第4話 剣の使い手
夢を見た。この学園に来てからいったいどれだけの夢を見たのだろうか。最近は夢の中の声も聞こえるようになってきた。
魔王城の中に魔王とその四人の配下の影が伸びている。
『魔王様もう間もなくこの城は勇者の手により落とされてしまいます。どうか我々に出撃許可を。必ずあの忌々しい勇者を葬り去ります故どうか』
低い男の声が後ろから聞こえたが聞き覚えのある声だった。声のする方へ振り返るとそこで今回の夢は終わってしまった。
目が覚めたグランはいつものように身支度を整え学園へ向かった。
「グラン君今日はなんだか楽しそうだね」
「だって今日は剣を振れるんだぜそんなの楽しいに決まってんだろ」
隣の席のメリアと話しをしていた。今日は剣術か護身術のどちらかを選べる授業がある。この授業は魔法が使えなくなった時の攻撃手段として昔から教えているらしい。
グランとエルドは剣術、メリアとユナーラは護身術を選択している。グランとエルドは修練場へ移動した。
授業が始まり練習用の木剣を持ったグランとエルドはさっそく剣を振り始めた。
剣の大きさは三種類あり機動力に優れた短剣、万人受けする標準型の剣、扱いが難しくとても重い大剣がある。
その中でグランは標準型の剣をエルドは短剣を使っている。
「振りが遅いぞエルドそんなんじゃいつまでたっても俺に一撃すら入れれないぞ」
「お前すばしっこいんだよおとなしく一撃当てさせろ」
グランは軽い身のこなしでエルドの剣を避け続けている。どれだけエルドが距離を詰めて短剣を振ろうとその短剣はいつまでたってもグランには届かない。届いたと思っても弾かれる。これを何度も繰り返していた。
「だぁー無理だ、お前強すぎるんだよ」
「今の俺じゃ魔法で歯が立たないからな今だけいい思いをさせてもらう」
「なら、次の魔法学の時覚えとけよ」
「悪かったから許してくれ」
調子に乗っているグランをたった一言で黙らせた。
「せっかくの剣を振れるんだから強い奴と剣を交えたいよな」
「お前より強い奴なんていないだろ」
そんな話をしているとある男から話をかけられた。
「なら俺と一戦交えないか」
グランの前に現れ声をかけたのはこの剣術の授業を担当する教師トルガナ・ヴァレトだった。
「いいですよ多分先生が一番強そうだし」
「それじゃあ真ん中まで移動するとしよう」
ふたりは修練場の真ん中へ移動した。
「おい、あの二人戦うのか」
「ヴァレト先生は学園随一の大剣使いらしいぞ」
「おーい皆、上の観覧席に移動するぞ」
生徒たちは一斉に二階の観覧席へ移動した。
「少々ギャラリーが多いが始めるとしよう」
ヴァレトは周りを見渡しながら練習用の木の大剣を手にした。グランも木剣を構えにらみ合った。修練所は静まり返り張り詰めた空気が漂っていた。
その空気を切り裂くようにグランは距離を詰め木剣でヴァレトを切り上げた。だがヴァレトは一歩後ろに引き攻撃を交わし大剣を振り下ろした。一進一退の攻防が続く。
「その剣技どこで身に着けた」
戦いのさなかヴァレトはグランに問いかける。
「これは独学だ誰にも教えてもらってない」
グランには魔術を教えてくれていた師匠のリアナ・クリアがいる。彼女も魔創の双剣で戦うが教えてもらったことがない。ただずっとリアナが戦っているところを見続けていただけだ。
(そんなわけなかろう。その剣技は俺がはるか昔《《あのお方》》に教えたもの、それをただの生徒であるグラン・フォーカスが使えるわけがない)
ふたりの戦いはより激しさを増していった。剣と大剣が激しくぶつかり合うたび両方の武器にひびが入り続けとうとう砕け散ってしまいそこで二人の戦いが終わった。
「これほどまでに剣を扱える生徒は初めてだ。良い剣士になれるぞ」
「それはうれしいが俺は魔術師になりたいんだ」
そうして剣術の授業が終わった。
「そういえばメリア、リィナはどうした」
「それが朝はいたんだけど途中からいなくなって」
「使い魔なんだからすぐ戻って来るわよ。さっ早くいくわよ」
グランとエルドはメリアとユナーラと合流し昼食を食べに食堂まで歩いた。
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「魔王様と同じ剣技・・・やはりあの男が魔王様のご子孫なのか」
「それはどうかしら、あの男は魔王様と違い闇魔法はおろかろくに魔法も使えないのよ」
誰もいなくなった修練所に二人いや、猫と竜二匹の影が伸びていた。