入学 下
四方八方から飛んでくる槍。
「葵。とりあえず、私が撃退するわ。」
「結界、だな。」
満足げな顔で頷く葵。
本当にわかっているのかしら、と思うけれど人よりは葵への信頼はあるつもり。
「ファースト、紅玉。」
私の赤い魔力が槍を一つ一つ潰していく。
最後の一つを潰し、そこにあるはずの影に声を掛ける。
「本宮さん。お久しぶりです。」
空気が揺れているのを肌で感じる。
そして、揺れていた空気から男性が現れる。
「久しぶりですね。神楽嬢、また技の精度が上がりましたか。葵君も結界の強度が上がりましたね。未来が楽しみです。」
ニコニコと胡散臭い笑みを貼り付ける目の前の男性。
本宮傑。
最年少で不知火皇国の交戦部隊の三番隊隊長まで上り詰めた天才。
今は学生の新しい魔力の研究のために月輪学園で教師をしている。
魔法のことになると、いつもの胡散臭い笑みではなく真剣な顔になるのだとか。
本宮さんの光に当たると控えめに輝く銀髪。そして、夜明け前の空の色の瞳。
そのルックスから女性からの人気も高いのだとか。
「傑さん!お久しぶりです。」
そして、葵の憧れの人。
男子って圧倒的強者に憧れるのね…。
「ここでお話ししたいところですが、学長が新入生を連れてこいとおっしゃってたので、そろそろ行きましょうか。」
新入生、という単語に私と葵が体を強張らせる。
入学が決まってから一度も会ったことのない、そればかりか名前も知らない人だから不安に感じていたのだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今年はあなた達も含め、粒揃いですから。」
ははは、と軽い笑い声を上げる本宮さん。
長い廊下を歩き、周りの部屋の扉と比べられないほど大きな扉の前で本宮さんが止まる。
「ここが学長室です。お二人から入ってください。一人は顔を見知った子がいると思いますよ。」
意味深長な物言いに疑問を持って、顔を見合わせる私達。
けれど、ここで止まっているわけにもいかず意を決して扉を開けた。
そこには妖艶な笑みを浮かべている女性と、背丈の小さい女の子。
そして、我が皇国の第三皇子・神宮寺零也様がいらっしゃったのだ。




