珊瑚と輪廻。
雷駆さんへの愛を心のなかで語っていたら、寮の部屋についていた。
二人部屋で雷駆さんと同じ部屋。
三階の窓から海まで見える眺めのいい部屋で台所と寝室がある。
ちなみにお風呂は寮の四階に大浴場があるみたいだが、面倒くさい人のために部屋には簡易風呂が取り付けられていた。
先に入った雷駆さんに声をかけようと、私は口を開いた。
「雷駆さん、よろし…」
「お久しぶりですね、ホノ様。」
私の声を遮り、雷駆さんは振り返らずに私の前世の名を呼ぶ。
私の前世の名を知っていることにあからさまに動揺してしまう私。
「先程の本宮先生の術で思い出したのでしょう?そう、予言したのは私ですから。」
何でだろう。彼女から今私は目が離せなくなっている。
彼女に重なったのだ。目を瞑ったときに見た、白髪の幼かった女の子が。
誰なのか。そう魂が理解すると確かに私に存在した記憶が頭に流れ込んでくる。
幼かった貴女に魔法の訓練をつけた記憶。
自分の責務に押しつぶされそうになっていた貴女が私に初めて反発したときの記憶。
貴女を心から愛し、支えてくれる男性を見つけて、結婚すると伝えてくれた貴女の記憶。
そして、貴女よりも先に逝ってしまう私に貴女特有の術をかけようとする泣きそうな貴女の記憶。
ああ、どれも大切な記憶だったはずが私はどうして忘れていたのだろうか。
娘のように愛情をかけて育てた、“弟子”をどうして忘れていたのだろうか。
言葉にできない、複雑な感情が私の涙となって溢れる。
これ以上無い純粋で、大切な、愛おしい記憶が私の中に満ちる。
目の前の彼女は私の方に向き直り、微笑んだ。
その表情に胸が締め付けられて、思わず彼女へ駆け寄り、その華奢な肩を抱き寄せた。
「ごめん、ごめんなさい、ありがとう、“輪廻”…っ!」
「おかえりなさい…っ。ホノ様。」
そう、彼女こそが。
私が千年前にこの世界で育てた一国の巫女様である雫月輪廻様だ。




