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楽しい転生  作者: ぱにこ
32/122

24話

やっと、ニューパソコンを購入しました!

前までデスクトップだったけど、今回はノートパソコンです。

微妙な大きさの違いで、キー入力の時に手間取りますが、快適です。

なにせ、フリーズしない事が嬉しい。

苦労が水の泡にならずにすんでいるんだもの……。

「では、これを肌身離さず身に着けておくのだぞ」

「はい……これをみにつけていれば、けいほうそうちがならないのですね」

「ああ、これを身に着けずに馬車に触れると━━」

 そう言って、装身具を身に着けずに近づく父様に反応し、馬車はつんざく騒音を鳴り響かせました。

「っ!!……とうさま、みみが、つぶれてしまいます」

 両耳を押さえ、父様に止めてくださいと懇願します。

 なんだろう……化け物の鳴き声とガラスを引っ搔いた音を混ぜたような不快な音……。

 警報装置って言ったら【ビービー】とか、【ピーピー】とかのイメージだったのだけれど……確かに異世界に電子音があるわけないわよね……。それに街を出てから試すって言ってたのに……。

「ん。と、いう訳だから、気を付けるように」

 やっと馬車の警報装置を止めてくれた父様は「結構凄い音が出るものなんだな」と感心しています。

「「はい」」

 騒音が鳴り止み、ホッとした私とケンゾーは、ハモって返事をしました。

 それにしても凄いわね。装身具を身に着けることによって、馬車の持ち主を認識して、それ以外の生物が近づくと警報を鳴らす。どういう仕組みになっているのかしら……。

 これを制作した魔法省……一度行って、じっくり話を聞いてみたいわ。

 あっ、ケンゾーのお父様も魔法省の方だったわね。

 この馬車の制作に携わったのかしら?

「ねえ、ケンゾーのおとうさまもこのばしゃのせいさくに、たずさわったのかしら?」

「どうなんでしょう?一度聞いてみましょうか?」

「そうね、きかいがあれば、きいてみてくれる?」

「かしこまりました」


 そんな会話をしていると、荷詰めも終わったようです。

 料理長が食材を詰めてくれて、従者達が着替えの詰まった荷物を運び入れてくれました。

「こちらの籠にはサンドイッチが入っておりますので、お昼にでも召し上がってください。水筒には、スープが入っておりますので、温めて召し上がってください」

「ありがとう」

 料理長が今日のお昼ご飯にと、お弁当を作ってくれたみたいです。

 当分、料理長のご飯が食べられないのね……。じっくり味わって食べないと……。

「気をつけていってらっしゃいませ。皆様のお帰りを心よりお待ち申しあげております」

「ええ、きをつけていってくるわね。かえってくるころには、ジルのおなかのこどももうまれているかしら?たのしみよね♪3にんぶんのおみやげをかってこなくちゃね」

 そう言って私が微笑むと、料理長も微笑んでくれました。

「お元気な姿を拝見できるのが何よりのお土産になりますので、楽しみにお待ちしております」

「ふふ、ありがとう」


「さあ、乗り込みなさい」

「はい、とうさま」

「ねえしゃま、きをつけていってらっしゃいましぇ」

「気を付けていってらっしゃい」

「はい、かあさま、ジョゼ。いってまいります……うっ、ぐすん……」

 見送りに来てくれた、母様とジョゼに目をやります……辛い……天使としばらく会えないなんて……。

「ほら、泣かないで。父様をよろしく頼みましたよ」

「はい、かあさま」

 母様に頬を拭われた後、キスしていただきました。うん、少し元気が出ました。

 それを見たジョゼが「ぼくも~」と言って頬にキスしてくれました。

「ふふ、とってもげんきがでました。ありがとうございます」

 羨ましかったのか、父様もおねだりして母様とジョゼにキスをしてもらって、馬車へと乗り込みます。

「さあ、出発しよう」

「「はい」」


 目視できなくなるまで、母様とジョゼに手を振った後、少し寂しげな父様の横に座ります。

 御者は父様がしてくれています。

 父様付きの従者は、お留守番だそうです。長い間、留守にするので、ハウンド家一番の実力者でもある者に家を守らせたいと、留守番を頼んだのだそうです。


「さっきわかれたばかりだというのに、もうさみしいです……」

「そうか、父様もだ……」

 二人のため息が、馬車の中の空気を重くします。

 駄目だ、楽しい事を考えよう!そういえば父様って、料理はできるのかしら?

 料理長がたくさんの食材と調味料を詰めてくれたけど……それって自炊するってことよね?

 侯爵様が料理をする機会なんてある訳ないから、手料理なんて食べたことがないし……なんでもチートの父様ですもの、料理もお茶の子さいさいよね??

「あの、とうさま。おうかがいしますが、とうさまはりょうりはできるのですか?」

 私がそう聞くと、父様は何を言ってるんだ?というような顔をして仰いました。

「出来る訳ないだろう」と……。

「で、では、りょうりはだれが?」

「ケンゾーは料理できるか?」

 父様は後ろに座っているケンゾーに聞きました。

「いえ、あの、お茶をいれることはできるのですが、りょうりはできません」

 そうよね~ケンゾーは私のためにお茶を淹れるのは上手だけれど、料理は期待していないわ。

 だって、まだ8つだもの。

「そうだ!これから、合流する使者殿が出来るかも知れん」

 父様は名案だとばかりにそう提案します、が。

「いえ、とうさまとケンゾーができないのであれば、わたくしがりょうりいたします」

 だって、3人分の料理をお願いするのも図々しいし、私が料理できるのだから、手を煩わせなくてもいいじゃない。ね?

「ルイーズが?」

「おじょうさまが?」

 目を丸くする2人に、少々ムッとします。

「わたくしではふまんなのですか?」

「いや、ルイーズが料理を出来るのは知っているが……」

「はい、知っておりますが……」

 眉間に皺を寄せて、思案する2人……もう、何が不満なのよっ!

「ルイーズ。心して聞くように!自重という言葉を知っているか?」

「しっておりますが?」

 うん?父様は何を言いたいのかしら……。

「知っているならいい。頼んだぞ」

 横でうんうんと頷いてるケンゾー、これの意味がわかるの?凄いわね。通じてるのね。

 私にはまったく理解できないのに……。

 とりあえず、私が料理担当って事でいいのよね?

 後で、調味料と食材チェックして、メニューを決めるとしましょう。

 どうせなら、この世界にない料理がいいわよね……。この世界、色々あるようで【えっ?この料理はないの?】って事が多いのよね。ふふ、私の料理でびっくりさせなくては!楽しみだわ♪

 考え事をしていると、待ち合わせ場所である貴族門の前に到着したようです。


 ・

 ・

 ・

「「「おはようございます」」」

 一旦馬車から降りると、師匠と若い男性と綺麗な女性が一斉に挨拶をしてくださいました。

「おはよう。紹介しよう、愛娘のルイーズと従者のケンゾーだ」

 父様の挨拶を皮切りに自己紹介いたします。

「はじめまして。『ルイーズ・ハウンド』ともうします。どうちゅうよろしくおねがいいたします」

「はじめまして。『ケンゾー・シバ』ともうします。よろしくお願いいたします」

 私たちの自己紹介が終わった後、使者殿も自己紹介をしてくださいました。

「はじめまして。サクラ公国から参りました『リョウブ』と申します。道中よろしくお願いいたします」

「はじめまして。『カリン』と申します。よろしくお願いします」

 綺麗なお姉さんがカリンさんで、若い男性がリョウブさんね。

「カリンさまにリョウブさまですね」

 私がそういうと、師匠がチョイチョイと手招きしています。

 何かしら?と思い師匠へ歩み寄ります。

 すると師匠が小声で「あいつらに『様付け』はやめてやれ。気軽に俺に話しかけるようにしてやってくれないか?」と仰いました。

「でも、ししょう。とうさまにおうかがいしなくては」

 そんなやり取りが聞こえていたのか、父様が笑顔で「街を出た後なら構わないよ」と許可してくださいました。

「とうさまのきょかもいただきましたし、まちをでましたら、そのようにいたしますね」

「おう、頼んだ」と師匠は小声で仰った後、声を張って「くれぐれも、お気をつけていってらっしゃいませ」と恭しく、父様や私達に挨拶をしてくださいました。

「「はい。いってまいります」」

「では、いってくる」

 ケンゾーと師匠の別れの挨拶の邪魔をしないように、私と父様は一足先に馬車へ乗り込みました。

 

 暫くすると、うっすら涙目のケンゾーが乗り込んできました。

 やっぱり寂しいわよね。こういう時は、見て見ぬふりかしら……さっきは私もお別れで泣いてたもの。

 気持ちはわかるわ~。

「さて、出発するか」

 父様の掛け声とともに馬車が走り出します。


 街並みをじっくり観察するのって初めてじゃないかしら……我が家の馬車の小窓から見える風景と、御者台から見る眺めは違うわね。壮観だわ。

 行きかう人々の喧騒も聞こえるし、市場の香りもするわ。魚や野菜、果物の香り。

 肉の焼ける香ばしい香りもするわ。おいしそう……買い食いしてみたいわ!


 あら?あの小道の先に見えるのは雑貨屋さんかしら……可愛い小物とかあるのかしら?見てみたいわね。

 あっちには武具屋もあるわ。ああ、じっくり、眺めたいのに……。

 馬車の速度が速すぎて、ゆっくり楽しめないわ。

 馬車の御者って難しいのかしら?

 私が馬車を操れると、速度を落とせるわよね♪

 父様だけにお任せしてしまうと、お疲れになってしまうだろうし、一石二鳥だわ。

「とうさま。ばしゃをあやつるのはむずかしいですか?」

「難しくはないと思うけど、どうしてだい?」

「とうさまがやすむまがないと、おつかれになるでしょう?ですから、わたくしがかわりにあやつれればと、かんがえました」

「優しいね、ルイーズは。そんなに難しくはないだろうから、街をでたら父様が教えてあげよう」

 でも、それだと今楽しめない……けど、そうよね。下手っぴな人間が馬車を操って事故が起こってもいけないし、浅はかだったわ。もう少し思慮深くならなくては……。

 

「では、私にも教えていただけますか?」

 真剣な表情で、ケンゾーが父様にお願いしています。

「ケンゾーも?」

「はい。本来ならば、じゅうしゃである私がぎょしゃをせねばならないみです。少しでもお役にたてるよう、ごしどうをおねがいいたします」

「いいよ。では、街を出たら交互に練習してみよう」

「「おねがいします」」


 暫くすると街の外へと続く門の前に到着しました。

 王都には東西南北それぞれに門があり、それぞれの場所に2箇所ずつ。貴族や王族専用。一般の方の門があるそうです。

 ここで、門兵さんに身分証などを提示して、入出国の許可をいただきます。

 貴族は家紋が施された装飾品でOKで、厳しい審査はないみたいだけれど、商人さんは申告した荷物と積んでいる荷物に違いがないか、じっくり調べられるみたい。大変だ。

 一般の方は身分証明できるものであれば、スムーズに通してもらえるそうです。

 よくある異世界召喚もので、身分証がないため、お金を払って入国し、身分証明代わりに冒険者登録をするってパターンは出来ないんだって。

 身分証明がない場合、身分を保証する人間を2人連れて来て、個々に面談。虚偽がないか確かめた後、身分証発行なんだそうです。めんどくさ……。

 まあ、ヨークシャー王国では生まれたら身分証が発行されるので、余程の事がなければ、身分証を持ってない人間はいないみたい。

 王国外の人間で、身分証がない人は関所で止められるから入国できないみたいだし。

 と、いうことは私も身分証があるってことだよね?

「とうさま。わたくしにもみぶんしょうになるものがあるのですか?」

「ああ。あるよ、これだ」

 そういって父様は、ペンダントトップの様なものを見せてくださいました。

 綺麗ね。魔石に家紋が彫られていて、オレンジ色に淡く発光しています。

「これが、わたくしの……」

「それで、こっちが私の物だ。家紋は同じだけれど、よく見ると違うだろう」

 文字の様な、柄の様なものが違うだけなんだけれど……。

「このちがいに、いみがあるのですか?」

「ああ、古代文字で名前が彫ってあるんだ。あと、血筋に反応して発光する。万が一、盗難にあった後、悪用されるのを防ぐためにそうなっているそうだ」

 ええっ!凄い!ハイテクだわ。

「仮に、ケンゾー。これを持ってみなさい」

「かしこまりました」

 ケンゾーに手渡された身分証は……黒いただの石になっています。

「今度は、ルイーズが持ってみなさい」

 次に私が持つと、発光しだしました……やっぱりすごいわ。なんで?どういう理屈なの?意味が分からないわ。

 この馬車の時もそう思ったけど、この世界の魔石を使った便利道具は侮れませんね。


「ねえ、ケンゾーのみぶんしょうもみせて」

「これでございます」

 ケンゾーの身分証はシバ男爵家の家紋が施されています。家紋や古代文字?が違うだけで、造りは同じ。

 発光している色は、濃いブルーです。

「とうさま。いろにもいみがあるのですか?」

「発光する色は、爵位ごとに違うね。同じ爵位なら、同じ色になる」

「おもしろいですわ」

「さて、これはルイーズの身分証だから自分で持っていなさい」

 父様はそう仰った後、綺麗なチェーンを通して首からかけてくださいました。

 輪っかがあるのでペンダントに出来るのね。


 今回、使者さん達も王宮への使いだったので、貴族の門を利用します。

 身分証を門兵さんに提示して、スムーズに門の外へと向かいます。


 いよいよ冒険がはじまりますわ!

 わくわくが止まりません!

 門を潜り抜け、景色を見渡すと……おや?……あれ?

 目をコシコシとこすって、再度見渡します。

 目を瞑って、目を開きます。

 でも、見えます。

「あの、とうさま。あちらに、アルノーせんせいがいらっしゃるのですが、まぼろしでしょうか?」

「本当だね」

 アルノー先生は大きく手を振っていらっしゃいます。

「おはようございます!ハウンド侯爵様、ルイーズ様。旅のお供に、お役に立てる『アルノー・サルーキ』はいかがでしょうか?」

 先生は何を仰っているの?

「そうだね、何に役立つんだい?」

「仰ってくだされば、雑用でもなんでもいたします!」

 そう宣言するアルノー先生。

 その発言を聞いた父様が、大笑いなさりながら「では、許可しよう」と仰いました。

 えっ?かるっ!そんな軽いノリで旅を許可するの?

「とうさま。よろしいのですか?」

「ルイーズが信頼している先生だ。遺跡に関して助言もいただけるだろうし、賑やかな方が、いいだろう」

「そうですわね。にぎやかなほうが……でも、にぎやかすぎておちつかないときはどうしますか?」

「そうだね……防音結界を張って、閉じ込めよう!」

「と、とうさま……」

 アルノー先生への扱いが雑だわ。

「ケンゾーも落ち着かない時は、結界に閉じ込めるから言いなさい」

「しょうちいたしました」

 父様……ケンゾー……。

 深く考えるのはやめておきましょう。

 先生を乗せて、再び出発です!

 いざ!冒険へ!!

 

 

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