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楽しい転生  作者: ぱにこ
21/122

19話

 ただいま、ダンスを踊っています。

 今夜の主役である私が、一番に踊るらしいです。

 この役目さえ終われば、解放されるのです。

 淑女教育の一つのダンス、苦手です……。

 優雅に踊る事が苦手なのです……。


 幼いながらもフェオドールは、しっかりとリードしてくれています。

 もう、何度、フェオドールの足にコツンとした事か……面目ない……。


 フェオドールに謝る為、小さな声で話しかけました。


「ふう、ごめんね。何度も足をぶつけてしまって……」

「ふふ、いいよ。ルイーズにも、にがてなことがあるんだね。ひさしぶりにあって、ことばつかいも、はじめてあったときみたいに、もどってるし、もうきらくに、はなしかけてもらえないのかと、おもった」

「おおぜいのおきゃくさまがいらっしゃるから、しゅくじょとしてふるまうように、といわれてるの。それとね、いまはダンスだけが、にがてだけれど、いろいろ、まなんでいくうちに、にがてなものがふえるとおもう……」


 ため息が出た。

 前世から、興味のあるものと、興味のないものへの落差が激しいのよね。

 興味を持つと、のめり込んでしまうけど、興味がないと、頭からす~っと抜けてしまって、記憶の片隅に追いやられるのよね。


「じゃあ、ルイーズのにがてなものは、ぼくがとくいになるよ。だから、た~くさん、にがてなものがふえても、だいじょうぶだよ。ね?」


 フェオドールの言葉を聞いて、顔が熱くなる。

 天使は年を重ねても、天使なんだね。

 澄んだ青い目を輝かせて『ね?』って……ゲームプレイ中に、こんなイベントがあって、スチルでも出ようものなら、床ローリングしてるわ。

 

「ありがとう、フェオドール」

「うん。それと、いうのがおそくなったけど、おたんじょうびおめでとう」

「ふふ、ありがとう」


 話し込んでいるうちに、ダンスが終わりました。

 最後の礼をすると、フェオドールが、腕に手を回す様にと促します。

 フェオドールも、立派な紳士ですね。

 フェオドールの腕に手を絡ませ、会場の隅に移動しました。

 

 ◇ ◇ ◇


 挨拶回りに、陛下とのお話、ダンスをこなし、お腹ペコペコのルイーズです。

 料理は立食式なので、美味しそうなものを山盛りチョイス。

 立食式と言っても、座って食べる事も出来る様に、テーブルもあります。

 料理長の料理は、何を食べても美味しいので、少し盛りすぎました。

 エビのカクテル、ローストビーフのサラダに、Tボーンステーキ。

 Tボーンステーキは、食べやすいようにカットしてもらい、ボリューム重視です。

「ルイーズ、やまもりだね~」と、フェオドールにびっくりされてしまいました。

「フェオドールは、それで、おなかいっぱいになるの?」

 一口サイズに切り分けられた『カツサンド』と、私が作ってと頼み込んだ『から揚げ』少々。

 男の子はガッツリ食べて大きくならないと……。

「ルイーズが、あいさつにまわってるあいだに、たべたからね。この『からあげ』って、いうのがおいしかったから、おかわり。えへへ」

「きにいってくれたんだ。その『からあげ』も『カツサンド』も、わたしがりょうりちょうにおねがいして、つくってもらったの」

 日本の料理文化は凄いね。異世界でも大うけだよ。

 私はこれを食べ終えたら、デザートも山盛りの予定です。


 テラスの方で料理をいただこうとすると、誰かに呼び止められました。

「ルイーズさま、おたんじょうびおめでとうございます」

 ダリウス・シュナウザー様と、ご令嬢がお二人……姉妹かしら?よく似てるわ。

「ダリウスさま、お久しぶりです。きょうは、おいわいにきてくださって、ありがとうございます」

「おひさしぶりです。こちらのおふたりが、ごあいさつをしたいとのことで、いっしょにまいりました」


 こちらから、挨拶をするのね。貴族のルールって、少し面倒だわ。


「はじめまして、ルイーズ・ハウンドともうします」

 私がそう挨拶をすると、ツリ目がちなオレンジの瞳に、深いブルーの髪のご令嬢が、カーテシーをしました。

「ルイーズ様、お誕生日おめでとうございます。私は、パトリス・シェパード子爵の子、ナディア・シェパードと申します。そして、この子は私の妹でございます」

「おたんじょうびおめでとうございます。わたしは、ナタリー・シェパードともうします」

 妹のナタリー様は、ナディア様と同じ瞳の色だけど、髪の色が少し明るいブルーです。


 ナディア・シェパード……聞いたことある名前ね。誰だったかしら?

 私が思い出せずに、沈黙していると、フェオドールが「ぼくにも、しょうかいして」と言い、顔を覗き込んできました。


「ダリウスさま。ごしょうかいさせてくださいませ。こちらにいらっしゃるのが、フェオドール・マスティフさまです」

「はじめまして。ユーリ・シュナウザーはくしゃくがこ、ダリウス・シュナウザーともうします」

「はじめまして。ブライアン・マスティフはくしゃくがちょうし、フェオドール・マスティフです」


 2人が挨拶をし終えると、私のおなかが『くぅ~』と鳴りました……。腹ペコ、辛い……。

 フェオドールはクスクス笑ってるし、ダリウス様は笑っていいものなのか、わからなから、手で口元を覆ってるし……いや、笑っていいんだよ。子供だもの……。


「あの~。あいさつもすんだところで、しょくじをいただいてもよろしいですか?」

 目の前で、おあずけされてる犬の気持ちです。

「もうしわけありません。しょくじのじゃまをしてしまって……」

 申し訳なさそうなお顔をするダリウス様。

 別にいいのですよ、ご飯さえいただければね。


「ダリウスさまもごいっしょに、おしょくじになさいませんか?わがやの、りょうりちょうのりょうりは、じまんなんですの」

「さきほど、すこし『カツサンド』というものを、いただきました。とってもおいしかったです」


 そうでしょう。初めて『カツサンド』を作って貰って以来、進化を続けています。

 今では『カツサンド』のソースは数種類、カツレツのお肉もチキンにポーク、ビーフ。

 挟む野菜も、肉やソースによって変化します。

 最近では、薄くスライスしたチキンにチーズを挟んでカツレツにし、トマトソースをかけた『チーズチキンミルフィーユサンド』が絶品だったわ。


 私はケンゾーに、お料理を持ってきてとお願いして、ダリウス様とナディア様、ナタリー様に席を勧めました。

 ダリウス様は座られたのですが、姉妹方は遠慮しています……。

 

「ルイーズ様。私は、レイナルド王太子殿下の侍女をしております。王太子殿下の婚約者候補でいらっしゃるルイーズ様と同席は、恐れ多くて出来かねます」

「……こんやくしゃこうほ?そのようなおはなしは、きいておりませんが……」


 陛下が戯れに仰った言葉はノーカウントです。 

 家柄的に、他の貴族が候補にと、画策してる可能性もあるけれど、父様や陛下がお許しにならないでしょう。


「しかし……」

「じじつよ。ちちもへいかも、わたくしをこんやくしゃとして、たてることはないと、おっしゃってました。ですから、いっしょにしょくじをしましょう」

 だから、食事をさせて。お願いよ。

 

「ぼくが、ルイーズをおよめさんに、もらうんだからね。とうさまにも、きょかをいただいてるし」

 ふぇ、ふぇ、ふぇおどーる?!


 さらっと爆弾発言をするフェオドール……マスティフ伯爵様も、なぜ許可したんですかっ。

 父様から事情を聞き、巫女の伴侶となる可能性があると、知ってらっしゃるのに。


「えっ!ルイーズさまをこんやくしゃとして、おむかえしようと、ちちにおねがいしていたのですが……」

 ダリウス様っ!!おまえもかっ!!

 ルイーズ、一生に一度のモテ期なの??

 折角のモテ期、勿体ない。

 来るなら、邪神退治の後にして欲しいわ……。


 ダリウス様とフェオドールは睨み合ってるし。

 姉妹は呆気にとられてるし。


 『ぐるるるるるるーー』もう、無理。もういいや……。

 いただきま~す。


 パクッ「おいしい~~♪くうふくは、さいこうのスパイスよね♪」

「ルイーズ。『からあげ』も、おいしいよ」

 そう言いながら、フェオドールが『から揚げ』をフォークにさし、口に運んでくれました。

 はむっ「おいしい~。さめてしまっても、サクッとしててジューシー」


 料理長は料理の天才だね。


「フェオドールもいっしょにたべよう。ね?」

 一人で食べても楽しくないので、フェオドールに食べる様、勧めます。

「うん、いっしょにたべようね。ルイーズが、もってきたおにくも、おいしそうだね」

 ん?どっちだろ。Tボーンステーキかな?

「これ?」と聞くと、頷いてたので、ステーキをフォークでさし、フェオドールの口に運びました。

「おいしい」と、フェオドールはニッコニコです。


 そうそう。

 些細な睨み合いは、美味しいものでも食べて忘れてしまいなさい。

 そう思っていると、ダリウス様が「わたしにも、ひとくち……」ポツリと一言。

 

「はい。どうぞ」と言って、Tボーンステーキを、ダリウス様の口に運びました。

「おいしいですね」

「そうでしょう。たくさんめしあがってくださいね」


 ケンゾーが持ってきてくれた料理も含め、5人で食べさせあいっこをしながら、デザートまで完食しました。

 少々強引に、着席させた姉妹も含めて。

 ふう、落ち着いた。

 お茶をいただきつつ、本音でも語りましょうか。


「ダリウスさま、フェオドール、おはなしがあります。わたくしは、こんやくしゃはもちません。しょうらい、すきになったかたと、けっこんしますので」

「ええーー!ルイーズは、ぼくのこときらいなの?」

 フェオドールが頬を膨らませて、抗議します。

「すきよ。でも、すきはすきでも、けっこんしたいすきは、べつものなの」

 幼少期の好きと、恋愛は違うもの。

 幼少期は、一緒に居て、楽しかったら好きって思考になるし……。

「けっこんしたくなる、すきってどんなの?」


 それは……子供に説明するのって難しいわね。

 説明に困っていると、ダリウス様が口を開きました。

「ルイーズさま。どのようなかたと、けっこんしたいと、かんがえているのですか?」


 ダリウス様、ナイス切り口!

 でも、結婚の話を持ってくるより、お友達として、仲良くなりたいわ。

 だって、従者面談以来で、お互いよく知らないでしょう。


「ダリウスさま。まずは、けっこんのおはなしより、おともだちとして、なかよくしてはいただけませんか?2ねんまえの、あのときいらい、おはなしもしたことがございません。あと、おともだちとして、なかよくしていただけるのでしたら『ルイーズ』と、およびください。そして、くちょうは、もうすこし、くだけたかんじでおねがいします」


 堅苦しい言葉使いをしていると、いずれボロが出るわ。

 まだまだ、慣れないのよね……。


「ル、ルイーズ……わかりました……いや、わかった。ぼくのことは『ダリウス』とおねがいします……いや、おねがい?」

 そんな難しい注文したかな?赤面しながらも、砕けた口調で了承されました。

 普段から、砕けた口調では話さないのかも。

「ダリウス、くだけたくちょうで、はなすのが、むずかしいのだったら、はなしやすい、くちょうでかまわないわよ。なまえは、だいさんしゃがいないかぎり、『ルイーズ』でいいわ」


 私がそう告げると、少しホッとした様な表情をしました。

 やはり、普段から畏まった口調のようね。


「では、ふたりともきいてね。わたしが、けっこんしたいとおもう、りそうをはなすわね。まず、わたしよりつよいひと。けんじゅつでも、まほうでも、どちらでもいいの。そして、じぶんじしんをたいせつにするひと。わたしは、じぶんがぎせいになってもって、かんがえかたはすきじゃないの。のこされたときが、かなしいから(前世の夫が先立った時に思ったのよね)とりあえずは、これくらいかしら」

 

 私の話を聞いて、二人は「ぼく、まほうではルイーズより、つよくなるのはむりだから、、けんじゅつでつよくなる」と、フェオドールが拳に力をこめて宣言しました。

「では、わたしはルイーズより、まほうでつよくなります」と、ダリウスも力強く宣言します。

 

 この後、10歳になったら冒険者になるという事を告げたり、魔法について話したり、将来は、世界中を旅して美味しいものをたくさん食べたいと言ったりと、楽しい時間を過ごしました。

 姉妹は……聞いてるだけで、会話に加わってはくれませんでした……。

 嫌われてるのかな?


 ◇ ◇ ◇


 誕生日パーティーも終わり、集まって下さった方達が、帰って行かれます。

 ダリウスとは、お茶会の約束をしました。

 フェオドールと、マスティフ伯爵様は、一泊して帰るそうです。

 マスティフ伯爵様と陛下と父様は、お酒を嗜みながらお話をされ、楽しい時を過ごしたようです。

 3人集まっての、会話は学園以来だそうです。


 濃密な1日だったので、くたびれました。

 もう、ぐっすり休みたいです。

 明日、起きたら頂いたプレゼントを開封しましょう。

 ドレスという戦闘服を脱ぎ、寛ぎ体制になった時……。


 思い出したーーーーーーー!!

 ナディア・シェパード、レイナルド王子の侍女。

 密偵の様な事や、暗殺の様な事までする有能な、影。

 戦闘パートで、王子が必殺技を繰り出すときに、出てくるのです……。


 私、嫌われてないよね?

 


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