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名もなきダンジョン攻略戦-7

「ニーコ、バラバラになったやつの部品を吹き飛ばすんだ!」


「バラバラになったのをふきとばす!!」


 さっきはひとつの塊だった肉も、今はもう半分崩れかけだ。制御を外れた肉と骨は突然の強風に抗いきれず吹き飛ばされ、次々に石壁へと叩きつけられてゆく。巨大な頭といくつかの大きな骨は流石に飛ばないが、それ以外はもはやただの屍にすぎない。

 風が止む頃には、腐竜の身体は原型を留めないほど散り散りになって広間に転がっていた。


「いいぞニーコ!」


「ふきとばした!!」


「クラトス殿、これはどういう……」 


「スズもお疲れ様。クニーさんが面白いことに気づいてくれてね」


 腐竜は初撃以降ブレスを吐かず、それどころかまともに動こうとすらしなかった。いや、本当は吐きたくても吐けず、動きたくても動けなかったんだ。


 そもそも、ここみたいな無名の小ダンジョンに大型竜がいること自体がおかしい。それに前々からこんな大物がいたら、もっと話題になっているはずだ。


 つまり、あの腐竜が現れたのはごく最近。そして魔物はダンジョンの階層を跨げないという原則があるから、というよりここの入口をあの巨体じゃ通れないから、やつは外からやってきたのではなくこの広間で生まれたということになる。


「たぶんだけど、最近このダンジョンに大きな力が流れこんだんだと思う。何かの拍子に起こったそれがこのダンジョンを活性化して、あの腐竜っていう化物を生み出したんじゃないかな。でもこの小さなダンジョンに大型竜を生かし続ける力なんて無いから、竜はどんどん弱体化して、自由に動くこともできない身体になってしまったんだ」


 ダンジョン内の魔物は、基本的には何も食べなくても生きてゆける。でもそれはダンジョンが魔物たちに力を与えているからであって、与えられる力の限界を超えた魔物は存在を保つことができない。その実例があの腐竜なのだろう。


「そこに我々がやってきた、ということですね。それでしたら、道中の魔物の異様な活発さも納得できます」


「あくまで推測だけどね。でも少なくとも、転んだだけでバラバラになるほど弱っていたことは間違いないみたいだ」


 いくら不死竜といっても、ここまでバラバラにされればもう何もできまい。あと問題は酸まみれの階段通路だけど、ニーコに頼んでひとりずつ慎重に運んでもらえば通れなくはないだろう。

 できればこのダンジョンが活性化した原因も調べたいけど、今は『暁光の迷宮』の攻略を控えている。そういったことは地元のギルドにお任せするとしよう。


「じゃあ、壁の魔物がどく頃を見計らって動こう。それまでは休憩を……」


「リーダー!」


「【つぶての名手】!」


 クニーさんが突然僕を押し倒した。直後、空中で何かがぶつかり合う音がする。


「な、何が……」


「不死者ってやつは、本当に往生際が悪くて嫌になるね……!」


 クニーさんが今までにない緊迫した声を出す。本当の非常事態だと察して顔を上げると、床に転がる腐竜の頭と目があった。濁った目でこちらを睨みつける頭の前方には、吹き飛ばしたはずの骨や爪がカタカタと音を立てて集まっている。

 まさか、あれを飛ばして攻撃してきたのか。


 その生命力の高さに驚きかけた僕は、隣に立つ仲間の腕を見てクニーさんの緊迫の理由をようやく理解した。


「スズ!?」


「申し訳ありません、相殺しきれませんでした……」


「あの腐竜の体液がついた骨だ。どう考えたって身体に良くはないだろうね……!」


 スズはおそらく、僕に当たりそうな骨を投擲で迎撃したのだろう。その中の一本、撃ち漏らしたたった一本が、スズの腕を掠めて傷を残していた。


「スズちゃん!」


「ニーコ、そんなに慌てないでください。大丈夫ですから」


 飛びついてきたニーコに笑顔を向けているけど、早く手当しないと重体になってしまうかもしれない。最悪、腕を切り落とすなんてことになったら本当に取り返しがつかない。


「どうする……」


 どうすればいい。あそこまでバラバラにしても倒せず、それどころかいつ第二射を撃ってくるか分からない魔物にどう対処すればいい。


「リーダー、ここはボクに任せてくれないか」


「クニーさん?」


 立ち上がったクニーさんは、腐竜をじっと見つめながら右手の銃器『ゴットハルト』を握りしめている。


「これは緊急事態だ。だから、この前のお願いを取り下げさせてほしい」


「……そうすれば、やつを倒せるんだね?」


「一〇〇パーセントとは言い切れない」


「ごめん、無駄な質問だった。やろう」


 実はリンバスを出る前、クニーさんからひとつ頼まれていたことがあった。その縛りがある状態でここまで来たけど、事ここに至っては使えるものは全て使わないといけない。


「お願いする。【教練の賜物】を、ボクにかけてくれ」

たぶん誰も気にして無かったような気がするけど、クニーさんといっしょになってからは【教練の賜物】を使ってませんでした。理由は割と分かりやすいけど次回。


ところで最近、話数ごとの閲覧数をモニターしてくれるツールを使い始めました。さすが最大手サイト、外部ツールが色々あるんですね。

そのおかげで、評判のいいらしいキャラとよくないらしいキャラが割とはっきり見えてしまったのは幸か不幸か果たして……。

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