9話
アイスクリームは正義です。
「ふんふん♪ふふん♪」カシャカシャカシャ……「ふぅ~もうすこし!ふんふん♪」カシャカシャカシャ……。
アイスクリームは、力仕事です。
ボウルを冷やしつつ混ぜ続ける事で、滑らかなアイスクリームが出来るのです。
冷凍庫があると、30分ほど凍らし、かき混ぜるを繰り返すのみなので、まだ楽なんですが……。
…………。
クリームに、空気の泡をたくさん含ませる事が、滑らかな口どけを約束する!
魔法でイケる!?
この世界のゲーム公式書物でも、ファンタジー系ライトノベル、ファンタジー系アニメなどでも、イメージでの魔法成功率は90%くらい………。
偏った趣味の統計ですが、信じれば救われるのです。
滑らかアイスクリームが、好きな時に食べれるのです(ふんす!)
長時間、調理場の片隅で摩訶不思議な物を作ってる幼女を、ちらちら気にしている料理長の目線が、突き刺さるのです。
(手伝おうか?)の目線です。
この魔法が成功すれば、時短!突き刺さる目線からも、解放されます。
きめ細かな空気の泡、冷やし固める冷気……イメージして魔法を発動させます。
柔らかな光がボウルを包み込み…………。
ボフッボフッっと音がしてますね…………。
なにこれ、怖い……。
ピキッと音がした途端、光が静まりました……。
…………?
…………できてる?
スプーンですくってみましょう。
「りょうりちょう、すぷーんをかしてください」
料理長にスプーンを渡してもらって、ボウルのアイスクリームに……。
カンッ!
おや?冷気のバランスを、間違えたようですね。
アイスクリームが溶けすぎない程度の、空気の渦で、撹拌して調整です。
光に包まれたボウルは、グルグル回ってます。
ソフトクリームや、アイスクリームを作る機械の様です。
「たのしい~♪」
「りょうりちょう~みてみてください~ぐるぐるって、まほうでまわってるんですよ~」
前世の私は、洗濯機のグルグルを、いつまでも見てしまう性を持っていました。
この楽しさを、分かち合おうと、料理長に言ってはみましたが……。
「……魔法で?凄いですね」と、感心だけされました。
この魔法を名付けるとすれば、まんま『アイスクリーム』がいいですね。
今度はうまくいったようで、実食です♪
小皿に盛り分け、料理長にも食べてもらい、感想を聞きたいと思います。
「りょうりちょう、『あいすくりーむ』のかんせいです。とうさまに、たべていただくまえに、りょうりちょうのかんそうを、おききしたいので、たべてみてください」
「これは、デザートでございますよね?……いただきます」
投入された材料はわかっていても、幼女が、不思議な魔法で作った食べ物。
恐る恐る、口に運ぶ料理長。
「冷たい、滑らかな口どけで甘さが広がり……美味しい、美味しいです!お嬢様!」
「うれしい♪では、わたくしもいただきますね♪」
美味しい~♪濃厚です♪バニラビーンズはなかったけれど、素材の良さが引き立ってます♪
「おいしい~♪だいせいこうですね♪」
「お嬢様、この『あいすくりーむ』というものは、魔法がなければ作れないのですか?」
「じかんと、てまを、おしまなければ、こおりまほうでつくれますよ。いま、とうさまに『れいとうこ』という、たべものをこおらしたり、こおったままほぞんできる、まどうぐのかいはつを、おねがいしています。このまどうぐが、かんせいすれば、もっとかんたんに『あいすくりーむ』ができるんですよ♪」
この後、料理長に基本のアイスクリームの作り方、アレンジ方法などを詳しく伝えました。
幼女の労力がなくても、アイスクリームが食べられる未来は近そうです。
◇ ◇ ◇
「とうさま~~かあさま~~『あいすくりーむ』のかんせいです~♪」
溶けないうちに、父様や母様に召し上がっていただこうと、パタパタと急ぎ足です。
父様と母様はソファで、寛いでいらっしゃいます。
「やっと完成したか!まちわびたぞ!」
「ルイーズが遅いと、何度も調理場をのぞいてたのよ、ふふ♪」と、母様が暴露。
では、寛いでる様子は、演技ですね♪……ハッ!魔法も見られたのですねっ!
「とうさま、まほうでつくっていたのを、ごらんになったのですね?」
「うむ、ぐるぐるを『たのしい~』と、言ってたのを見たぞ。愛らしかった」
今日も、安定の親バカっぷりですね♪
父様が、家で使う魔法は許容してくれてるので忘れがちですが、やはり、私の魔法は特殊だそうで外では使わないように、と言われてます。
使ってもいい魔法、使っては駄目な魔法の、線引きが、特殊過ぎて難しいみたいです。
今回の『アイスクリーム』も、後で聞いてみる事にします。
「では、とけないうちにめしあがってくださいね♪」
ジルに紅茶をいれてもらい、みんなでいただきます。
アイスクリームを一口食べた母様は。
「美味しい♪これが、ルイーズが食べたいと言っておねだりしていた『あいすくりーむ』なのね♪この味を知ってしまったら、気持ちがわかるわ~♪」
そうでしょう、そうでしょう♪
父様は、噛みしめる様に一口ずつ召し上がってます。
「これほどの美味は、陛下も召し上がった事はないだろう~フフフ」
父様は、陛下と何を競ってるんでしょう?
「とうさま?おいしいですか?」
「フフフ……ハハハハハ…………愛娘の手料理、実に美味い!」
「……」
父様のテンションが、おかしいです。
父様?壊れてしまったのですか?不安気に、父様のお顔を見つめます。
「いやいや、ルイーズ。親というものは、子の成長に、途轍もなく感動するものだ。しかも!この『あいすくりーむ』の美味さ!愛娘が作ってくれたというだけでも、感動ものなのに、この世界で『あいすくりーむ』を、初めて食べたのが、私達だ。…………もう少し、優越感に浸らせてくれ」
そんな父様の、弁明をするように母様が。
「ルイーズ。父様は、仕事は厳しく、公正で、陛下の信頼も厚いのよ。家の中では、家族への愛情が豊かすぎるだけなの。ふふ♪」
「はい、かあさま」
愛情が豊かすぎる父様は、どんな感じでお仕事をなさってるのか、みてみたいですね。
◇ ◇ ◇
アイスクリームを作っていた時に、少し閃いたので訓練所に来ています。
魔法の発動と共に、カラーエフェクト的な光が、舞う。
太極拳をしてる時に感じる、大気中のマナは無色透明です。
しかし、本当に無色透明だとしても、認識できないものなのでしょうか?
体をめぐる時に感じるマナ……とても引っかかります。
ゲームで発生した瘴気には、黒い澱みのようなエフェクトが、かかっていました。
瘴気が、大気中のマナの様に認識できないとなると、瘴気をどうやって祓うのでしょうか?
瘴気は認識できるものと信じるとして、体に馴染んだマナは、その人特有の色はつかないのでしょうか?
前世でいう『オーラ』の様に……。
回復魔法の時は……光り輝いてる淡いグリーン。
解毒魔法の時は……強い光と濃いグリーン。
『アイスクリーム』の時は……光とともに、薄いブルー。
撹拌の時は……輝いてるだけだった。
1種類ずつ、魔法を出してみましょう。
『光』輝いてますね。『闇』真っ黒です。『火』火球。『水』水球ですね。『風』風を感じます。『土』土球です。
共通してるのは、淡く光るって事でしょうか。
まずは、馴染んだ体のマナを魔法発動なしで、出せるか試してみましょう。
目を閉じ、気功法で、手の平にマナを集めるイメージをします。
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手の平に、生命力の様な、暖かな力を感じ、目を開けてみました。
ほんのりオレンジ色になった手や腕と、オレンジ色の球体……。
目に、時の流れが緩やかになる闇魔法をかけて、認識できる範囲を高める為、光魔法もかけ合わせます。
こうする事によって、流動的なマナをとらえて、肉眼では見難いものを時間をかけて、観察出来るのです。
よく見てみると、手や腕だけではなく、体中が淡く発光してます……オーラの色なのでしょうか?
手の平の球体を、大気中に溶け込むように撒いてみて、それを観察してみるとしましょう……。
「えっ!」
光り輝く粒子?
大気中のマナ?!
私の作ったオレンジ色の球体が混じり合って、七色に輝いて見えます。
「まなですっ!まながみえますっ!」興奮のあまり、大きな声で叫んでしまいました。
目を強化中なので、認識出来たのですね。
人によって特有の色があるのか、水場、森などの場所によっての色の変化の差も見てみたいです。
兎に角、大きな前進に間違いないですね♪