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うごめく何か(前)

「当代『賢者(セージ)』、フィナ・バーンズ。例の人体実験は、彼女の指示で行われた疑いがある」


「……はい?」


 自分と向かい合っている金髪の女性が何を言っているのか理解できない。

 あの実験を、子供まで誘拐して地下に監禁し人を死なせグランドガーゴイルなんて化物を生み出した実験を、フィナが?


「念のため確認させてもらうが、クラトス君の知るフィナ・バーンズはそういった行為を好む、あるいは容認する人物か?」


「まさか、他人を慰めてるうちに自分が泣き出すようなやつですよ!? 人体実験、それも人間を死なせて力を絞り出すなんて、やれと言われたってできるとは……」


「そうか、まずはそれを聞けて安心した。まだ混乱しているかもしれないが、とにかく順を追って説明するからよく聞いてくれ」


「は、はい……」


 まず、僕らが請けたアントクイーン討伐の依頼、その依頼文はこうだった。




依頼者:

 リンバス役場 流通課課長 マルコス・アンバー

依頼内容:

 三十以上のソルジャーアントを引き連れたアントクイーンが森に出没。西からの羊毛商人が迂回を余儀なくされ、羊毛価格の上昇につながっている。十日以内に全て討伐されたし。




 アリシアさんによると、マルコスは羊毛価格を吊り上げるよう指示を受けていたらしく、この依頼もその一環だったという。


「公の立場にある者が『羊毛の相場が上がる』などと発信すれば、それだけで市場は反応する。実際に羊毛価格は跳ね上がったそうだ」


 そういえば、オルさんたちがそんなことを言っていた気がする。


「それで、指示を受けていたっていうのは誰からなんですか? それもフィナだと?」


「まあ聞け。そんなマルコスの行動は商会や衛兵も怪しんでいてな、どこかの商人と癒着して不正をしてるんじゃないかと思われていたわけだ」


 汚職事件、っていうんだっけ、そういうの。


「今回のマルコスの死もそれが元のトラブルだろうと踏んで、衛兵たちは証拠品を抑えようと奴の家に踏み込んだ。だが家はすでに荒らされ、書類や手紙の類はすべて持ち去られた後だった」


「指示した人間の仕業ってことですか。なら、どうして汚職をしていたと?」


「床の下に隠し金庫があったのだ。下手人は探索系の職能(スキル)を持っておらず見落としたのだろうが、町内のいざこざを処理する衛兵には必ずそういった職能(スキル)の持ち主がいる。そうして見つかった金庫の中には、『ヘンリー・ワット』という署名の入った書類が納まっていた。誰だか分かるか? 君も知っている男だ」


 ヘンリー・ワット。アリシアさんは僕の知る相手だと言うけど、マルコスと違ってまったく聞き覚えがない。


「心当たりがないんですが……」


「君が地下で倒した『薬剤師』(ファマシスト)。奴がヘンリー・ワットだ」


「え? でもあいつはもう死んで……」


 戦った僕も、奴の名前までは聞けていない。生きていれば取り調べもできたろうけど、瓦礫の下で頭を打ち、見つかった時には死んでしまっていたはずだ。


「生き物はな、クラトス君。虫も獣も魔物ももちろん人も、死ねば『モノ』になる。そういうことだ」


「……死体を【鑑定】したんですか」


「冒険に出ていた時分にはよくやったことだよ」


 冒険者は危険な仕事だ。小さなミスで命を落とすことも多く、特にダンジョンでは毎日のように身元不明の死体が見つかると本で読んだ。そういった人たちの生前を調べるのも『司祭』(プリスト)の役目なんだろうか。


「つまり、ヘンリーとマルコスが繋がっていたってことですか」


「ああ、行方不明事件の露呈が遅れたのもマルコス経由で役場に手が回っていたためらしい。そして問題はその書類だが、いわゆる研究報告書だった。指示を出した人間に送るためか、あるいはマルコスが横流ししようと保管していたものだろう。それのおかげで地下で行われていた実験の目的もようやく分かった」


「あの実験の目的って、グランドガーゴイルを作ることじゃなかったんですか?」


「いいや、あれは副産物にすぎないらしい。奴らとしても予想外の成果だったようだがな」


 ヘンリーは研究の目的を答えてはくれなかったけど、あれだけの魔物を作り出していたのだから兵器開発か何かだと思っていた。まさか、あれが副産物とは。


「じゃあ、本来の目的というのは?」


「獣化症候群の治療法。その開発だ」

(追記)

キャラ付けって難しいもので、語尾を変えるとかにするとすぐネタが尽きるんですよね


アリシアさんはその辺ちょっと工夫してみてて、「(体言止め)。(その説明)」みたいな言い回しを増やしてます。

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