、食べなさい」

 私たちがそういうと、待ってましたと言わんばかりにお肉を啄みはじめました。

 生肉も食べやすくミンチにしてもらいました。

 鶏肉はあまり食べず、牛肉の方が好きなようです。鶏肉は淡白な味だからかな?それとも、似てる種族だから忌避感があるのでしょうか?

 干し肉の方も牛肉、豚肉を好んでいます。


「ぴよたろうは鶏肉が苦手みたいですね」

 馬車に乗り込んできたアルノー先生がレグルスを見て一言……ん、『ぴよたろう』?

「アルノーせんせいっ!ぴよたろうではなく『レグルス』ですわ」

「えっ?でも、リョウブさんや侯爵様も『ぴよたろう』と仰ってましたよ。あれ?!」


 アルノー先生は、不思議そうなお顔をされています。

 なぜ、名前が変わっているの?

 父様にも『レグルス』と紹介したのに。

 訳も分からず、3人で顔を見合わせた後、事の発端を確かめましょう!という事で、一斉に父様の方へ向かいました。

 

「とうさま!なぜレグルスのなまえが『ぴよたろう』になっているのですか?」

「ご主人さま。私とおじょうさまが名付けた『レグルス』という名前がなぜ『ぴよたろう』になっているのですか?」

「侯爵様が仰ってた名前を呼びましたら、ルイーズ様に叱られてしまいました」

 

 御者台に座り、馬車を操っている父様は前を見つめ「ああ、リョウブ殿が最近『サクラ公国』では、名前に『たろう』とつけるのが流行ってると言ってね。それならば、流行っている名前を付けた方が良いだろうと『ぴよたろう』にした。どうだ、気に入ったか?」と……。

 気に入ったか?レグルスはレグルスって名前が気に入ったみたいだから、名付けたのに~!!

 でも、屋敷に戻ったら、庭で放し飼いの予定だし、そうなると庭がぐちゃぐちゃ?になる可能性もある。 飼っていいことになったのは父様のご厚意によるもので、今は良かったとしても、迷惑をかけ続ければ後々、野に放すなんて言われるかもしれない。

 レグルスにとっても、父様のご機嫌を損ねないのが一番なのよね。


 

「どうするケンゾー?」「どうしましょうか?」と、言葉を交わした後、レグルスに決めさせるのが一番いいという事になり、私達はレグルスの前に座り、神妙な面持ちで語りかけました。

 

「レグルス。よくおききなさい。わがやのあるじである、とうさまが『ぴよたろう』というなまえをつけてくださいました。『ぴよたろう』というなまえをうけとりますか?」

「レグルス。私たちは、まだまだ子どもで色々なことをきめるけっていけんは主である、ご主人さまにあります。そのご主人さまが、名づけてくださった『ぴよたろう』という名前をうけいれますか?」

【……ぴぃっ】

 コクっと頷くレグルス改め、ぴよたろう。

 小さな雛ながらに、何かを感じ取ってくれたのでしょうか?!

 

「ありがとう、ぴよたろう」

「よかった……ぴよたろう、よく決心したね」

 ホッと胸を撫で下ろします。

 

「聞き分けのよいこで良かったね」

 一連の事柄を見守っていたアルノー先生が、同じくホッとした表情で仰いました。

「ほんとうに……やはり、とうさまにもかわいがっていただきたいですからね。おおきくなってからのかいめいでしたら、もうはんたいするところでしたが、うまれてまもないひなでしたのでなづけおやのちいは、おゆずりしました」

「はい、本当に……しかし、次の名づけおやのちいは、ぜったいにゆずりませんよ」

「ええ、つぎは、とうさまにもっていかれないようにしましょうね」

 ケンゾーと握手を交わし、固く決心しました。


 ◇ ◇ ◇


 スルスの町を出立して、しばらく経ったころ。

 せっかくアルノー先生がいらっしゃるのだから、お茶を飲みながら色々なお話を聞くことにしました。

 ちなみにケンゾーはぴよたろうに芸を教えています。

 覚えるのかな??


「せんせい。おかいものをおえたあとのリョウブさんがしょうすいしきったようにみえたのですが、なにかあったのですか?」

「特に何もありませんでしたよ。少々買うものが多くて、疲れてただけだと思いますよ」

 買い物が多いくらいで、あんなに憔悴するか?!


「ちなみになにをかったのですか?」

「着替えに、マント。後は、身を守るための短剣を一つですね」

「すくないですね」

「量は多いですよ。着替えが20着にマントが5着ですから」


 ……多いね。

 それだけの量があの荷物に入ってたのか。大荷物だと思ったけど、それだけの量があの中に入っているとすると、コンパクトにまとまったね。というしかない。

「ちなみに、にもつをまとめたのはリョウブさんですか?」

「はい、リョウブさんに纏めていただきました」

 リョウブさん、頑張ったんだね。


「そういえば、たびをはじめて、まものにであわないのですが、まものっていないのですか?」

 旅を始めて、丸1日が経ったけど、全く魔物に出会わない。

 あ、ぴよたろうは別よ。


「それはですね。王都に近い場所は、魔物除けの魔道具が街道に埋め込まれているからです」

「まものよけのまどうぐですか?」

「魔物除けの魔道具を埋め込むことによって、街道沿いは安全なのですが、その分、森に踏み込むと魔物がたくさんいるそうです。次に行く町『シュクル』辺りで、魔道具の効果が切れるので、魔物に出会うかもしれませんね」

「…………どうしましょう。わたくし、ぼっけん一つももってこなかったわ……」

「大丈夫だよ。父様が戦うから、ルイーズは逃げる事だけ考えていなさい」


 私の心配を拭うように、御者台から父様が仰いました。


「では、アルノーせんせいもにげるのですね」

「私は、ルイーズ様とケンゾーくんを守りながら逃げるのを第一に考えて、臨機応変に行動します」

 先生……意気込んでいるところ、悪いのだけれど。

 きっと、ケンゾーと私でアルノー先生を守りつつ逃げるが、正解だと思う。

 ケンゾーは闇魔法が使えるようになって、闇と風を合わせた『飛行魔法』を練習中なのです。

 安全といえば空でしょう。

 この辺りにドラゴンやワイバーンなどの飛ぶ魔物はいないでしょうし。

 私とケンゾーでえっちらおっちらと、アルノー先生を運ぶビジョンが見えました……。

 少しでも、長く運べるように、筋トレを頑張ることにしましょう……。


 ゲームではドラゴンが出るのは終盤あたりだったけれど……リアルだとどのあたりに出るのかしら?


「アルノーせんせい。ドラゴンやワイバーンなどのまものは、どのあたりにでるのですか?」

「う~ん。本でしか知らないけれど、ドラゴンやワイバーンなどの魔物は……滅多に見ることが出来ないが、たまに人里に降りて来ると書かれてましたね」

「では、ちいきてきなすみかはなく、てんさいのようなあつかいになるのですね……」

 気紛れにドラゴンが人里に降りてきたら、天災としか言えないでしょう……。


「とうさまっ!ドラゴンはやっつけられますか?」

 御者台に座っている父様に伺います。

 まだまだ未熟な私たちと、アルノー先生プラスぴよたろうというメンツだと、チートな父様にお任せするしかないでしょう。


「ドラゴンかあ、出会ったことがないからね……でも、Sランク冒険者が5人いると退治できると聞いている。……追い払うくらいなら、出来るかも知れないね」

 追い払えるだけでも、安心だわ。

「けがとかしないでおいはらえますよね?とうさまがきずつくすがたは、みるのがつらいですもの……」

 

「ああ、安心しなさい。怪我もなく、追い払ってあげるからね」

 私の不安を一蹴するかのように、軽い感じで答えてくださいました。

「よかった……」

 ホッとした私は笑みが零れます。

 

 では、アルノー先生に向き直り、気になっていることの続きを質問します。

「『シュクル』というまちからは、まどうぐがきれるんですよね?そこで、どういったしゅるいのまものがでてくるのですか?」

「これも、本でしか知らないけれど。街道沿いに出てくる魔物は『ゴブリン』『オーク』『スライム』『コボルト』でしょうか。少し中に踏み込むと『オーガ』なんかも出て来るそうですよ。山の頂辺りには『ハーピー』などもいるそうで、Aランク冒険者くらいにならないと、迂闊に近づくのはやめた方がいいそうです」

 ゲームで出てくる魔物と一緒の様ね。

 では、コカトリスはどこに住んでいるの?

 ぴよたろうの卵はどういった経路を辿ってやってきたのかしら?

 

「アルノーせんせい。コカトリスがいるばしょはどこですの?なぜ、ふつうのたまごにまざってコカトリスのたまごがあったのですか?」

「コカトリスは、街道沿いや森の中ではなく、草原などに出てくる魔物ですね。普通の鶏卵と混ざっていたのは、コカトリスが子育てをしないからと思われています。……誰も魔物の気持ちはわからないから仕方がないのですが……鶏卵と混ぜて孵化した雛は、鶏卵を食べて大きくなり、草原へと戻っていくとのことです。あ、ちなみにコカトリスの卵は3日で孵化するそうですよ」


 早っ!

 そして、鶏卵を食べて大きくなりって……。

 鶏肉は食べないけれど、卵は食べるのね……。

 それとも、初めに牛の干し肉を与えたから、味を占めたのか。


「たんきかんで、おおきくなってしまうのですか?」

「成鳥になるのは、もっとかかりますが、草原へと戻って、自分の力で狩りが出来る大きさになるのが1週間くらいだと言われています」

 ぴよたろうは後6日で狩りが出来るのか……。

 凄いな……。

 ゲーム設定のコカトリスのスキルを思い出してみましょう。


 鋼の様に硬い翼で攻撃する。強靭な脚で獲物を抉る……リアルだとグロいだろうな……。羽毛から毒を出す。

 翼で風を起こして吹き飛ばす。

 ゲームの中盤辺りで対峙するコカトリス。毒に苦しめられた思い出が過ります。

 味方になったぴよたろうが、どんな活躍をしてくれるのか、今から楽しみだわ。

 でも、味方とはいえ毒対策はした方がいいわよね?!

 

「アルノーせんせい。どくのちりょうやくについて、ちしきはございますか?」

「毒?解毒剤の知識はあっても、作ったことはないですね……。リョウブさんならご存知かもしれないので聞いておきましょうか?」

「はい。おねがいします」

 そっか……アルノー先生は、書物で勉強したから知識として知っているだけで、実際に作ったり見たりしたわけではないんだよね。

 やはり、色んな薬を作っているリョウブさんに出来るだけ教わる必要がありそうね。

 

「アルノーせんせい、ケンゾー。たびのあいだ、できるだけリョウブさんから、くすりにかんするちしきをべんきょうしてください」

 ぴよたろうに芸を教えているケンゾーとアルノー先生に向かって伝えます。

「承知いたしました」

「うけたまわりました」


 2人が覚えてくれたら心強いわ。

 これで将来の冒険も、安泰ね。


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