とある自称小説家の日記
――×月13日。
今日も新規話分のPV数が順調だ。お気に入り数も昨日より増えている。読んでくれた人や気に入ってくれた人がたくさんいることがはっきりと分かってとても嬉しい。まあ、この俺が書く文章だから当然かもしれないが。
そう言えば、いつも俺の小説に感想を書いてくれる人から、小説の文章の添削を頼まれた。もう少ししたら文章がメールで送信されるだろうから、じっくり読んでみようと思う。
――×月14日。
どうせ誰も見ていないからはっきり言おう。
酷い。あまりにも酷すぎる。こう言うのを人に見せようというのか、あの自称小説家は?
しっかりと書かれているのは句読点の場所くらい、後は使い古されたアイデアに読みにくい文章が延々と並ぶだけ。自信作のようなのはその文字数の多さからも分かるけれど、俺ならしばらく寝かせた後に思う存分推敲して、その結果没にしようと決めるほどの出来だ。
こういう奴から感想を貰っていたのか、と思うと、俺も落ちぶれたかな、とつい感じてしまいそうだが、まあたくさん読者がいるわけだから変なのも混ざっていても仕方ないのかもしれない、と気持ちを改める事にした。
ちなみに俺の小説のPV数は、昨日と変わらず順調に伸びている。新しい話を投稿していないせいか、お気に入り数は昨日と変わっていないようだが。
――×月15日。
あの自称小説家、あの文章をそのまま投稿しやがっていた。
当然PV数もお気に入りも、俺の小説に比べると全然少ない。なんとも情けなく、みすぼらしい姿だ。まぁ、自業自得ともいえるかもしれないが。
俺の小説のPV数やお気に入り数、昨日よりほんの少しだけ減ったかもしれない。ただ、明日に新しい話を投稿する予定だからこれくらいは想定の範囲内だから心配はしていない。
それよりも悩むのは、あの文字書きにどうやって『アドバイス』を送ろうか、と言う事だ。ぶっちゃけもう小説を書くのは辞めろ、あんな汚い文を見る奴などこの世にはいない、と書きたいところだが、流石にそれを率直に書いてしまうほど俺の創作レベルは低くない。これからじっくり考えて、送信しようかと思う。
――X月16日。
よく考えれば、幾ら自称小説家とは言え、文章のルールはしっかりと把握しているし、あれだけの文字数を一気に書く根性はある。もしここで俺が上手く助言を送れば、もっとレベルが上がる可能性を秘めている、と言う事にもなる。さて、もう一度『アドバイス』を考え直すとするか。
俺の小説のPV数やお気に入り数は、今回は確認しなかった。するまでもないだろう、俺の小説だ、新しい話が投稿されればどれも増えて当たり前だろう。
――X月17日。
どうも今回の話、読者としては好みではなかったらしい。しっかりと話の展開を練って、推敲を重ねたはずなのにおかしい。まぁ、たまにはPV数やお気に入り数が減っても問題ないだろう。そういう絶望を堪能するのも、俺のような文字書きの醍醐味だろうし。
そして、アドバイスの方も無事に完成してあいつに送信した。流石に暴言は無いけれど敢えて厳しめの言葉を書いたので、これをしっかりと受け止めて創作活動に励んでいただきたい。
――X月18日。
……意味が分からん。
なんであいつ、自分の小説消したんだ?
やっぱりあいつには文字書きの才能は無いようだ。当然だろう、『この小説はもう諦めて、新しい小説を書き直したほうが良い。それが身のためだ』って言う俺からの激励のアドバイスを、あいつは勝手に勘違いした。人から受け取った言葉にどういう意味が込められているか、それすら把握できないなんて文字書き失格だ。
と言うか、最近はあいつのようにゲームや漫画、小説の文章の中身をそのまま受け取って、中に秘められた伏線やら何やらを推理できない奴が増えているらしい。全くどうなってんだよ、この世の中……。
――X月19日。
あの自称小説家、結局まだ新しい小説すら書いていない。一切何の動きも無い。
俺が少し厳しい言葉を言っただけでこれでは、やっぱりあの程度の腕しかなかったのかもしれない。
それよりも俺が気になるのは、何で新規の話を投稿したのに、またPV数やお気に入り数が減っている。どうなってんだ?
――X月20日。
まただ。まただ。新規の話を投稿するたびに、またPV数やお気に入り数が減ってる。ふざけんなと言いたい。
みんな楽しみにしている、次の話も期待している、って感想欄に書いてくれている。それなのにこの現状、一体どういうことなのか訳を知りたい。推敲も重ねているし、ちゃんと投稿時間も考えているのに、訳が分からん。誰か教えて欲しい。
――X月21日。
もう嫌だ。ふざけんなよ読者(笑)。おめーだよおめー。
読むだけ読むならお気に入りに入れろよ。なんで外すんだよおい、俺の自信作を何で正当に評価しねーんだよ!
いいか見てろよ、絶対お前らの度肝を抜かせる作品書いてやるんだからな。覚悟してろよ、後で泣いても知らんぞ俺は!
……こういうこと、日記にしか書けないって言うのは嫌だ。お気に入りを外した奴のところにいって胸倉掴んでボコボコにしてやりたいけど、そういうことは実際には出来ない。本当に嫌な世の中だ。
――X月22日。
今日はもう俺の小説のPV数もお気に入り数も見ない。
今までのは夢だったんだ、絶対にそうだ。明日になったら皆も見てくれる。間違いない。数も増えてる。絶対にそうだ。
……はぁ。
――X月23日。
『貴方の文章は読みにくい。もっと推敲を重ねた方が、読者の心を掴むのではないでしょうか』
――上から目線のアドバイスご苦労様です。貴方のように俺の小説を評価してくれない自称小説家さんは即刻ブロックさせていただきます。
こういう奴ばっかだから、俺の小説のPV数もお気に入り数も下がる一方なのかと考えると、やっぱりこの世は腐ってるとしか思えない。程度の低い奴ばかりだ。
そういえば、今更ネットで知ったのだが、俺の近所のマンションで若い男性が飛び降り自殺したらしい。
なんでもその人、小説家を目指して努力してきたのだが心無い言葉を言われて、ショックのあまり生きていく自信すら無くしてしまったようだ。
一体誰がそのような事を言ったのだろうか。今頃そいつには特大の天罰が降りかかっている頃だろう。ざまあみろ。




