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水曜日
「おはようございます!」
仕事部屋から出て思い出す。
そういえば預っていたんだと…
朝から元気な挨拶を聞くのはいつぶりか
嫌な記憶を思い出す
施設に囚われていた頃の嫌な思い出
あの頃の俺は
両親から捨てられた可哀想な子供だった
一人で生きる力のなかった俺は
一生懸命にいい子を演じていたのだ。
もう誰にも見捨てられないようにと
今、真央はあの頃の俺と同じだ
俺よりひどいかもしれない
親戚かたらい回しにされるなんて
だからこそ俺は干渉したくないんだ
俺は真央の笑顔と挨拶を無視して通り過ぎる
なにか言いかけた言葉を飲み込んだのがわかる
それでいい
俺に…俺に関わるな
「お仕事、頑張ってください」
朝食だけとって部屋に戻っていく俺
背中に真央の声が聞こえた
部屋の扉を締める
胸がズキンズキンと痛む
「ごめん、ごめん…」
扉に背をもたせかけズルっと座り込む
どっとくる罪悪感に耐えられなくなる
水曜日の事