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第6話 夜の学園

 課外実習が終わり一夜が明けた。はじめてファントムを見たときまるで悪夢を見ているかのようだった。

 昔、師匠が任務でファントムと戦って帰ってきたときも同じことを言っていた。『あれはただの悪夢だ』と。そんなことを思い出した。


「・・・って言っても昔のことだし師匠も覚えてないだろうな」


 休日の昼頃グランは部屋のベットの上に座り窓の外を見ていた。珍しくその日は中々寝付けずいつもなら朝早くに起きるのに昼に起きてしまったのだ。


「とりあえず飯でも食べに行くか・・・」


 グランは立ち上がり部屋の扉を開けた瞬間目の前に彼女は居た。驚き声も出さずに思わず一歩引いてしまった。


「久しぶりだなグラン」


 長い赤色の髪を後ろで一つにくくりにし黒のローブに身を包んだ女、グランの師匠でありその強さは宮廷魔術師をも超える双剣の魔術師リアナ・クリアだった。


「師匠どうしてここにいるんですか」

「仕事だ、どうせ今起きてお昼ご飯まだなんだろ?ほら、食べに行くぞ」

「・・・たしかにまだ昼飯食べてないですけどなんでわかったんですか」

「それは私がお前の師匠だからだ」


 時々勘が鋭くていい加減な性格をしている師匠のリアナと王都の酒場へ移動した。

 酒場で昼食をとり一息ついたところでリアナはグランに質問をした。


「それで何かあったのか?お前がこんな時間に起きるなんて今までなかっただろ」

「それが昨日の課外実習で行った村の近くの林の中でファントムに会ったんです」


 グランがそう言うとリアナの表情と声色が変わった。いつもより真剣そうだ。


「それは本当か、ファントムは昔その研究所も含めて私たちが壊滅させたはずだまさか生き残りがいたか。グランはそのファントムを倒したんだな」

「はい、この手で」


 グランはうつむき右手を強く握りしめた。


「グラン、お前は正しいことをした。ファントムは誰が何と言おうと魔物だ。奴らに知性はなく無差別に人や動物を襲う、そんな奴に懸ける慈悲はない」


 リアナはグランに力ずよく話した。その後リアナは仕事があるからと言って酒場を後にした。グランも学園へ戻った。


 そして夜、エルドたちと夕食を取り部屋へ戻りシャワーを浴びた。ベットに寝そべり目を閉じた。だが、いつものように眠れず目を開けベットから起き上がった。


「寝れねぇしちょっと散歩しに行くか」


 深夜、学園の敷地内を歩き始めた。学園がある魔法都市ロアリオスには加護の宝玉というものがあり学園を含む街全体に退魔の加護が施されている。

 グランは寮の周り、中庭、修練場の側を歩き次は校舎近くのグラウンドに向かって歩き出した。しばらくしてグラウンドが見えてきた。

 そこには月明かりだけが照らすグラウンドの真ん中に一人の少年が立っていた。

 グランは不思議そうに近づくとその少年はこちらに気付き振り返る。


「・・・本当に来た」


 グランがここへ来るのがわかっていたのかそれほど驚いてはいない様子だ。


「ミリスの言ってた通りだ。たしか名前はグラン・フォーカスだったっけ。まぁどうでもいいや、いただきます」


 少年はそう言い終わるとグランに向かってまるで猛獣のような大きな口の影を放った。グランはギリギリで何とか避けた。


「おい、いきなりなにすんだよ!ってかお前誰だ」

「君が知る必要はないんだ、だってここで食べられるからね」


 少年はグランを足元から丸のみにするように影を走らせた。相手の交戦意思を受け取ったグランは剣を握り影か逃げるように少年に剣が届く距離まで走り続けた。だが距離を詰めることはなかなかできない。グランを取り囲むように影がいたる所から襲い掛かりそれに対処しようと足を止めると今度は氷魔法が飛んでくる。闇魔法である影を自在に操る魔法と氷魔法、人間に二つの魔法を扱うことは絶対にできないのに少年は二つの魔法を使う。そう、この少年は魔族の血と魔力に適合し闇魔法を習得した魔人だった。その力はグランより圧倒的に強く最初は少年の攻撃に食らいついていたが影に対処するのに精一杯になりつららの形をした氷魔法を複数腕や足に受けてしまいついにはその場に倒れてしまった。グランはまだ剣を握ろうとするが力が入らない。


「もう、終わりかちょっとはやるようだけど所詮は人間か。本当は食べたかったけどこんなにボロボロで魔力もなさそうなだからもう殺すね」


 少年は倒れたグランに近づきながら言う。


「最後に一つ。ローナス・スキア、これが僕の名前だ。この名をよく魂に刻んで死ね」


 ローナスがグランを殺そうと氷魔法を使おうとしたときどこからか炎の球が飛んできた。


「誰だ今、僕の邪魔をしたのは。せっかくいいところだったのに」

「そうか、それは悪かった。だが、私の可愛い弟子を殺すのは許せないな」


 グランを助けに現れたのは師匠のリアナ・クリアだった。


「し、しょう・・・」


 リアナの声を聴いたグランは本人には聞こえないほどのか細い声を出した。


「僕の邪魔をするなら殺す。影よ喰らい尽くせ!」


 巨大な影が現れリアナを飲み込もうとしたその時。


「創剣・・・」


 そうつぶやくとリアナの両手に炎の双剣が創られた。その双剣で影をいともたやすく切り裂いた。


「これで終わりか、魔人」

「うるさい!人間ごときが調子に乗るな」


 ローナスにグランと戦っていた時の余裕はなくなっていた。ローナスはリアナに向かって乱暴に氷魔法と影を放つがすべて炎の双剣によって切り裂かれている。じわじわと距離を詰めるリアナを見てローナスは恐怖を覚えた。


「来るな!おい、来るなって言ってんだろ」

「魔人、お前はここで死ぬべきだ」


 リアナがをローナス殺そうとしたとき一匹のカラスの魔獣が雷魔法を放ちリアナの攻撃を阻止した。カラスの魔獣はローナスの肩に止まり口を開いた。


「ミリスか、助かった」

「・・・情けない、帰るわよ」


 ローナスはカラスの魔獣と影に消えた。


「逃がしたか・・・おい、グラン!しっかりしろ」


 その場に残されたリアナは倒れたグランに回復薬を使って応急処置をした。


「し、しょう・・・」

「グラン、よかったまだ生きてる・・・」


 リアナはグランを抱え涙を流す。

 ふたりだけのグラウンドに朝日が顔をのぞかせようとしている。



___________________________________


「加護の宝玉と人王の宝玉の場所はわかりましたかミリス」


 眼鏡をかけた男が一人の少女に話しかける。


「うん、加護の宝玉のある場所は分かった。この学園の地下の施設に厳重に保管されてる。人王の宝玉は王宮にあると思うけどまだ確認できてない」


 少女は淡々と話す。


「そうですか、では計画通り加護の宝玉から回収しましょう。計画実行は一か月後です」


 そういうと男は部屋を出て行った。


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