濡れ猫
ダンジョンに潜るのはとても危険なので、まずは森や原野でレベル上げです
「今日の寄合で、貴様らの娘を追放することが決まった。異議は認められん。よいな」
やたらと立派な髭をたくわえた老人が、両親に何か言っている。
「そんな、娘はまだ十歳です! 村を追われて生きてゆくなど、とても……」
「そうです! それに見た目が少し変わるだけで、何か害がある様子もありません。もう少し経過を見ても……」
両親が何かを言い返している。
「害があると分かってからでは遅いのだ。その姿が病なのか魔物憑きなのか、未だ分からぬ。分からぬから、切る。村を存続させるためにはそれが最善なのだ」
「し、しかし……」
「ならん」
「うぅ……」
泣き崩れた母の肩を父が抱いている。
だが、私には分かっている。両親も本当は、不気味な姿になった娘を追い出したくて仕方がないのだ。
ただ自分たちの世間体を保つために、形ばかりの抵抗をして悲しんでいる。それだけのことだ。
この日私は、村から山をみっつ越えた場所に置き去りにされた。雨の日を選んだのは、少しでも早く死ぬようにと考えてのことだろう。
生えたばかりの白い耳と尾が、雨水に濡れて冷たかった。
実家の猫は三毛猫です。そいつも元捨て猫です。