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気がかり

 勇者ジークの宣誓から一夜が明けた。祭りの疲れからか、毎日何かしらで騒然としているリンバス・ギルドも今日ばかりは静けさが勝っている。


「では、クラトス君にスズ君。私の目をじっと見るんだ」




<受託者>

 クラトス・メイヴ Lv.12


受託職業(ジョブ)

第五級 『獣使い』(ビーストテイマー)


受託職能(スキル)

・【猛獣調教】 Dランク

 獣および獣型の魔物を使役する。

・【教練の賜物】 Eランク → Dランク

 獣および獣型の魔物の能力を向上させる。

・【導く言霊】 Dランク → Bランク

 獣および獣型の魔物の成長を早める。




<受託者>

 スズ・クゼハラ Lv.14


受託職業(ジョブ)

第四級 『斥候』(スカウト)


受託職能(スキル)

・【潜影】 Dランク

 自身と仲間の気配を察知されづらくなる。

・【蛇の眼】 Dランク

 暗闇や霧の中でも自身の視界を保つ。

・【つぶての名手】 Eランク → Dランク

 自身の投擲攻撃の威力を上げる。

・【疾風怒濤】 Cランク

 自身の攻撃速度を上げる。




「Lv.12……?」


「普通なら一年近くかかるレベルに三ヶ月で至るとは、大躍進ですよクラトス殿!」


「ありがとう、スズ」


 冒険者の成長度合いを示す指標として、レベルという概念が女神から与えられている。レベルが上がると基礎的な戦闘力が高まるほか、十レベル上がるごとに使用頻度の高い職能(スキル)のランクが無条件にひとつ上がったりと重要な意味があるステータスだ。


 だからレベルを上げることは冒険者にとって仕事の一環だし、何よりの楽しみでもある。でも僕らはといえば、このところ慌ただしくてレベルや職能(スキル)の確認をしていなかった。祭りの疲れで町が半分眠っているこの機会に見てもらいましょう、というスズの提案に二つ返事で了解したのもむべなるかな。

 勇者の登場で役所はかなり忙しいようだけど、ギルドはそれほどでもないのは幸運だった。


「先日のグランドガーゴイルが大きかったな。熟練冒険者が苦戦するほどの敵をレベル一桁で倒したのだから、飛躍的に成長したのも頷ける。なんにせよ、おめでとう」


「ありがとうございます、アリシアさん」


 使役獣が魔物と戦えば『獣使い』にも経験値が入る。亜人のニーコ、そして第一級職業(ジョブ)のレオという規格外のふたりを強化しながら戦った僕には膨大な経験値が流れ込んだのだろう。


 ちなみに、レベルというのは普通教会で神官様に見てもらうんだけど、それはそれでお金がかかる。新人冒険者にはしんどいだろうということで、レベルの低い間に限りアリシアさんが無料で見てくれるのがリンバス・ギルドのすごい所だ。こういう奉仕精神は本当に『司祭』(プリスト)だと思う。


「君たちには安眠の恩もあるからな、これくらいは朝飯前だ。あの地下から漏れ出す邪気で悪夢を見ていたと知った時は、『司祭』(プリスト)としての矜持も忘れて死者(あのファマシスト)を呪うところだった……」


「あ、あはは……。でもそれを言ったら、僕らだって行方不明者捜索で先に借りがありましたし」


 行方不明者が大量にいると分かった時、アリシアさんが協力してくれたからこそできたことがたくさんあった。ニーコを発見した時に多数の冒険者をすぐ集められたのも、アリシアさんが下準備をしてくれていたおかげだ。


「持ちつ持たれつは冒険者の基本だ。それはギルドと冒険者の間でも変わらない。今後もよろしく頼むよ」


「はい、がんばります」


「ええ、クラトス殿もレベルが上がりましたし、この様子なら少し難度の高い依頼も受けられそうですね。職能(スキル)の方は……【導く言霊】のランクがこうまで上がったのは意外な気もしますが」


「ああ、【導く言霊】は起きてる間はずっと発動してるからかな。使用頻度が高い職能(スキル)だからCランクになって、Lv.10を越えたからBランクになったんだと思う」


「【導く言霊】を? なぜまたそんなことを」


「羊飼いとしてのクセといいますか……。あれを発動していると、羊の毛の伸びが早くなるんですよ」


 成長を促す効果の現れ方にもいろいろある。羊の場合はそれが毛であり、羊毛を売る立場としては都合がよいので常時発動できるよう訓練したのだ。


「ふむ、そういえば、今日は羊はどうした? 石の下敷きになった君たちを発見した恩人たちは」


「ギルドの前でおとなしく待ってもらってます。【猛獣調教】でそのくらいは命令できるので」


「なるほどな。羊の成長を促すのもいいが、冒険者にはバランスも重要だ。【導く言霊】以外の職能(スキル)も上がるよう考慮するといい」


「バランス……。分かりました、考えてみます」


 冒険者としての職能(スキル)となると、やはり強化の【教練の賜物】かな。戦闘の時には必ずお世話になるし。レオは全身が黄金色に輝くくらいにパワーアップしていたし、使い方次第では役立つ職能(スキル)になり得そうだ。


 話がひと段落したのを見計らい、アリシアさんは僕らの【鑑定】結果を書き留めた書類を机にしまう。仕事に戻るのならお(いとま)した方がいいだろう。そう思い立ち上がろうとしたら、予想に反して引き止められた。


「しかしどうした、今日はどうも浮かない顔だなクラトス君」


「そ、そうですか?」


 理由は分かっている。今朝、フィナから届いた、不審な手紙のことだ。

標準的な冒険者の場合、15歳で職業を受託したら以下のように成長します。


15歳 Lv.1

16歳 Lv.10

20歳 Lv.20±3

30歳 Lv.25±5

40歳 Lv.30±7

50歳 Lv.40±10


つまり大抵の人は、職能の無条件ランクアップを合計四回受けられるかどうかということになります。特にCランクを越えてくると反復使用でランクを上げるのは大変なので、どれを無条件ランクアップさせるか考えながら戦うことが高レベル冒険者には求められます。例えばアリシアさんの【鑑定】もAランクですが、これも工夫してランクアップさせたものです。


なお第一級の連中は化物みたいなものなのでこの例にはまず収まりません。普通はもっと上に行くし、職能もはじめからAやBランクを持ってます。



夜あたりにもう一度更新します

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