夢の狭間で
夢を見ている。かつて信頼していた仲間と共に将来の夢を語り合った夢を。
帝国から選ばれた魔法剣士は言う。
「おれの夢?帝国で一番の男になって帝王になることだな!」
いつも朗らかな笑顔を浮かべた青年だった。戦闘においては抜群のセンスを発揮し魔法と剣技を器用に使うのに対し、私生活は何をしても不器用で洗濯はおろか、料理もできないので国に帰った後、一人では生きていけないのではと仲間全員で心配した。不思議と憎めない奴だ。
倭ノ國より選ばれた魔弓兵は言う。
「私は…のぉょ…ううん。美味しいものを沢山食べることかしら。」
彼女の射撃と遠距離魔法は精密で急所を射抜くことに関して右に出るものはいない。時々変なことを言うことを除けば一番頼りになる女性でもあった。料理もうまいし、資金管理も完璧。彼女がいなければま魔王討伐前に資金不足で果てていたかもしれない。僕に対しいきなり冷たくなる点やいきなり真っ赤になる点を除けば完璧な女性だ。
王国から共に選ばれた異界の勇者は言う。
「やっぱり世界平和かな?こんな人々が争い合う世界はまちがってる。」
彼の教えてくれた異界の知識に何度救われたか数えきれない。彼とは幼少期から競いあった仲で互いに高め合ってきた親友だった。世界で数少ない全属性持ちで多彩な飽和攻撃を得意としていた。
そして最後は自分の番だ。
「僕はーーーーーー
何度も同じ夢を見る。みすぼらしい現実から目を逸らし過去の思い出にすがる自分が情けない。
ベッドからた立ち上がり壺に溜めてある水で口と顔を洗ったところで髭が伸びた自分と目が合う。まるでリビングデッドのように顔がやつれている。
「魔王討伐から半年…か。」
目を閉じればい今でも鮮明に甦る。
罠に嵌められた自分達を命と引き換えに救ってくれた倭ノ國の魔弓兵を。
無事に国に帰れたら伝えたいことがあると言っていたのに。彼女は帰ってこなかった。
万を越える敵の軍勢の注意を引くために一人飛び出して行った魔法剣士を。
何が修行になるから来るなと言って合流することはなかった。修行で命を落としたら意味がないだろ。
魔王討伐を果たした後、自らの野望のために僕のことを殺そうとした元親友の顔を。