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第5話 課外実習とファントム

ウォルストン学園にはこんな噂がある。

 月明かりのない新月、夜学園内を出歩く者はと音もなく影に喰われる。そんな噂を確かめに来た男子生徒二人がいた。


「なんだよ結局何にもなかったな」

「そうだな所詮噂だったし帰るか。ん、あれ誰だ」


 ふたりが帰ろうとしたとき目の前に見知らぬ少年が立っていた。


「・・・いただきます」


 その一言が聞こえた後、突然男子生徒二人の足元に大きな影が現れその噂の通り音もなく喰われていった。


「人喰いは順調ですか?」


 どこからか眼鏡をかけた男が近づいてきた。


「最近はダメだね、夜に出歩く生徒が少なくなった」

「そうか、だが数は十分集まりました、あとは実践で使えるか試すだけです」


 そして男は少年とともに影に消えていった。


 _____________________________________


 翌朝、グラン達は課外実習のため王都から離れた村へやってきた。どうやらこの村の付近で活性化した魔物が大量発生していて手が付けられなくて困っているから退治してほしいと村長から依頼がありその依頼をこのクラスの担任であるフロック・ハドラーが受けグラン達に課外実習と題してこれから魔物狩りを始めるところだ。


「それでは各々魔物狩りに出発してください。時間は四時間終わったらこの場所に集合ですよ。くれぐれも無茶なことはしないようにしてくださいね」


 そうしてグラン達は村から離れた。林の近くの平原で魔物狩りを始めた。


「ねぇ、いくら何でも魔物の数が多すぎない?」

「確かにこの辺りにしては多いな、これも活性化の影響なのか」


 グランは剣に付いた魔物の血を振り払い魔物から落ちた赤色の魔石を拾った。


「でもまぁ、魔物もそんなに強くないし数が増えても大丈夫だよ」


 メリアはリィナをなでながら話す。


「俺、あっちの方で強そうな魔物探してくる~」

「おい待て、グラン!」


 戦い足りないのか林の方へ魔物を求めて走り出したグランをエルドは止めようとしたが間に合わなかった。


「まったく自由なやつよね」

「仕方ない後を追うか」


 エルド達はしぶしぶグランの後を追った。



「うーん、ここに居た魔物はもう誰かに倒されてたか。あ、まだいるじゃん」


 グランが剣を握り見つけた魔物に近づこうとしたその時どこから水魔法が飛んできて魔物が倒されてしまった。


「誰だ俺の獲物を横取りした奴はっ!」

「ご、ごめんなさい私そんなつもりなくて」


 グランがそう怒鳴ると近くの茂みの中から透き通るようなきれいな水色の髪を三つ編みにした小柄な少女がおびえながら出てきた。


「なんだ、シャルか」

「ど、どうして私の名前知ってるの」

「クラスメイトの名前くらい覚えてるよ」


 この少女シャル・メルバはクラスではおとなしい方で一人でいることが多くいつも魔導書を持ち歩いている。今日の課外実習でも一人で行動していたらしい。


「この辺の魔物はお前が倒したのか」

「は、はい数が少なかったので苦戦はしなかったです」

「そうかこの辺りは魔物が少ないんだな・・・ってあそこにいるの魔物じゃないか?」


 グランの視線の先には一匹のトカゲ型の魔物がいた。


「あ、あれはリザドルト、木や石に擬態する能力を持っています」

「なら擬態される前にここで斬る」


 グランは地面を蹴ってリザドルトに近づき剣を振って倒した。


「・・・倒したのは良いけど一匹だけっておかしくないか」

「そ、そうですか他にはいないようですけど」


 グランがどれだけ辺りを見渡しても魔物はいない、それなのにこの林に入った時からずっと何かに見られている気がする。始めは茂みに隠れていたシャルかと思ったがそれは違った。今もまだ視線を感じている。それも大量に・・・


「シャル、攻撃準備だ」

「え、で、でもどこにも魔物なんて」


 グランはロウソクの火ような炎魔法を目の前の木に放った。すると魔法が当たった木から擬態していたリザドルトが飛び出してきた。


「やっぱり擬態してたか」


 木から飛び出してきたリザドルトを倒してもまだ 複数の視線を感じる。一体どれだけのリザドルトが擬態しているのか見当もつかない。


「どうにかこいつらを一掃する方法はないか、シャルお前の水魔法はどうだ」

「わ、私の魔法じゃ、あぶりだすので精一杯です」

「そうか、ならいったんここから離れるぞ」

「は、はい」


 グランとシャルは林を離れ平原へ移動した。


「さて、どうするか」

「そ、そのことなんですけど提案があって」

「なんだ」

「こ、このグリモワールを使ってグランくんの魔力を増加させて炎魔法を放つんです」


 シャルが持っていた魔導書それは禁書グリモワールだった。本来この本は大図書館の地下に厳重に保管されているはずなのになぜ彼女が持っているのだろう。


「できるのか魔力増加。俺はこの指輪をつけている限り使える魔力に制限がかけられているんだぞ」

「も、問題ありません。外部から供給される魔力は体内で作られる魔力に干渉しないのでその指輪の効果を受けることはありません。試しにやってみますか」

「あぁ、頼む」

「で、では失礼します」


 シャルはグリモワールを開き魔力を溜める。そしてグランの背中に手を当て魔力を流し込んだ。


「こ、これで魔力の増加が完了しました、何か魔法を使ってみて下さい」

「魔力が増えた感覚はないけどとりあえずいつも使ってる炎魔法を・・・って何だこれ!」


 いつもはロウソク並みの炎だが今のグランの手の上には炎が轟々と燃えていた。

 だが、増加した魔力を使い切ったのか炎はすぐに消えてしまった。


「た、たった少量の魔力を流しただけなのにこんなにも強力な炎を生み出せるなんて・・・す、すごいです!」


 シャルは滅を輝かせながらグリモワールを抱きしめていた。


「こんなデカい炎を見たのは久しぶりだ、これならあのトカゲどもを一掃できるな」


 グランとシャルは再びリザドルトの生息する林の中へと戻っていった。だが、そこには複数のリザドルト地面にが転がっていた。通常倒された魔物は魔力が徐々に無くなり体を維持できなくなると灰のように消えるのだがまだ残っているということはリザドルトを倒した誰かが近くにいるということだ。二人はさらに林の中を歩き続けるとそこにはグランよりも背の高い男が後ろを向いて立っていた。


「おい、このリザドルトを倒したのはお前なのか」


 グランが話しかけるが返事はない。男に近づこうとするとシャルに腕をつかまれ引き留められた。


「ま、待ってくださいあれは人じゃないです」


 すると男が振り向いた。グランはその男の姿を見て背筋が凍った。確かにあれは人ではない。


「どうしてファントムがここにいるんだ」


 それは昔、人間が本来魔族しか使えない闇魔法を習得しようとしたときにそれは生まれてしまった。人間が闇魔法を手に入れるには魔族の魔力を含んだ血を体に流し込まなければならないがその強力な魔族の血と魔力に身体が耐えられなくなってしまい廃人になってしまった者のなれの果てがファントムである。ファントムには知性がなく無差別に攻撃をするのだがその攻撃は協力でファントム一人で村を壊滅させれるほどだ。逆に闇魔法を習得した人間を魔人と呼ぶ。過去に一人だけ魔族のい血と魔力に適合し闇魔法を手に入れ魔人になった人間がいるらしいが行方が分からなくなっている。


「じゃ、じゃあこの魔物は元人間なんですか」

「そう師匠から教えてもらったことがある」


 すると突然ファントムが魔法で炎の球を複数生成しグランとシャルに放った。その炎の球は黒い色をしていた。闇魔法を含んでいたからだろう。


「水よ我らを守る盾となれ、アクアシールド!」


 シャルは黒い炎の球をアクアシールドですべて防いだ。だがファントムの攻撃は終わっていなかった。今度はグラン目掛けて打撃を食らわせようとしたがグランはそれを剣で防いでファントムを押しのけ素早く剣を振りファントムの右腕を切り落とした。


「グルロゥガァァァ!」


 ファントムの叫び声が響き黒炎の球が降り注ぐがシャルはそれを防ぎ続けている。


「も、もうこれ以上は耐えられませんシールドが限界です」


 黒炎の球を防ぎ続けていたアクアシールドにひびが入り壊れかけていた。


「分かった、あとは俺がやる」


 グランは剣を握り直しファントム目掛けて走り剣を振った。剣先はファントムの首筋を捕らえ斬りつけた。だがその剣筋は浅く決定打にならなかった。


(迷うな殺せ、あれは魔物だここで躊躇すれば俺たちが殺されるんだぞ)


 グランは自分にそう言い聞かせ次はファントムの身体を斜めに斬り裂き息の根を止めた。


「あいつはもう人間じゃないただの魔物だ・・・もう時間か、村に帰ろうシャル」


 グラン達は林を後にし村へ帰った。村にはすでにグラン達以外のクラスメイトが集まっていた。


「あ、グラン君だ」

「やっと帰ってきたか」

「あんた、いったいどこ行ってたのよ」


 村へ帰るとメリアたちが待っていた。


「いやー魔物を探しにそこの林まで行ったら強い魔物に出くわしてちょっとてこずってて・・・」

「てこずっててじゃないわよ一人で勝手にどっか行って」

「一人じゃないシャルと二人だったよ。なぁ、シャル」


 グランは後ろに隠れているシャルに話しかけると「うん、うん、」と必死に首を縦に振っていた。


「俺の後ろに居ないで隣に来いよ、こいつらは悪い奴じゃないからさ」

「う、うん。え、えっとシャル・メルバですよ、よろしくお願いします」


 シャルはぎこちないながらも三人に挨拶をした。


 そして課外実習が終わり学園へ帰ったころには日が落ちていた。


 _____________________________________


「どうだ、そのファントムは使えたのか」

「えぇ、ですがまだ改良の余地はあります」


 夜の林の中、眼鏡をかけた男と少年が地面に倒れているファントムの前で話をしている。


「そのファントムもまだ使えそうですし持って帰りますか」

「こいつまだ使えんのかよ、もう死んでるもんだと思ってた」

「ファントムの数には限りがありますからね一体一体大切にしないといけません。それに亡命の宝玉を使えば蘇りますよ」

「ハハッ、恐ろしいね」

「さぁ、帰りますよ」


 そして少年はファントムと男を影で包み込み姿を消した。


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