プロローグ
(とても楽しい人生だった)
子供達や孫、兄妹に伴侶達、甥や姪に囲まれて、楽しい人生の終わりが近づく。
楽しい事に貪欲で、アニメ、ゲーム、漫画や小説。
乙女ゲームにハマり、イベントで子供を巻き込んでコスプレしたり……。
コスプレ衣装の為に、洋裁、和裁、編み物や小道具づくりを学び。
甥や姪の夏休みには、強化合宿とは名ばかりの夜更かし、ゲーム三昧。
子供達や甥や姪、孫をまきこんで、パンやケーキ作りを楽しんだり……。
思い立ったが吉日で、旅行に行ったり、兄弟たちと呑んで、肩を組み歩いてみたり……。
(ふふ)
「母さん……」息子が手を握ってくれている。
「お婆ちゃん……」
「姉さんっっ」
病室に、愛しい家族のすすり泣く音が響く。
(泣き顔は、いらないから笑って送って)
最後に、一言と思い、力を振り絞る。
「泣いたら、夜な夜な化けて出てあげる」ニヤリと微笑むと。
泣いていた家族に、少しだけ笑みがこぼれる。
(ありがとう)
ピーーーーーーーーー
白い空間に、ふわふわ浮いて、どこにも行けない。
現状を整理する。
(う~ん、死んだよね)
(あの世とは、この白い空間なのか?これは……つまらんっ)
もう一度、もがいてみようと、手足をバタつかせるが……。
真っ白な空間では、移動できているのかいないのか把握できない。
(また、地球転生でも異世界転生でも、この退屈な空間から抜け出せるなら、地獄でもいいから出してーーーー!)
心の叫びを聞き届けてくれたのか、白い空間に、ふっと扉が現れた。
(おっ♪)
ふわふわ空間を平泳ぎで移動して、扉のノブに手をかけ開ける。
瞬間、す~っと意識がなくなった。