大切な人。護らねばならぬ人。
お父様の顔つきの意味を考えながら、奈留の元へ急ぐ。
この時間帯は使用人部屋にいるはずだ。
「休憩中にごめんなさい。奈留はいるかしら。」
「神楽様!奈留さんですね。お呼びいたします!」
私が使用人部屋の扉を軽く叩くと、最近入ったばかりの新人メイドの椿が顔を出した。最近入ったばかりだから、奈留がお世話係として仕事を教えているそうだ。奈留が私の仕度を手伝ってくれた時に聞いた。やり甲斐があると瞳に光を宿して。
そんな頑張っている奈留を私の私情で連れていっても良いのか。奈留は残りたいのかもしれない。きっと椿を一人前になるまで育てたいと考えていると思う。けれど、奈留に聞かなければ分からない。私が勝手に決めつけてはいけない。きっとそうだ。
「神楽様。待たせてしまい申し訳ございません。」
「いいのよ。私も休憩中にごめんなさいね。
あのね、奈留。私、あなたに一つ聞いておきたいことがあるの。」
直接聞くのは、どこかずるいと思った。
「奈留は今何がしたい?これからどうしたい?」
だって、責任感の強い奈留なら、私は神楽様のお付きの侍女ですから、と自分の気持ちを後回しにしてしまうかもしれない。
できるだけ、この狭い涼風家の中でだけでも自由に動いてほしい。
「私は神楽様の学園に着いて行きたいです。」
「え、奈留。何故学園のことを…。」
「神楽様のご予定は確認済みです。」
奈留が少し俯き、奈留の艶のある雲色の髪が傾く。
「私がそうしたいのです。神楽様でないと、私はいけないのです。」
いつもは無表情か、少しだけ頬を緩めている奈留が、照れたように顔を赤らめていた。
何より、『私がそうしたい』と言ってくれたことが嬉しかった。
奈留の手を取って目線を合わせた。
「奈留。私も、奈留じゃないと駄目だわ。奈留が必要なの。
だから、これからも月輪学園でも、よろしくね。」
そう言い、二人で微笑みあった。




