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楽しい転生  作者: ぱにこ
19/122

17話

「ほんじつは、おひがらもよく、わたくし、ルイーズのせいたん5しゅうねんパーティーにあつまっていただきありがとうございます」


 違う……。


「ほんじつは、あしもとのわるいなか、あつまっていただき、かんしゃいたします。えんもたけなわ、みなさま、ごゆるりと、ごかんだんください……」


 ……………もう、何が言いたいのっ!!


 混乱してる、ルイーズです。

 本日、5歳の誕生日を迎えます。

 5歳と言う事で、盛大な誕生日パーティーを、開催する運びとなりました。

 2か月程前から、ドレスの仮縫いやら、アクセサリー選びの為、商人などの対応に追われていました。


 もう、誕生日パーティーなんて、イラネ!って、何度!……何度!……思った事か……。


 今でも、逃げたい気持ちでいっぱいです。

 父様から『集まって下さった皆様に、一言、挨拶をするんだよ』と言われ、スピーチを考えています。

 スピーチ回避の為、絶望を顔で表現し『そんなっっ……』と、女優並みの演技をしてみましたが、何がウケたのか?父様に、喜ばれただけでした。


 こんな時に頼りになるジルは、居ません。

 私の従者が決まった後、かねてより秘かに愛を育んでいた人物と、めでたく結婚いたしました。

 そのお相手は……料理長の『ブリュノ』です。

 食いしん坊な私が、調理場へ突撃をする事、数え切れず……。

 ジルと料理長が顔を合わすのも数え切れず。

 仲良くなるのは、自然の摂理ですね。

 私が、キューピッドですよ♪

 使用人同士と言う事で、父様に許可をいただき、結婚式に参列しました。

 花嫁姿のジルは、本当に美しく、女神の様でした。

 結婚後も仕えてくれていたのですが、子供が出来たので『産休、育休』中です。

 女の子が生まれても、男の子が生まれても、我が家に仕える様に仕込むのだそうです。

 ジルの『産休、育休』が終わるまで、私は待ってるからね……。

 いつまでも……。

 いえ、今来てくれないかしら……。

 虫の知らせってやつで、気が付いて来てくれないかしら……。

 いえ、大きなお腹で無理をさせてはいけないわ。

 では、電報の様な物で……。

 駄目よ、ルイーズ。

 妊婦に気苦労をかけては……。

 でも、でも……ヘルプ・ミーーーーージルーーーー!!!

 ・

 ・

 ・

 さて。

 現実逃避していないで、スピーチを考えましょう。

 従者として優秀なケンゾーに『ケンゾー、いっしょにかんがえて』と、お願いしてみたら、苦悶の表情を浮かべています。

 身体能力をかわれて、従者になったんだものね、8歳児に無理なお願いをしてしまいました。

 前世の記憶持ちの私ですら、貴族相手のスピーチなんて思い浮かばないもの。

 もう、ここは子供らしく、笑顔を振りまいて『きてくださって、ありがとうですの~~』とか、『こんなたくさんのひとに、いわっていただいて、うれしいですの~~』とか、演技してみる?


 そんな事をぶつぶつ言ってると、ケンゾーが呆れた顔をしています。

「おじょうさま。子供らしくて、よろしいかと思いますが、少々バカっぽいです。それに、ふだんのおじょうさまを知っていらっしゃるご主人さまや、おくさまの前で、そのえんぎができますか?」

「むりーー」

 絶対に無理だわ。

 絶望の演技ですら、ウケた父様に、こんな演技をしたら……。

 父様の、どの様なツボにハマるのかが、わからないから恐ろしいわ。

 

 うん、ここは潔く諦めよう。

 皆様の前で『おいわいに、あつまってくださり、ありがとうございます』だけでいい。

 うん、そうしよう!

「ね、ケンゾー」

「あきらめたのですね」

「あきらめました」


 さて、皆さまが集まるのは夕方だし、心の栄養補給にジョゼと戯れに参りましょう。

 もうすぐ3歳のジョゼは『ねぇしゃま~、あしょんでくだしゃい~』と、たどたどしくも愛らしくお喋りが出来るのです。

 舌足らずな話し方と、くりくりした瞳に見つめられると、どんなに予定が詰まっていても(主に勉強)『NO』なんて言えませんわ。

 小さくぷっくりした手を繋いで、お庭を探索しようかしら♪草木については、アルノー先生に教わってるし、ジョゼの教育の為に、ひとつひとつ教えながら散歩しましょう。

 情操教育ね。


 ケンゾーにジョゼの部屋に行く事を告げると、サッと扉の前に立ちふさがり、通せんぼされてしまいました。

「ケンゾー?わたくし、こころのえいようほきゅうに、むかうのよ」

 さあ、通せ!と言わんばかりに、腰に手を当て、胸を張り、威嚇してみる。

 私、悪役令嬢っぽいわ!


「おじょうさま。支度にどれだけ時間がかかると、思っていらっしゃるのですか。ドレスをまとい、かみを結い上げ、軽くけしょうもされるのですよ」

「ぐっ!!」

 ケンゾーの話を聞いて、言葉が詰まった。

 これが『ぐうの音』なのかしら?『ぐ』しかでなかったから、違うのかしら?


 でも、なんで!まだ5歳よ!化粧なんてしなくていいでしょう!ドレスだってすぐに着れるわ。

 髪だって、一つにまとめてダンゴでいいじゃない!


 そう思っていたら、ケンゾーが奥の手だと言わんばかりに。

「おじょうさまのドレス姿を、ジョゼぼっちゃまが楽しみにしていらっしゃいましたよ。それに、本日はフェオドールさまもいらっしゃって、パートナーとしてダンスをおどられるのでしょう?美しくよそおい、パートナーに喜んでいただきませんと」


「むう~、ジョゼやフェオドールのなまえをだすなんて、ひきょうよ。……しかたがないわね。みじたくをいそぎます。そのあと、ジョゼとあそんでもいい?」

 私がそう聞くと、ケンゾーは苦笑いをしながら。

「仕方がありません。ドレスをよごさないように、お気を付けてくださいね」

「ええ、ええ、やくそくするわ。ジョゼといっしょに、おにわのおさんぽ……は、だめね……ジョゼに、ほんをよんであげるわ」


 ケンゾーは私の返答を聞くと、満足気に頷き、扉をあけました。

 すると、待機していた侍女2人が、ケンゾーと入れ替わりに入室し、キラリと目を光らせ「さあ、お嬢様。身支度を始めますよ」と、腕まくりをしました。


 やる気ですね!いいでしょう、受けて立ちますよ!


 ◇ ◇ ◇


 ルイーズです。

 初コルセットです。

 5歳なので、くびれとか必要ないと思うのです。

 ケポッと、吐きそうな感じがします。

 淑女たる者、我慢だそうです。ええ、防具だと思って我慢します。

 その内、毎日コルセットを着るのだから、鎖かたびらの様な物を仕込んで、防具にしようかしら。

 コルセットに仕込むのだから、余り厚みが出ないように鎖を編み込んだほうが良いわね。

 色々考えてると、夢が膨らみます。

 今日の為、用意されたドレスは、私の髪の色に合う様、ブルーグリーンの色合いになりました。

 シフォン生地にパフスリーブで、ウエスト部分に淡いグリーンのリボン、ピンクの大きな薔薇のコサージュがついてます。

 パニエでスカートをふんわりさせてるので、モコモコです。動きにくいです。

 長くなった髪も編み込んで、ドレスと同じ薔薇の髪留めをします。

 ここまで来ると、満身創痍です。

 装う度に、満身創痍です。

 この苦痛も慣れてくるのかしら?


 仕度が整った私の後ろで、侍女2人が、互いの手をとりあって喜んでいます。

 同じ仕事に打ち込み合った仲間、結束力が付いたのでしょうか?

 そんな感じがします。

 

 苦痛の後は、ジョゼに癒されましょう。

 もう、部屋には用はないとばかりに、力いっぱい扉を開け放つと、ケンゾーが待機していました。

 ケンゾーは、勢いよく開け放たれたドアに驚き、言葉を失っている様子です。

「ごめんなさい。そこにいるとおもわなくて、けがなどはしなかった?」

 身体能力の高いケンゾーが、怪我をするとは思っていないけど、危ない事には変わりないから、素直に謝ります。

「……いえ、少しおどろいただけです。美しくよそおっているおじょうさまを、はいけんするのは、初めてですので」

 ……った、確かに初めてだろうけれども、驚くほど?

 近い将来、毎日、ドレス姿を目にするのよ。

 毎日ドレスかあー。

 想像するだけで、憂鬱……。

 

 ケンゾーが従者になって、暫く経った後、気を使われると堅苦しいので、言いたい事や、私が間違った事をした時に、きちんと発言する様にと伝えました。

 それから、ケンゾーはズバズバ発言するようになりました。

 オブラートに包んだら?って事も。

 

「これは、れいじょうの、せんとうふくよ。つねに、みにつけてなくてはいけないのならば、いずれ、ぼうぎょめんをきょうかして、ぼうぐとしてのきのうも、そなえようかとおもってたのよ」

「……」

 痛い子を見る目はやめてっっっ。


 ◇ ◇ ◇


 気を取り直し、ジョゼの私室のドアをノックしました。

 コン、コン。

「どうじょ~」と、愛らしい声が聞こえたので、私は扉を開け「ジョゼ、あそびにきましたよ~」と、返事をしました。

 ジョゼは「ねえしゃま~~きてくれたのでしゅね」と、愛らしい声とくりくりの瞳を輝かせ、飛びついて来ました。

「ええ、したくをととのえたので、ジョゼといっしょに、すごそうかとおもってきたのよ」

「うれしいでしゅ~、あっ、ねえしゃま、とっても、おきれいでしゅね」

 ジョゼ~~、はあ、天使だわ。天使がいるわ。

「ジョゼに、ほめられるのが、ねえさまはいちばんうれしいわ♪」

 そういうと、ジョゼはうふふと笑ってます。


 ヤバいわこの子。可愛すぎるわっ。

 誰かの目に触れたら、誘拐されないかしら?目を光らせておかないといけないわっ。

 そう思い、辺りを警戒すると。


「おじょうさま。たしかに、ジョゼぼっちゃまは、愛らしいですけれども、こうしゃく家に、ふほうしんにゅうするやからは、いませんよ。それと、おじょうさまのきょどうは、ご主人さまに、とても、にていらっしゃいますね」

 ケンゾーはそう言い放ち、くすくすと笑い始めました。


「えっ、とうさまに、にてるの?えーーーーーーー」


 似てるって言葉で、私もあんなに『親バカ』っぽいのって思ったけれども。

 ジョゼが愛らしいのは確かだし、警戒する気持ちは、私にも、父様にもあるって事よね。

 一人より二人、目を光らせておく人間は、多い方がいいわ。

 よし!問題なし。


「ケンゾーも、ジョゼのしんぺんに、ふしんなじんぶつが、ちかよらないよう、けいかいしていてね」

 ケンゾーも巻き込みます。


「…………。ジョゼぼっちゃまのしんぺんに、きょどうふしんな人物。おじょうさまが、いらっしゃいますが……」

 ムキーーーー!!

「わ、わ、わ、わ、わ、わたくしはいいのよーー!!」

「くふふふふ。ねえしゃまとけんぞーは、おもしろいね~」

 私達のやり取りを、なぜか喜んでるジョゼ。

 ジョゼが楽しいのなら、姉様は挙動不審人物のレッテルを、甘んじて受け止めますよ。


 この後、ジョゼと一緒に本を読み、心の栄養をたっぷり補給した後、私は戦場へと(誕生日パーティー)向かうのでした。

  

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