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楽しい転生  作者: ぱにこ
18/122

16話

 毎朝の鍛錬の後。

 父様に、ジョゼの封印具が出来たと知らされました。

 指輪だと、誤飲の恐れがある為、却下。

 試行錯誤の末、ブレスレット型になったそうです。

 ジョゼが成長するにつれ、ブレスレットの大きさが変化し、あるキーワードを言わないと、取り外しも出来ない仕様にしたそうです。

 幼い内は、遊んでる時に、外してしまわない様に。

 大きくなったら、必要に応じて外せるようにとの事だそうです。

 希少価値の高い『オリハルコン』を使用し、闇の魔石を埋め込んだシンプルなデザインで、天使なジョゼには、少々無骨な感じもしますが、大きくなった時を想像すると、似合ってるのでOKでしょう。


 鍛錬、朝食、淑女教育やアルノー先生との勉強などを終え、まったりしたい午後。

 父様が吟味した従者候補の面談をしています。

 戦闘能力を見極めるのも必要だと言う事で、訓練所での面談です。

 候補は3人。

 黒目黒髪の少年、黒髪に赤い目の少年……。

 そして、なんでだろう。目がおかしくなったのかな?アルノー先生が居ます……。


 私は高く手をあげ、質問する事にしました。

「あるのーせんせい。なぜ、こちらに?……じゅうしゃの、めんだんのはずですが」

「ルイーズ様、良い所に目を付けましたね。確かに従者の面談です!が、私が希望して、ハウンド侯爵に頼み込みました」

「なにゆえ?」

「面白そうだから?!」


 先生、全く意味がわからないわ。

 面白そうだから、茶化しに来たのかな?

 それだと、父様にお願いはしないはずだし……。


「あるのーせんせい、いみがわかりません!」

「まあ、正直に言うと、私には、兄がいるので跡継ぎ問題がありません。私は、歴史を専攻するほど好きで、常々遺跡巡りをしたいと思ってたんです。世界を回ると言う利害一致の上で、ルイーズ様と一緒に、冒険者になろうと思ったのですよ」


 アルノー先生……冒険者になれるのは、10歳からです。

 その後、学園生活を卒業して、邪神討伐の旅に出るのだとしても、10年は先になるのですよ。

 現在、アルノー先生は19歳ですから、29歳になってるのです。

 貴族の務めとして、家庭を持ったりしなくてもいいのでしょうか?

 それに都合よく、遺跡巡りが出来るとも限らないのですが……。


「あるのーせんせい。わたくしが、ぼうけんしゃになり、せかいをまわれるひは、はやくても10ねんごですが……かていをもったりしなくても、よろしいのですか?」

「……家庭と遺跡……うーん…………遺跡……うん、遺跡ですね。ルイーズ様、遺跡が勝ちました。確かに、その時が来ないとわからない事もあるでしょう。しかし、今は、遺跡巡りしか頭にないのです!!」

 力強く断言されました。

 なぜか、前世の萌えについて語る時や、好きなゲームを布教してる時の自分を見てるようです。

 何も言うまい……。


 とりあえず、他の2名の面談もしなくてはいけないので、アルノー先生には座ってもらうことにしました。


 まずは、少しタレ目で、左側に泣きボクロがある、黒目黒髪の日本人にしか見えない少年から。

「まず、おなまえと、ねんれいと、とくいなえもの、まほうなどをおしえてください」

「はい。『マティス・シバ』だんしゃくが3なん、ケンゾー・シバともうします。としは6さい。とくいなえものは『カタナ』です。いまは、みじかい『タントウ』をつかっています。まほうは、かぜまほうがとくいです」

 

 あの~、日本人?

 刀って言ったよね。

 名前は柴犬をもじってるよね。もう、どこから突っ込んで聞いたらいいのか……。

 

 まずは、出身国かな?それを聞いてみましょう。

「けんぞーさま。くろいひとみが、めずらしいので、おききしたいのですが、ごかぞくの、どなたかが、ほかのくにの、かたなのですか?」

「ルイーズさま、『ケンゾー』とおよびください。ははがりんこくの『サクラこうこく』しゅっしんですが、ちちは、このくにのまほうしょうにつとめています」

 ああ、味噌や醤油を作ってる国ね。

 いずれ隣国に遊びに行きたいわ♪きっと、ノスタルジーを感じるはず。

 

「では、りんこくしゅっしんのおかあさまに、けんじゅつをならってるのかしら?」

 この国に刀はないから、聞いてみましょう。

「いえ、ははかたのそふにおそわっています。そふは、きぞくではなく、すごうでのぼうけんしゃでした」


 冒険者の娘が、男爵家に嫁いできたのね。

 どんな出会いだったのかな……。

 凄腕と言われるケンゾーのおじい様にも会ってみたいわ。


「それは、すばらしいですわ。けんぞーのおじいさまに、いちどおめにかかりたいです」

「こうえいに、ございます。そう、そふにつたえておきます」

 

 魔法や剣術の腕などは、後で3人まとめて見せてもらいましょう。

 そう思い、ケンゾーに座って待ってる様に伝える。


 次は……。

 とーーーーうーーーーーーさーーーーまーーーーー??

 ・

 ・

 ・

 黒髪に赤い目って、攻略対象者の『ダリウス・シュナウザー』ではないですか~??

 ゲームでの成長した姿しか見たことないけど、面影がありますよ~~

 少々混乱して、うなだれてる私に、ジルが手紙を差し出しました。

「……?」

「ご主人様からの、メッセージだそうです」

「とうさまからですか……」

 私は手紙を受け取り、読みました。


『愛しいルイーズへ

 きっと従者面談で、混乱してるだろうと思い、手紙を書く。

 面談の場に、シュナウザー伯の子息がいるのは、父様の策略だ。

 もちろん、シュナウザー伯には、跡継ぎとなる長子がいるので、快く承諾してくれた。

 安心しなさい。

 将来、巫女の伴侶となりうる可能性を秘めた者だと、愛しいルイーズに虫がつかないという、安全対策になる。そして、将来は旅を共にする仲間、親交を深める事も出来る(決して、深めすぎてはいけないよ)

 父より』


 伯爵家の御令息を、従者にしようと思った父様……。

 何を考えてるのですか?

 いえ、私の虫対策でしたね……。

 でも、駄目でしょう!

 ダリウス様は、王子の側近という立ち位置になるのですよ。

 私の従者にしてしまって、物語にどんな支障が出てしまうのか、予測がつかな過ぎて、対策が出来なくなるではないですかっ!!


 お断りしなくてはいけませんが、形式上、面談は進める事にします。

 ケンゾーに問うたのと同じように、ダリウス様にもお聞きしましょう。


「それでは、めんだんをすすめます。つぎのかた、おなまえと、ねんれい、とくいなえもの、まほうなどをおしえてください」

 そう伝えると、ダリウス様は俯き、小さな声で話だしました。

「はい。『ユーリ・シュナウザー』はくしゃくがじなん、ダリウス・シュナウザーともうします。としは4さいになります。けんじゅつは、にがてですが、まほうは『ほのお、かぜ、こおり』が、とくいです」


 うん、知ってる。

 ゲームの公式ガイドブックの通りだね。

 

「だりうすさま、おききしてもよろしいですか?はくしゃくけのごれいそくが、なぜ、じゅうしゃになろうとなさったのですか?」

 父様や、シュナウザー伯爵様の無理強いなら、苦情の1つでも言ってやりたいわ。

 言えるのは父様にだけだけれど……。

「ちちは、このえきしだんのだんちょうをつとめています。ですが、わたしには、けんじゅつのさいのうがありません。あとつぎとして、けんじゅつのさいのうがある、あにがいますので、わたしには、すきにしてよいともうされました。ですから、すきにしようと、おもったしだいです」

「それでは、じゅうしゃとして、わたくしにつかえても、かまわないと、ほんきでおもったわけですか?」

「…………」


 あっ、少し悔しそうなお顔をされてるわ。

 従者として仕えたいから、来たわけではないみたいね。良かったわ。


「だりうすさま。まほうがとくいなのでしたら、まほうをきわめれば、よろしいではないですか。けんじゅつだけがたたかうすべでは、ありませんわ。はくしゃくさまが、すきにしてよいと、もうされたのでしたら、まほうをきわめて、つよくなってみては、いかがでしょう?」

 そして、強くなって、王子の側近として、頑張ってくださいね。


「ルイーズさま、もうしわけありませんが、じゅうしゃめんだんを、とりやめにしても、よろしいですか?」

「ええ、かまいませんわ。ごじぶんのなさりたいように、がんばってくださませ」

 そう、私が告げると、ダリウス様は憑き物が落ちたように、晴れやかなお顔になり微笑まれました。

「ありがとうございます」


 私は、ダリウス様に「だりうすさま、よろしければ、じゅうしゃめんだんを、おえるまで、けんがくなさってくださいませ」と、隣の席に座る様に勧めました。

 人が使う魔法を見るのも良い勉強になるのよ。

「わかりました。けんがくさせていただきます」

 

 従者はケンゾーに決まった様なものだけど、剣技と、魔法を見せてもらいましょう。

 そう思い、私はケンゾーに話しかけます。

「けんぞー、まほうとけんぎをみせていただけますか?」

 ケンゾーは「かしこまりました」と、腰を折り挨拶をした後、的のある方へ向かいました。


 まずは、魔法の実技です。

 風魔法は、目で捉えにくいので、目を強化します

 ケンゾーは、手を大きく振りかぶり、一瞬でマナを練り『風魔法』を発動させました。

 無数の小さな刃が駆け巡り、的を小さく傷つけます。

 凄いわ!風の手裏剣みたい♪

 

 ケンゾーは、間髪入れず、的の傷めがけて、とどめを刺す様に短刀を鞘から抜き、一閃しました。

 忍者みたい……。

 この技を教えてくれる、ケンゾーのおじい様に本気でお会いしたいわ。


 流れるように静かでありながら、巧みな技を見た後、私は感動して拍手をしていました。

「ほんとうに、すばらしいわ」

 私は、同感を得ようとダリウス様の方へ向きました。

「……すごい。かぜまほうで、きりきざんだあと、けんで、いえ『たんとう』ですか。とどめをさすはやわざ、すばらしいです」


 私達が、褒め称えるのを恥ずかしそうにする、ケンゾーは「ありがとうございます」と言い、席に戻りました。

 続いて、アルノー先生なのだけれど……。


「あるのーせんせいも、じつぎをひろうしていただけますか?」

「う~ん、ルイーズ様。私は、剣術に才能がありません。魔法は『土、風、炎、水、氷』を披露できますが、生活魔法程度です。あっ!土魔法は、遺跡の採掘に便利なので、攻撃系ではありませんが、得意です」

 アルノー先生ってば……。

 どれだけ、歴史や遺跡にロマンを感じてるのか、ひしひしと伝わるわ。

 本当に、遺跡発掘に便利ってだけで、土魔法を覚えたのでしょうね……。


 従者には全く向かないけれど。

 

 邪神に関して、アルノー先生の知識は必要になるかしら??

 今は、判断がつかないわね。

 

 私はアルノー先生にある提案をしました。

「あるのーせんせい。じゅうしゃとしては、ふごうかくですが、しょうらい、あるのーせんせいのちしきがひつようになるときが、くるかもしれません。そのとき、わたくしにちからをかしていただけますか?」

「やはり、不合格ですか……」アルノー先生は、残念そうに言い、続けて「ルイーズ様に力を貸すと言う事は、冒険者として旅に同行しても良いと言う事ですか?」と、問い返されました。


 冒険者として同行するならば、自分の身は守れる程度になって欲しいのだけれど。

「あるのーせんせい。ぼうけんしゃとして、どうこうしてくださるのでしたら、じえいのしゅだんはもっていただかないと、こまるのですが……」

「ルイーズ様、守る手段でしたら、土魔法で防御できます。それと、私は反射神経は良い方なので、回避は得意です」

 自信満々でそう言われても……。

「けんぞー、じゅうしゃごうかくです。はつしごとをおねがいします。あるのーせんせいを、こうげきしてみてください」

「かしこまりました」

 ケンゾーに、初仕事を依頼しました。

 アルノー先生の回避(逃げっぷり)を披露していただきましょう。

 

「えっ、えっ、えっ、ルイーズ様、うわっ、おっ、よっ、はっ…………」


 結果、アルノー先生の逃げっぷりは神業でした。

 これでしたら、足手まといにはならないでしょう。


「あるのーせんせい。しょうらい、ぼうけんしゃとして、どうこうをおねがいしますね。そして、たびにでるのですから、たいりょくだけは、つけてくださいね」

 少し動いただけで、息切れしているアルノー先生。

「……はあ……はあ…………ルイーズ様…はあ……体力づくりも頑張ります。よろしくお願いします……はあ」


 こうして、私の従者は決まりました。

 ケンゾー、これから、よろしくお願いしますね。



 


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