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第六十八話:小さな変化

変化は、いつも小さい。

気づけるかどうか。

それだけで――未来は変わる。

そしてその変化に気づいた時、

もう戻れないこともある。

朝。

目を覚ました瞬間――

ラフリの胸は、まだ少しだけ重かった。

(……また、普通の朝か)

天井を見る。

何も変わらない。

でも。

(本当に……そうか?)

ゆっくりと起き上がる。

机の上。

ノート。

そこには、自分の字で書かれた記録。

・違和感を無視するな

・小さい変化を見逃すな

・一人でやろうとするな

ラフリはその言葉をしばらく見つめる。

「……分かってる」

小さく呟く。

でも。

(全部、簡単じゃない)

ため息をつき、立ち上がる。

――学校。

教室。

いつも通りの光景。

生徒たちの声。

笑い声。

椅子の音。

何も変わらない。

……はずなのに。

(……違う)

ラフリは静かに周りを見る。

ヨヨ。

セラ。

ナカムラ。

ユナ。

全員いる。

全員、普通に見える。

でも。

(空気が……少しだけ重い)

理由は分からない。

でも確実に、“前のループ”とは違う。

ラフリは席に座り、ゆっくりノートを開く。

新しいページ。

ペンを持つ。

そして書く。

・朝の空気:少し重い

・クラスの会話:やや少なめ

・ナカムラ:表情硬い

・ローズ:未確認

書きながら、深く息を吸う。

(……今回は、ちゃんと見る)

その時。

「ラフリ?」

声。

ユナ。

「どうしたの? さっきからずっと静かだよ」

ラフリは一瞬だけ迷う。

(言うか……?)

でも――まだ早い。

「……ちょっと考え事」

「そっか」

ユナはそれ以上聞かない。

でもその目は、少しだけ心配そうだった。

その視線に、ラフリは少しだけ目を逸らす。

(……信じてもらうには、まだ足りない)

その時。

教室の後ろで、小さな音。

コトッ。

視線が集まる。

ナカムラの机。

ペンが落ちていた。

「……チッ」

小さく舌打ち。

拾う。

その仕草が、少しだけ荒い。

(……イライラしてる?)

ラフリはノートに書く。

・ナカムラ:苛立ちあり

その時。

教室の扉が開く。

「遅れてごめん」

ローズ。

静かな声。

いつも通りの笑顔。

でも。

ラフリの心臓が一瞬強く鳴る。

(……来た)

ローズは教室を見渡す。

一人一人。

ゆっくりと。

そして。

ほんの一瞬だけ――

ラフリと目が合う。

微笑む。

自然な笑顔。

でも。

(……見られてる)

ただの視線じゃない。

“観察”。

ローズはそのまま席へ向かう。

ユナの隣。

「おはよう、ユナ」

「おはよう」

二人は普通に会話を始める。

何もおかしくない。

でも。

ラフリはノートに書く。

・ローズ:入室遅れ

・視線:確認あり

ペンが少し震える。

(……怖い)

正直な感情。

でも。

(逃げない)

深く息を吐く。

その時。

小さな声。

「……なあ」

ナカムラ。

隣の席のタカハシに話しかけている。

「昨日のやつ……お前だろ」

空気が止まる。

タカハシが眉をひそめる。

「は? なんの話だよ」

「とぼけんなよ」

ナカムラの声が低くなる。

教室がざわつく。

ラフリの手が止まる。

(……始まった)

でも今回は違う。

ラフリはゆっくり立ち上がる。

足が少し重い。

怖い。

でも。

一歩。

前に出る。

「ナカムラ」

声をかける。

ナカムラが振り向く。

「……なんだよ」

少し荒い声。

「落ち着け」

短く言う。

「落ち着いてるって」

嘘だ。

でも責めない。

ラフリは続ける。

「証拠はあるのか」

タカハシが少し驚く。

ナカムラは一瞬言葉に詰まる。

「……ないけど」

「なら決めつけるな」

静かに言う。

強くはない。

でも、逃げてもいない。

数秒の沈黙。

教室が静かになる。

ナカムラが舌打ちする。

「……チッ」

そして顔を逸らす。

「悪かったよ」

小さく言う。

タカハシも肩をすくめる。

「別にいいけど」

空気が少し緩む。

ラフリはゆっくり息を吐く。

(……止められた)

ほんの小さなこと。

でも確かに――

前とは違う。

その時。

視線。

ラフリはゆっくり振り向く。

ローズ。

静かにこちらを見ている。

微笑んでいる。

でも。

その目は――

「……へえ」

小さな声。

誰にも聞こえない。

「変えたんだ」

ラフリの背中に冷たいものが走る。

ローズはすぐにユナの方へ向き直る。

何もなかったように。

普通に笑う。

でも。

ラフリは確信する。

(……気づかれてる)

ノートに最後の一行を書く。

・ローズ:変化に反応

ペンを置く。

手が少し震えている。

でも。

ラフリは小さく呟く。

「……それでも」

目を閉じる。

そして開く。

「やるしかない」

小さな行動。

小さな選択。

それだけで、未来は変わり始める。

けれど。

それを見ている者がいる。

理解している者がいる。

そして――

次は、もっと深く仕掛けてくる。

物語は、静かに次の段階へ進む。

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