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楽しい転生  作者: ぱにこ
105/122

ぴよたろう (イラストを頂きました) 記念SS

ゼティフォール様より、ぴよたろうのイラストを頂きました( *´艸`)

ありがとうございます♪

 ある日の夕暮れ。

 侯爵家令嬢を母に持つコカトリス━━ぴよたろうは、祖父━━侯爵家当主の指示(無茶ぶり)に従い冒険者ギルドの依頼をこなし、帰路に就こうとしていた。


【ココ……】


 今から夜通し歩いたとて、王都に辿り着くのは明日の昼頃になるだろう。と、夕焼けの眩しさに目を細めながら思い悩むぴよたろう。


【コッコ】


 野営で夜を明かすべきか、村に立ち寄り一晩世話になるか思案し始めた。

 野営するのは問題ない。

 母が持たせてくれたアイテムバッグには、料理長特製スープが鍋ごと入っているし、『まんが肉』というのも入っている。

 軽く3日は凌げるボリュームだ。

 そして、広げればぴよたろうが伸び伸びと眠れる『鳥の巣クッション』なる物も入っていた。

 これは母特製である。

 母ルイーズが『自分達には寝袋という物があるのに、ぴよたろうに寝袋的な物がないのは駄目よ! 固い地面で寝て、ぴよたろうの羽毛がゴワゴワになってしまっては元も子もないわ。ふわふわを維持できて且つ、ぴよたろうにぴったりの物を作らねば! おっと、そうだわ! ぴよたろうの安眠妨害を阻止するために、魔物除けも付けておかなくてはね! 』と、闘志を燃やし『グォーーッ! 』という雄叫びを上げながら作り上げた逸品だ。

 その寝心地たるや、『無重力寝袋・歩けるくんネオ』をも凌駕するほどである。


【コ、ココ】


 ぴよたろうは思った。

 野営も悪くないかもしれないと。 


 挿絵(By みてみん)


 だが、ここでぴよたろうは侯爵の言葉を思い出した。


【コッコゥ……】


『依頼を受け遠出をする時は、なるべく村や町に立ち寄り、人々の暮らしぶりを見てきなさい。そして、その土地に暮らす人々の不平不満を聞き出し、報告する様に』


 これまで、侯爵に報告して出来事はいずれも解決に向かっている。

『路地裏に街灯がないから、ガラの悪い奴らが溜まっているの』と果実売りのお嬢さんが言っていたと告げると、すぐさま街灯が設置された。

 飲食屋の店主に『ライバル店にうちの看板メニューが盗まれた』と言われ報告すると、両店舗に足を運び、真偽を確かめた。

 この時は、同行していた母ルイーズの言い分? で丸く収まったのだ。


『サンドイッチの具を真似したと言われても、どこでも大体一緒だわ! なに? このお店以外ではサンドイッチにハムとチーズを挟んではいけないの? なら、私達侯爵家も非難されるのかしら? そうそう、王宮でも見かけた時があったわね……では、王族の方々もこちらまで出向き、謝罪するべきなのかしら? 』


 そして、母ルイーズは怯える店長を見遣り、畳みかけるように、こう言い放った。


『まぁ、サンドイッチの具に関しては、どこの誰もが同じ物、もしくは真似するものと認識し、泥棒呼ばわりしないと言うのなら、知恵を授けてもよろしくってよ。これは、私秘蔵のレシピで、陛下も唸る程のお気に入りよ。どう? 』


 どう? と言った時の母の悪い顔が、ぴよたろうは今でも忘れられない。

 本当に悪い顔だった。

 だが、訴えた方の店主は救世主でも見つめるような目で母を見据えてこう言ったのだ。


『どうか、宜しくお願いします! 師匠! 』と。

 そして、店主は1週間にも及ぶ、母のスパルタ式修行を経て『ラーメン』を完成させた。

 今では、王都で一番の賑わいを見せる有名店だ。

 余談だが、あのお2人も赤狼仮面と金狼仮面の姿で通い詰めるほどなんだとか。


【コホゥ……】


 ぴよたろうは思った。そんなに美味しい物なら、母に薄味で作ってもらおうと。

 ぴよたろうは母の味を思い出し、村へと向かって歩き出した。

 徐々に速度をあげるぴよたろう。

 急がねば、村の出入りを禁止されてしまう。

 そうなれば、もう1日費やすこととなり、母の味を堪能できなくなる。

 砂埃を巻き上げ、目にも止まらぬ速さで。


【コッココゥー】


 ぴよたろうは走った。


 ◇ ◇ ◇


 今から、5年前。

 邪神復活の折に巻き散らされた瘴気。

 その瘴気を浴び、小さく弱い魔物がある変貌を遂げていた。


 マナスパイダー。

 マナスパイダーは、糸をドーム状に張り、掛った獲物のマナを糸を通し徐々に吸い上げる魔物である。

 本来の大きさは人の手のひらに乗る程度。

 獲物も、穀物を荒らす小さな虫系魔物を狙うので、人にとっては益虫として認識されていた。

 それが……。


 ◇ ◇ ◇


 ぴよたろうは、小さな村の門の前で一匹佇んでいた。

 行きの際、通った村はこの様な風貌をしていなかったと、ぴよたろうは思案する。

 声を掛け、挨拶をした門番の姿も見えない。

 木造の家が立ち並び、井戸の周りで話に花を咲かせていた、各家の奥方達の姿もない。


【ココ? 】


 皆、何処に行ったのだ?

 そして、何故、村が半球状の物で覆われている?


【コフッ】


 そこで、ぴよたろうは母ルイーズの結界を思い出した。

 もしかすると、村人達は何かに脅かされ、この中に避難しているのかもしれない。

 脅かされているのだとすれば、ぴよたろう自身が手助け出来る。

 もし、ぴよたろうの手に負えない案件だとしても、通信魔道具を使い、侯爵に援軍を頼むことも出来る。

 そう思ったぴよたろうは、村人達に向けて声を掛けて見る事にした。


【コッコーーーッ!! 】


 長閑な田舎にぴよたろうの鳴き声が空しく響く……。

 何の返答も帰っては来ない。

 かわりに、聞こえるガサガサという物音が、ぴよたろうの不安を増長させた。

 これは拙い事かも知れない。そう直感が告げている。

 ぴよたろうは、通信魔道具を使う事に決めた。

 ぴよたろう1匹で村を救う事は可能だが、負傷者が複数人の場合━━1匹では助かる命も助からなくなる可能性があるからだ。

 ぴよたろうは、村人の安全を第一に考え行動する。



【コッコ、コココ】 


 通信魔道具が淡く光ったのを確認して、ぴよたろうは侯爵に相談があると告げた。


「どうした、ぴよたろう? 1匹で寂しいのか? 」


 なんとも呑気な声色で、侯爵が返答を返してきた。

 少し苛立ちを感じたものの、心を落ち着かせ村の現状を告げる。

 

【ッコッコ! 】


 少々、声が荒くなったのは仕方がない。今は、侯爵に村の様子を把握してもらった上で、指示を仰がねばならないのだ。


「っ! 半球状の物に覆われた村?! 」

 

 驚きに満ちた侯爵の声が魔道具から響く。


【ココ】


 そうだとぴよたろうは頷いた。


「ふむ……半球状の物とは、白い糸の様な物ではないか? 」


 侯爵の声が変化した。

 この声色で話す侯爵はとても頼りになる。ぴよたろうは、安心して指示を待つ。


【コッコ】


「……マナスパイダー……村を覆う程の糸を吐くとなれば、変異種か……となれば、中で村人が捕らわれている可能性が高い! 速やかに糸を切り、中へ突入せよ。私もすぐに向かう。頼んだぞ」


【ッココ! 】


 通信を終えたぴよたろうは戦闘形態に入った。


【コッコーッ!!! 】


 まずは、糸の強度を測ろうと強靭な爪で一閃。

 だが、糸はしなやかに弾んだだけだった。

 なんという強度……岩をも切り裂くこの爪で無傷とは……。

 ぴよたろうは悔しさを滲ませたまま、翼を広げた。


【コッコ!! 】


 次の攻撃は翼で風を起こし、切る。いわば『ウィンドカッター』である。

 無数の風の刃が、半球状の糸に直撃するが。

 またもや、しなやかに弾み、元に戻ってしまう。

 

【コフゥ】


 これも駄目なのか……と、ぴよたろうは思案する。何か有効な手立てはないのかと。

 そこで、ぴよたろうは閃いた。

 しなやかに弾むのなら、弾まなくしてしまえばいいと。

 キラリと、ぴよたろうの魔眼が怪しく光った。


 ビキビキと音をたて、糸が石化し始める。全体を石化させてしまえば、捕らわれている村人も石化してしまう。

 慎重に。細心の注意を払いながら、ぴよたろうは自身が通れる大きさの分だけ石化させたのである。


【コッコ】


 やったぞとつい言ってしまったのは、ぴよたろうがまだ幼いゆえ。

 ぴよたろうの声を聞きつけ、マナスパイダーが穴から顔を覗かせた。

 

【ココッ】


 しまったと焦るぴよたろう。そんなぴよたろうをマナスパイダーが襲う。

 が、優にぴよたろうの大きさを超える体躯を持つマナスパイダー。

 ぴよたろうが通れる分だけの穴では、外に出れないようだ。

 ぴよたろうが、足でマナスパイダーを蹴り上げた。


【ギシャーッ!】


 なんとも不気味な叫び声をあげ、マナスパイダーは奥へ転がっていく。

 ぴよたろうはその隙に、中へと侵入し、村人の様子を窺った。


 中は閑散としていた。張り巡らされた糸の壁に規則正しく捕らわれている村人達。

 青白い顔は、まるで死人の様にも見える……。

 ぴよたろうは、足元が崩れそうになるのを堪え、村人の元へ走った。


【ココッコ! 】

 

 無事か! 生きているか! と大きな鳴き声をあげた。

 どうか、反応してくれ。どうか、生きていてくれと願いながら。

 すると、わずかに反応を示す村人が居た。

 そればかりか、かすかに胸が上下しているのが見て取れる。


【ココ……コココ】


 良かった、本当に良かったとぴよたろうは心の底から安堵した。

 その時、ぴよたろうの足に何かが絡み、引きずられそうになった。


【ッココ! 】


 マナスパイダーだ。あの程度の攻撃で屠れるとは思ってもいないが、もう少し猶予があると思っていたぴよたろう。

 完全に油断していた。

 絡まった糸に再び魔眼を発動させる。石化した糸なら、ぴよたろうの軽い攻撃で容易く壊れるからだ。

 バリンという音をたて、糸だった物が粉砕された。

 思いの外、強い力で引っ張っていたのか。反動を受け、マナスパイダーは壁の方へと転がっていく。


【ッコッコ! 】


 危ないっ! と咄嗟にぴよたろうは跳躍し、マナスパイダーと壁の間に身を押し込んだ。

 瞬間、大きな衝撃がぴよたろうの身体に襲い掛かる。


【コフッ】


 痛みに喘ぐぴよたろう。だが、壁に捕らわれた村人は無事だ。

 ぴよたろうはマナスパイダーを睨め付け、その背に向かって飛んだ。

 壁に捕らわれた村人へ被害が及ばぬよう、背から石化させようと思ったのだ。

 しかし、大きな体躯に似合わず、マナスパイダーの動きは速く。

 蹴れば、壁に転がる。しかも、外皮は無傷なままである……。

 外とは違い、ここは村の中。

 無闇に魔眼を発動させ、村人を石化させてしまうのも訳にもいかない。

 押さえつけ、上から魔眼。

 これしかないと思っていたのに、逃げ足が速すぎる。

 手立てがない。

 

 ぴよたろうは苛立ち紛れに、地を蹴りつけた。

 村人を守れなくて、何が冒険者だ。

 少しばかり強いからといって、天狗になっていた自分が滑稽でならない。


【コーッコッコーーーーーッ! 】


 ぴよたろうが咆哮する。

 この人達を救えない自分が、こんな弱い自身が。

 腹立たしい! と。


挿絵(By みてみん)


 怒りを露わにしたぴよたろうの体躯が突然輝きだした。

 皮膚から滲み出る毒。それが霧状になり、ぴよたろうを包み込む。

 と同時に、ぴよたろうの魔眼も発動し、霧状に吹き上げられた毒が、硬質な何かに変化を遂げたのだ。


 輝きが収束すると、マナスパイダーがぴよたろうに襲い掛かってきた。

 ぴよたろうは1歩も動かず、ただマナスパイダーを睨みつけているだけだ。

 マナスパイダーの攻撃がぴよたろうの首元を狙い、振り下ろされた。

 が、硬質な何かに弾かれ、マナスパイダーはヨロヨロと後退する。

 マナスパイダーは、弾かれた箇所に痺れを感じたが、衝撃で痺れただけだろうと、軽く受け止めた。

 それが、悪手だとは知らず。

 

 マナスパイダーが痺れた足とは違う足で、ぴよたろうの足元を狙う。

 ぴよたろうは、翼でその足を払った。

 マナスパイダーはまた違う足で、翼を切り刻もうとする。

 ぴよたろうは、それを足で踏みつけた。

 マナスパイダーは、糸でぴよたろうを縛ろうとする。

 だが、ぴよたろうは大きな風を起こし、糸の向きを変えた。

 マナスパイダーの糸がだらんと垂れ下がる。

 ぴよたろうは糸を嘴で咥え、毒を付着させた。

 糸の攻撃をこれ以上させない為に。

 マナスパイダーの動きがどんどん鈍くなり始めている。


【カカッカ】


 マナスパイダーの口元から、奇妙な音が聞こえる。

 ままならぬ身体にイラつき、怒りで歯噛みでもしているのだろうかとぴよたろうは思った。

 怒り任せの攻撃を仕掛けてくるのなら、来い! とばかりにぴよたろうも咆哮する。


【コッコッコーーーーッ!!! 】


 マナスパイダーが跳んだ! 同時にぴよたろうも跳躍する。

 空中で、大きく口を開けているマナスパイダー目掛けて、ぴよたろうは翼を押し込んだ。


【コッココ! 】


 さぁ、食え! たっぷり毒を含んだ翼をなっ!

 

【グギャーーーーーーッ! 】


 と断末魔をあげ、マナスパイダーは地に落ちた。

 ヒクヒクと痙攣して、やがて身動きしなくなった。

 今回、ぴよたろうは麻痺毒を使った。

 ゆえにマナスパイダーはまだ生きている。

 屠るべきなのか、生かすべきなのか、判断は侯爵に仰がねばならないからだ。


 だが、決着は付いた。

 ぴよたろうは、マナスパイダーを転がしたまま、村人の救出に向かった。


 村人達の救出は難航する。

 ほんの少し、糸を石化させ1人1人、慎重に救出し、寝かせていく必要があるからだ。


 そして何より、村人達のマナ枯渇が深刻だ。

 ぴよたろうが持つマナポーションの予備は乏しい。

 子供を優先させたいものの、同じように老人も危うい。

 侯爵は、まだ到着しないのか。

 まんじりともせず、夜を明かす訳にはいかない。

 

 一先ず、深刻そうな者達にマナポーションを与えてみる事に決めたぴよたろう。

 1人、また1人と目を覚ましては、感謝を告げる村人達の中で。

 家族を優先してくれと、我儘を言う者もいる。


【コッココ】


 ぴよたろうは正直に話した。

 マナポーションの数が足らない事を。もう少しすれば、侯爵や騎士団の者達が助けに来てくれるという事を。 


「だけどよぅ、家の母ちゃん。身ごもってるんだ。どうにかならないか? 」


 ぴよたろうは驚愕した。

 母体をないがしろにする訳にはいかない。

 ならば、そういう者も含めて優先させていこう。


【コッコ】


「ありがとう、ありがとう」


 村人が泣きながら感謝を告げる。

 そして、ぴよたろうはこの村人の指示に従い、ポーションを配った。

 元より体の弱い者や、危うそうな者を優先するために。


 侯爵と通信魔道具越しに話してから、一刻が過ぎた頃。

 ようやく、援軍━━侯爵や騎士団が到着した。

 王都から、どんなに馬車を走らせたとしても、この時間で到着するのは無理だ。

 にもかかわらず、侯爵一行は着いた。

 驚異の速さである。

 

「ぴよたろう、待たせて悪かったね。村人達は無事か? 」


【コッコ】


 無事だが、マナ枯渇による意識混濁が見える。と報告するぴよたろう。


「うむ。それは、騎士団に任せよう━━さて、これで村人達は安心だよ。それで、ぴよたろう。今回の騒動主であるマナスパイダーは屠ったのかい? 」


【ココ】


 ぴよたろうは頭を振り、侯爵に説明した。

 麻痺毒で、身動き一つ出来ないが、まだ生きていると。

 何故、益虫と言われるマナスパイダーがここまで巨大化し、人を襲ったのか調べる必要があるかもしれないと判断したためであると。


「ほう、ぴよたろうは、気が利くね。うんうん、良い子だ。よし、魔法省へ持っていき、研究しよう。この糸も何かに使えるかも知れないから、ぴよたろう、石化して粉砕だ」


 また、無茶ぶりをと思うぴよたろうだが、軽い調子で頷き、了承した。

 侯爵が研究する。それ即ち、母ルイーズの助けになるからだ。


【コッコッコ~】


 歌を口ずさみながら、軽快に村を回るぴよたろう。

 石化させては壊し、石化させては壊すを繰り返している。

 そのぴよたろうの後を、騎士団が追いかけ回収した。


 こうして、マナスパイダーに捕らわれた村は、安寧を取り戻したのだが。

 ぴよたろうの波乱は尚も続いている。

 

「ぴよたろう様、ズルいっすよ! 」

「そうだ、そうだ、です! 」

「ぴよたろう様の事を信じていたのに……見損ないましたっ、です! 」

「ぴよたろう様は、私達の味方だと思っていたのに……」


【ココ?】


 何がだ? と首を傾げ愚痴を零す兵士に問いかけるも。

 兵士達は一斉に、こう言い放つ。


「「「「ぴよたろう様! 本当に理解されていないのですか? 」」」」


【コフ】


 ぴよたろうは、うむ、全く分からんと頭を振った。


「では、ハッキリと申し上げます。そんなカッコいい鎧なんか着たら、フワフワが楽しめないではありませんかぁ。似合っておりますけどね! 」

「そうだ、そうだ、です! 」

「ぴよたろう様のフワフワは我らの癒し。奪わないでくださいよぉ~カッコいいですけどね! 」

「ウワーン。ぴよたろう様の羽毛がフワフワでないと、ルイーズ様が悲しみますよぉ。我らも悲しみますよぉ」


【ッコ! 】


 ぴよたろうは焦った。

 誰よりもふわふわを大切にしてくれて、手入れも自らの手で時間をかけ行ってくれる母に、この硬質な鎧の存在を知られる訳にはいかない。


【コッコ! 】


 よし、わかった。この鎧は封印する、皆も内緒だぞと兵士達に告げると、皆、歓喜した。


「それでこそ、ぴよたろう様っす! 俺、信じていましたからね! 」

「俺も、俺も、です! 」

「ふわふわ~最高のふわふわ~」

「ぴよたろう様。侯爵の飛行魔法で、無理やり村まで連れて来られた私達に褒美を下さい。いえ、多くは望みません。ほんの少しフワフワを堪能するだけでいいのです。そうさせていただけると、私達の口も堅く閉じ、秘密も守られます。ルイーズ様に、知られたくはないのでしょう? フフフ、ハハハ」


【コフッ!?! ━━】


 ぴよたろうは、脱兎の如く逃げた。

 目が血走った兵士を撒く為である。

 あやつらは、危険だ。ぴよたろうの本能が激しく警笛を鳴らしている。


【コッコフゥゥゥゥーーーーーー!!! 】


「「「「ぴよたろう様-っ! 逃がしませんよーーーっ! 」」」」


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