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足りない言葉

作者: おこめ

「何になりたいの?」


本を読んでたら突然声をかけられた

なんで将来について聞く?

悩んでる私に君は向かいに座って指を指す

それは私の持っている本だった


「すごいタイトルだったから」


…確かに

でもこのタイトルと私の将来直結?

ただ読んでただけなのに君の意図がわからない


「俺じゃこんなに厚いの読めない」


つまり君がこんなに厚い本を読むのには余程の気合がいるわけで、

それでもそれを読む機会は未来の自分のためになる知識

それこそ教科書レベルじゃなきゃってことなのかな?


なんて君は言葉足らずなんだろう

一言に含める意味が深い

君は思いを言葉に表すことをどれだけ省いているんだろう


「言葉足りなさすぎ」


私は君に指摘する

ちゃんと君の考え口にして

君の考えが読めていてもそれは私の推測でしかない

偏る思考ほど痛いものはないと思う


「…同じ高校に行きたいから」


突然どうした驚いた

素直に嬉しいけどまどろっこしい

そんな気持ち最初のくだりから想像できるわけないじゃない

そんなことを思っていてくれたなんて

無謀でしょって思うけどそれはそれ

私はなんだかとても嬉しいみたい


「俺に勉強教えてくれる?」


そう来たか

君は流れを作るのが上手

いつも皆が君に流される

それは君のいいところの一つで

だから君は人気者

もちろん私も流されて

悔しいなとは思うけどこの瞬間は嫌いじゃない

むしろこんな空気が気に入ってる

でも、やっぱり釈然としないから


「この本読み終わってからね」


本は4分の1を残すだけ

結末に向かって止まらない物語が動き出す

今ここで止めるの惜しいし

それに私は知っている


「分かった」


君は待っていてくれるって

たくさん待たせるのに文句一つ言わない

こういうところは大人な感じ

普段からこうなら素敵なのに


でも待ち方がすごいいじわる

私の向かえに座ったまま私をガン見

飲み込みいいように返事して

結局はいつもこれですか


静かに向かい合う空間が妙に刺す

意識して赤くなる頬が恥ずかしい

君に見えないように本で顔を隠した

こっちを見ないでよいじわる


「そういうとこ好き」


今、なんて言われたの?

一連の流れからここに行き着くなんて思えない

予想なんかしてないし

してても動揺なんか隠せない

驚きで本から顔を出してしまう

たぶん今の私はすごい顔赤いんだ

でも気づかない私に君は微笑む

さっき私に好きって言ったとは思えない余裕ぷりで

いつもの調子で口を開く


「待ってるから」


何を待つというの

さっきの告白の返事?

それともこの本が読み終わること?

やっぱり君の流れに取り込まれて

私はもう取り繕うこともできない

本なんかもう読めない

浮かぶのはさっきの言葉

止まるような時間の流れに感じるけど

戸惑う私を君は静かに待っている


今君に映る私の姿はどれだけ慌てて見えるの

それでもただ待ち続ける君はなんていじわるなの

でもそんなところ嫌いじゃない

むしろ好きだと感じてる

素直じゃない私

言葉にできない

全然可愛くない

どっちが言葉足らずなの

君は思いを口にしているのに私はなんて駄目なの


でも、なりたいのなら素直に

君のように余裕さは抜けてるけど

足りない部分が恋しいと言える

向かい合うんじゃなくて隣に座って欲しい

静かな空気を一緒に感じて

そして君に振り回される私は嫌いじゃない

なら私はきっと、見つめ合う

君と二人で恋ができる。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の思考そのものの地の文が、心の機微を上手く表現出来ていたと思います。 思春期の甘酸っぱさや、淡さが良く出ていたと思います。 [気になる点] 場面や登場人物のイメージがし難い様に感じま…
2011/06/17 21:39 退会済み
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