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不可思議な学長と金色の女の子

「では入学式を始めてもいいかな。」

 私たちが零也様と茶番のような会話をして、場の雰囲気が崩れそうになっていたのを横に立っていた本宮さんが声をかけてくれた。

 私たちが幼子のように頷くと前に座っていた女性が笑い声をあげた。

「あはは。君たちのそういうところを見ると以前を思い出すね。懐かしい。」

 彼女は私たちに我が子に向けるような慈悲深い微笑みを浮かべ、口を開いた。

「入学おめでとう諸君。私がこの学園の学長である鷹野(たかの)くいなだ。君たちにはこの学園で授業を受けながら、一人一つ自分の課題を見つけ、研究してもらう。まあ、それは追々説明するとしよう。ここは、学校の形をした君たちの興味関心を満たすため、満足するまで学ぶ施設と考えてくれても良い。

 そのために、一番初めの課題だ。本宮君、頼むよ。」

「はい、学長。」

 本宮さんは私たちを学長室の外へと手招きした。

「今から君たちの教室に向かいます。一列で着いてきてください。」

 本宮さんは詳しい説明はせずに私たちの前を歩いていった。

 和風な作りの学舎にところどころ魔法が見え隠れするのが楽しいわね。

 電球の代わりに長持ちする妖火が使われているし、水道もきっと学園の地下にポンプがあって術式が組み込まれたとおりに流れているのだろう。

 流石、国唯一の魔法学園だ。

 一年と書かれた札が下がっている扉に手をかけ本宮さんが開ける。

「黒板に「黒板に席順が書かれた紙を貼っていますので、それ通りに座ってください。」

 広い教室に教壇と席が四つだけの殺風景な教室。

 前に広がる暗い緑色の黒板の上には、『ディストリアに栄光あれ。』の文字が書かれた横長の掛け軸が掛けられていた。

 席順通りに座ると、本宮さんは教壇に立ち、満足そうに微笑んで口を開いた。

「今日から君たちの担任になる本宮傑です。魔法史と魔法科学を担当しています。君たちの戦闘訓練のときにも顔を出すと思うので覚えていてくださいね。

 では、はじめましての人もいると思うので左側から自己紹介をお願いします。」

 本宮さん、もとい本宮先生は零也様の方を見て笑みを深くした。

「僕は神宮寺零也です。得意分野は防御で魔法属性は風。敬称も敬語もいりません。良ければ呼び捨てで呼んでほしい。よろしくお願いします。」

 微笑んで、お辞儀をする零也様、ではなくて零也。

 なんて腰が低い皇子様なんだろう…っ。本当に葵も見習ってほしいものだ。

「俺は氷室葵。魔法属性は水で、得意分野は結界術。一応そこにいる神楽の幼馴染だったりする。よろしく。」

 淡々と、必要事項だけ述べる葵。

 私からのジトーとした目線に居心地の悪そうな顔をした。

 確信犯ね。きっと私の横にいる女の子に警戒しているんだわ。

「私は涼風神楽よ。魔法属性は炎。好きな食べ物は皇都の甘橙(あまだいだい)よ。よろしくね。」

 ふう、なんて百点満点な自己紹介!

 葵にふっ、と煽るような目を向けてから、私の隣にいる例の女の子に目を向ける。

 女の子は跳ねるように立ち上がる。

 後ろに垂らした金色のゆるく結んだ三つ編みが左右に揺れた。

「わ、私は雷駆(らいく)珊瑚っていいます。魔法属性は電気。得意分野は攻撃の回避率を上げることです。よろしくお願いします。」

 少し緊張しているような声色で自己紹介をした雷駆さん。

 私、意外と葵と一緒に過ごす時間が長くて女の子の友達が少ない…っていうかいなかったのよね。

 雷駆さんは私とも友達になってくれるかしら…。

 まあ、過ごす時間が長くなれば長くなるほど、仲は親しくなるものだわ。

 きっと大丈夫よ。

「では、学長からの一番最初の課題です。」

 本宮先生は教壇の机に手をつき、浮かべていた笑みを消して真剣な顔つきになった。

「人は誰しも前世があるものなのです。それは魔力因子が体の中にあればなおのこと。僕にも前世がありますし。なので、これから僕の研究してきた魔法陣の上に乗ってもらい、君たちの前世を明らかにします。まあ、大体の予想はついていますが。」

 そう言った本宮先生は先程の真剣な顔から、ずっと隠してきた何かが剥がれ落ちる、そんな顔をしていた。

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