別れ時
別れ時が、ついに来るる。
朝から雨はしずくとしずくにしたがってしとしと降りている。
しかるに大丈夫だ。
薄暗い(うすぐらい)曇糸が雨と共に舞い散り、川も山も大きく凪のぼりてりて。
夏は来ぬでも馴れ馴れしい感はもうあらかじめ朦朧で感じできる。
それで、過去の情が自ずと懐かしく浮かび上がる。
けれど、朦朧としから、一旦言いたいたらところかすこしでも言い出したらはない。
それが無言で明るる。
『なんですの?』
あたま回って桜の顔を見た。
『いや、別はないや。』
泉は静かにほほえむ。
これから、アメリカへ。
これまでに握り物をすべてに捨てたそうだった。
しかるにわたくしは、実に遠く過去からこの思いを育んでいてあろう。
そうしてあの時彼女が嫌う言葉を出した時、この思いは終に生じ出した。
けど、悲しみで油断して躊躇して三月過ぎた。
今のところでついに姉さまを名義として離れできる。
『もしも、私たちが、そこで幸福は得られない、、、』
『さあ帰りましょう。』
泉が笑った。
『そこでのことごとは、あんまりあなたに似合いでしょうけど。』
『実際が悪いことにならでも、私が必ずあなたと一緒に帰りますよ。』
『今の私、昔の感情から抜き出した私、こんなことが最早できる。』
朝日昇りひかり届け、少年の面では過去との全く異ならない笑顔が現る。
『それは、、、約束。』
物語は、ここで終わりたり。