第3話 魔法模擬戦
グランが学園に来て一ヶ月が経った。それでもまだ二百年前の勇者と魔王の戦いの夢を見る。だが最近この夢に変化があった。今までぼやけて見えていた夢がはっきり見えるようになり魔王に使える四人の配下の姿がはっきりした。左から上裸の龍人族、ナイフをくるくる回している黒猫の少女、白髪の老魔導士、 弓使いのエルフの青年の姿を見て夢から覚めた。
「おい、起きろ」
エルドの声が脳内に響く。
「ねぇ、またあの夢を見たの?」
薄っすらと目を開くとメリアとエルドがいた。
「んぁ、まぁそんなとこ」
あくびをしながらグランは答える。今は授業が終わったところだ。
「次の授業って何だっけ」
「魔法模擬戦だよ」
魔法模擬戦は月に一度魔法学の授業の一環で行われる魔法のみ使用が許されてる。そんな模擬戦が今日行われるらしい。
グラン達はさっそく魔法模擬戦が行われる場所まで歩いた。
「グラン君相手誰だった」
「今回の俺の相手は・・・ユナーラ・ロルナか」
「彼女は学年屈指の氷魔法の使い手だから魔法がまともに使えないお前じゃあ話にならないな。」
ユナーラ・ロルナは名家の娘で氷系の魔法を扱うのにたけておりその実力は学年トップクラスの持ち主だ。模擬戦の順番はメリアが一番目、エルドが五番目グランが最後にある。
「これから魔法模擬戦を始める。ルールは相手を降参又は私が危険と判断したらそこで決着とする。では一組目前へ」
魔法学の担当教師であるレヌル・ドライが一組目を呼び魔法模擬戦が開始された。
メリアはリィナとともに戦い、エルドは圧倒的な魔力で圧倒しグランの番がだんだん近づいてきた。
「相手は氷魔法を使って来るのか。俺も炎魔法が上手く使えたらいいんだけどな。今はロウソクと同じくらいの炎しか出せないし・・・あ~剣が使えたらなぁ・・・あっいいこと思いついた」
グランは魔法が上手く使えないことをぼやいていたが何か思いついたようにニヤリとした。
「エルド、俺がユナーラに勝ったら食堂で期間限定パフェおごってくれ」
「どうした急に。まぁ、万が一にもそんなことがあったらパフェでもなんでもおごってやるよ」
「もしかして何か秘策でもあるの」
「それは見てのお楽しみだ」
そうこうしているうちにグランの番が回ってきて模擬戦が始まった。
「あんた魔法がどうしようもないほど下手って聞いたけどどうしてそんなに自信ありげな顔してるの」
「俺はいつでも自身に満ち溢れてるからな、当然だ」
グランは腕を組み胸を張る。
「そう・・・【アイスランス】」
ユナーラがため息をした後に放たれた【アイスランス】は目にもとまらぬ速さで飛んでいきグランの頬をかすめた。
(うおぉぉあっぶねぇぇぇ)
「どう?今ので降参したくなった」
「馬鹿言うな降参なんかするわけないだろ。期間限定パフェがかかってるんだぞ」
「くだらない・・・」
ユナーラが杖を振り下ろすと無数の【アイスランス】がグランを囲い容赦なく降り注いだ。あまりの【アイスランス】量にグランは避けれるはずもなく直撃しその場は静まり返った。
レヌル・ドライが降参の判定を下そうとしたその時だった。降り注いだ【アイスランス】の山の中から傷だらけになったグランが現れた。その右手には炎が纏われていた。
「あんたしぶといのよさっさと降参しなさい」
「言っただろ俺は降参なんてしないしそれにまだ俺には奥の手があるからな」
「何をしようがあんたの魔法は私には届かない!」
再びユナーラは大量の【アイスランス】を正面からグランに撃ち放った。グランは無数に飛んでくる【アイスランス】の一本を炎を纏った右手でつかみユナーラ目掛けて走り出した。
「俺の魔法は届かなくてもお前の魔法で攻撃が届く」
グランは手に持った【アイスランス】をユナーラの喉元に突き付けた。
「・・・降参よ」
悔しそうな顔をしながらユナーラは杖を持っている手を降ろし降参を宣言すると周りから歓声が響いた。
そして月に一度の魔法模擬戦が終わった。
「ん~やっぱりパフェは美味いな~」
「まさかホントにグランが勝って俺がおごる羽目になるなんて」
グランは魔法模擬戦が終わったあとそのまま食堂でパフェを食べていた。その場にはエルドとメリア、そしてユナーラが同じ席に座っていた。
「でもまさかメリアとユナーラが幼馴染だったとはな。ん?ってことはメリアも名家のお嬢様なのか」
グランはパフェを食べながら言う。
「そうだよ。わたしの家はユナーラの隣の家に住んでるんだよ。だから小さいころから一緒だったんだ」
メリアは嬉しそうに説明する。
「そんなことはいいからあんたもう一度私と魔法で勝負しなさいよ」
「別にいいけどこのパフェ食ってからな」
グランに負けたのがよほど悔しかったのかユナーラは再戦を申し込んできた。
パフェを食べ終えたグランは外へ出てユナーラとの魔法模擬戦が再び始まった。この魔法戦は日が暮れるまで続き完全に日が落ちた頃にはグランはまともに立てないほど疲れ果てていた。
そんなグランを引きずりながらエルドは寮へ向かって歩き出した。