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楽しい転生  作者: ぱにこ
20/122

18話

「みなさま、ほんじつは、わたくしのおいわいに、あつまっていただきありがとうございます」


 うわ~、人口密度が高いわ。

 色彩豊かなドレスの海、高らかに響く『ホホホ』の笑い声。

 凄いね、侯爵家。凄いね、宰相の人脈。

 肉食獣が獲物を見つけた様な目をしているよ。

 逃げるのよ、ルイーズ!貴方は小さなうさぎさん。

 肉食獣が、ジリジリ詰め寄って来てるわよ……。

 

 本日、2度目の現実逃避に走るルイーズです。

「さあ、ルイーズ。挨拶回りに行くよ」

 父様は、遠い目をしてる私に構う事なく、挨拶回りを促します。

「……はい。とうさま」


「まあ、まあ、愛らしいお嬢様です事。ホホホ」

「ルイーズともうします。ほんじつは、おこしくださりありがとうございます」


「流石は、侯爵家のご令嬢ですな。聡明そうで、美しくも愛らしい」

「ありがとうございます、ルイーズともうします。ほんじつはおこしくださりありがとうございます」


「本日は、おめでとうございます。私はーーーーーーーーーーーー」

「ありがとうございます」


 ルイーズは、スキル『聞き流し』を覚えた。


「ーーーーーーーーーーーー」

「ありがとうございます」



 ………………。

 ……………………。


 こんなやり取りを何度すれば、終わるのっ??

 もう、ぐったりよ!!


「ほう、我に会わしたくないと頑なに拒むだけあるな。うむ、息子の嫁に来るか?」

「……?」

 スキルのせいで、よく聞き取れなかった。

 風格のあるイケメンなおじさんです。

 私が言葉を発せずにいると、父様が怪訝そうな顔つきで、イケメンおじさんを見ています。

「アベルよ、そのように怖い顔をするな。ちょっとした提案ではないか」

 宰相の父様に、気安く話しかける事が出来るイケメンさんは、何者なのでしょうか?

 気になり、父様に目線を送ります。

 すると、父様は『任せなさい』と言わんばかりに、私を後ろに隠し、小声でイケメンさんに話しかけました。

「陛下。なぜこの場にいらっしゃるのですか?」


 へ、へ、へ、へいかーーーっ?!

 王様?!

 あわわわわーーー、落ち着くのよルイーズ!ご挨拶を、淑女の礼をするのよ!

 でも、でも、陛下に発言の許可をいただいてないわっ。

 私が、アワアワと落ち着きのない挙動に走ってると、父様が耳元で「落ち着きなさい、ルイーズ。今、追い返すからね」と、囁きました。

 父様、その発言は臣下としてどうなの?


「それで、陛下。変装までして、いらっしゃった理由をお聞かせ願いますか?」

「いつも、いつも、お前から『愛娘ルイーズ』の自慢を聞いてるからな。会いに来た」

 …………。

 父様?『愛娘ルイーズの自慢』ってなんですか?

 知らない所で、何を噂されてるんだろう?


 父様に、発言の許可をいただけるか伺います。

「とうさま、へいかに、はつげんのきょかをいただいてくださいませんか?」

「ルイーズ、話さなくてもいいんだよ。君は私が、守るからね。母様の元に、避難していなさい」

「とうさま……そういうわけには、まいりませんわ。わたくしも、へいかのしんかなのです。こうして、あしをはこんでくださったへいかに、ごあいさつもせず、せきをたつことなんて、できませんわ」

 陛下には、私の件でも、ジョゼの件でも、お世話になっていると聞いたわ。

 また、邪神復活の件でも、お世話になると思うのよ。

 良い印象を持っていただかないと。


「陛下。本日は、王として参られたのですか?それとも、友『フレデリック』として、来たのですか?」

「アベル。今日は友としてきた」

「では、息子の嫁という発言は、戯れですね」

「……」

「戯れですね」

「いや、ルイーズ嬢が、城に来てくれたら楽しくなりそうだなと、思ったのでな。戯れに言ったのではないのだが……ルイーズ嬢にその気がないのならば、致し方なし」

「愛娘ルイーズには、その気は全くなし!そうだろう、ルイーズ?」


 えっ?急に話を振られました。

 嫁って言ったよね、王子に嫁ぐって事よね。

 もちろん、その気はないわ。


「ええ、とうさま。わたくしは、とつぐきもちはございません」 

 父様は、ほら見ろと言わんばかりに、陛下に目線を飛ばします。

「ルイーズ嬢、発言を許可するので、アベル越しではなく、直接話そうではないか」

 陛下に、発言の許可をいただきました。

 父様の額に青筋が浮いていますが、今は気にしないでおきます。

 間接的に話されると、理解できない事がもどかしいのです。


「ハウンドこうしゃくがこ、ルイーズともうします。ほんじつは、ごたぼうにもかかわらず、あしをはこんでくださり、こうえいにございます」

 私が淑女の礼とともに、そう挨拶をすると、陛下の口元が、にやけた様に見えました。


 ◇ ◇ ◇

 

 会場の人混みの中で話す内容ではないと、父様の私室に移動しました。


「それで、愛娘ルイーズと話したい事とはなんですか?」

「この目で見たいというのが、一番の理由だな」

「では、用は済んだのですね」

「2番目の理由があってな。『あいすくりーむ』を食べたい」

 父様と陛下は、お酒を嗜みながら、話始めました。


「あいすくりーむですか?ただいま、おもちしますね」

 私は『アイスクリーム』を持ってくるように、待機している侍女に伝えました。


 『アイスクリーム』を食べたいからと、変装までしてくるなんて……。

 私と一緒で、食いしん坊なのかしら?


「ルイーズ、陛下の仰る『あいすくりーむ』も、言い訳に過ぎない」

「そうなのですか?」

「陛下は、前世の話を聞きにいらしたのだ」

「アベルにはお見通しだな。ルイーズ嬢、前世の世界が、どういう風だったのか、文化の違いなどを聞きに来たんだ」


 こちらの世界との違いを話そうとしたら、思いつく限りでも、何日もかかるわ。

 

「こちらのせかいとの、ちがいですか……まず、まほうはありませんでした。そのかわり、かがくがはってんしていて、ちょうきょりのいどうには『じどうしゃ』や『ひこうき』、『でんしゃ』などをりようします。いどうしゅだんは、まだほかにもございますが……おもだったものとして、れいをあげてみました」


 移動手段なんて、自動車にバス、自転車、バイク、飛行機にヘリコプター、電車や新幹線、持ち手を前に倒すと動き出すのもあるし、細かく分けるときりがないわ。

 船も種類が豊富だし。


「魔法がない世界に住んでいながら、異世界人の『ちーと』というのは、なぜ起きるのだ」

「ひをおこすげんしょうひとつでも、こまかくぶんせきし、まなぶせいでしょうか」

「分析とは?」

「みずは、なにがあつまっているものか、かぜは、なぜふくのか。めにみえない『さいきん』とよばれる、ちいさないきものがおこす、やまいのことも……いせかいじんは、まほうがつかえないぶん、ちいさなことから、おおきなことまで、しりたいという、よっきゅうがあるのです」


 大きなことって言ったら、宇宙よね~宇宙の旅とかしてみたかったわ。

 

「ふむ、実に興味深い。もう少し事細かく聞きたいが……今宵の主役が、いつまでも、席を外すわけにもいかぬだろう。近いうちに、城に来て話の続きを聞かせてはくれまいか?」

 父様の、お顔の表情が険しくなりました。

「陛下、愛娘ルイーズの社交界デビューの日まで、お待ちください」

「後5年もあるではないかっ!……だから……息子の婚約者に……」

 陛下は小さな声で、何かを呟いています。


 社交界デビューは10歳になった時です。

 この年で、城に訪問は出来ないのです。重要な案件でもないかぎりは。

 そう、王太子殿下や王子殿下の婚約者の選定でもないかぎり……、あっ!


 陛下は、私が王城に訪ねる事が出来る様に、王子殿下の婚約者にしようと……。

 だから、父様は警戒されていらっしゃったのね。


「はあ、それで、嫁に来ないかと仰ったんですね。愛娘ルイーズの10歳になる時を、お待ちください」

 父様は納得されたようです。

 

 陛下は項垂れておりましたが、侍女が持ってきた『アイスクリーム』を召し上がると『美味い』と、感激して、明るい表情になられました。

 人は、美味しいものを食べると元気が出るもの♪


 ◇ ◇ ◇


 陛下とのお話は、長時間ではなかったものの、緊張して疲れました。

 陛下は、会場の皆様がお帰りになる時まで、父様とお話をされるそうです。

 うん、誰かに気付かれると、混乱を招くもの。


 もうすぐ、ダンスの時間です。

 パートナーである、フェオドールを探す為、会場を見渡すと「あっ、いました……」

 令嬢に囲まれて、貼り付けた様な笑顔のフェオドールを、発見しました。


 うわ~、あの中のフェオドールに話しかけるの?

 小さな肉食獣の様な令嬢の間を、掻き分けて?

 無理でしょう……。

 

 よし!念を送ってみましょう(気が付いて、フェオドール!こっちよ!)

 ……。

 こちらを向いてくれたら儲け物ぐらいに考えて、やってはみたものの、やはり無理ね。

 手を振ってみましょうか?

 ぴょんぴょん飛び跳ねてみる?

 

「おじょうさま……。命じていただけば、フェオドールさまをお連れいたしますが」

 呆れた口調で、ケンゾーに言われました。

 そうね、目から鱗だわ。

 初めから、ケンゾーに呼びに行ってもらえば良かったのよ。

「そうね、おねがいします」

「かしこまりました。少々、おそばをはなれます」

 

 ケンゾーは凄いわね。人混みをスルリと掻き分けて行くわ。

 本当に忍者みたい。忍者の着物を作って着てもらおうかしら。


 あ、フェオドールが脱出に成功したわ。


「フェオドールさまをお連れいたしました」

「ありがとう」


 私はケンゾーにお礼を言って、フェオドールに再会の喜びを告げます。

「おひさしぶりです。フェオドールも、ごかぞくのみなさまもごけんしょうですか?」

「うん、ルイーズもひさしぶり。とうさまやかあさまも、おげんきだよ。ほんとうはね、ルイーズのおいわいに、かあさまもおいでになるはずだったんだけど、ちょうじかん、ばしゃにのるのは、おからだにさわるから、とうさまとぼくだけで、きたんだ」

「はくしゃくふじんは、おかげんがわるいの?」

「ううん。かあさまのおなかに、いもうとかおとうとがいるの」


 ええ~っ、フェオドールに妹か弟が出来るって……。

「おめでとう~~フェオドールもおにいさまになるのね♪」

「えへへ、ありがとう。ほんとうにたのしみだよ」


 ゲームの物語と違うけれど、素敵な違いね。

 素晴らしいわ♪


 

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