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第6話 ちゅう、しぬのだめ




ちょっとした騒ぎはあったが、その後は何事もなく馬車は進み、無事、ウォード家に着いた。


ウォード家は貴族位Aというだけあり、トワイライト王国の首都トワイライトでも中心街に宅を構えていた。


屋敷という表現がぴったりな大きな3階建の建物に、広々とした庭園まであり、庭園からはお城を見ることもできた。



『ダリア、妾のような庶民がなぜここに住めるのだ??』

『•••。そ、それはです。勘違いしてはならないのです。ここはあくまでウォード家、眩耀神様はあくまで居候なのです!!』

『い、居候!?そ、それは仕事を無くした男が女の家に上がり込むやつだろー??』

『•••』

『まあ、考えてみれば妥当じゃな。庶民だしな』



馬車から降りると、屋敷の前では祭りの護衛と同じ兵士が通り道を作っていた。

ミアナに抱っこされた妾がその道を進みながら屋敷の入り口に辿り着くと、ドアの前で男1人と少女が1人立っていた。



「ようこそおいで下さいました。私は、ダニー•ウォードと申します」

「娘の、ルルー•ウォードでございます」

「こちらこそ、お出迎えありがとうございます。私は執事のコルネと申します。こちらは世話役のミアナ、そして、抱っこされていますのが•••」

『リリーナじゃ!!』

《現実:りりなでしゅ》


「おお、1歳とお聞きしておりましたが、まさか御自分で名乗れるとは。さすが姫様ですね。どうぞ、ご自分の家だと思ってお過ごし下さい」

『よい心がけじゃぞ』

《現実:あいやとう》




それから屋敷の中を案内され、滞在中使用する部屋に案内された。

その部屋はこれまで過ごしていた家より広く、中央には大きなベッドが置かれ、机や椅子、調度品も置かれていた。



『居候にこんな良い部屋を与えるとは、ダニー•ウォードは良いヤツじゃな』

『ま、まあ、です』



ミアナは妾をベッドに置くと、コルネとダニーと3人で何やら話し始めた。

そういえば、リカルドは屋敷に入ることなく帰って行ったな。

まあ、引越し屋なら当然か。



それにしても、このベッドはフワフワで今にも寝てしまいそうだ。


眠い目を擦っていると、ダニーの娘のルルーがベッドの近くまで来て、妾をじっと見つめているのに気づいた。


妾はベッドの上から手招きすると、ルルーは一瞬で満面の笑顔を作り、ベッドまで駆け寄ってくる。



『娘。お主は何歳なのじゃ?』

《現実:なんちゃい?》


「来週の誕生日で5歳になります」


『そうかそうか。めでたいのー』

《現実:おめいとう》


「リリーナ様。ありがとうございます」



妾にお礼を言ったルルーだが、誕生日の話になった途端、少し表情が暗くなった。

居候且つ年下の妾のことを馬鹿にすることなく、礼儀正しく殊勝に接して来たルルーがこんな暗い表情をすると、どうしてか気になってしまう。



『よろしい。何があったか申してみよ』

《現実:どちた?おはなちしゅる》


「お話を聞いて下さるのですか?」


『構わんから話してみよ』

《現実:うん。はなちて》



暗い表情になっていたルルーは笑顔に戻り、ベッドに座っている妾の隣に来た。



「あのですね、実は、お母様が病気なんです•••」

『病気じゃと!!』

《現実:びょーき?》


「はい。もう、ずっと苦しそうにしてて、わたし、わたし•••」



妾は自然にルルーの頭を撫でる。

妾なら治すことは容易いだろうが、そう簡単に人のレコードを編集することは•••。



「そうですか。そうなりますと、やはりパーティーは中止した方がよろしいかもしれませんね」

「コルネ様もそう思われますか。分かりました。今から連絡すれば、招待したお客様にも間に合うでしょう」



コルネとダニーは堅い表情で何かを話している。


「お母様が病気なので、来週の私の誕生日パーティーは中止になると思います」


『な、なんじゃと。パーティー?』

《現実:ぱーり?》



『おいダリア。パーティーとは、飲み会のことであろう!?』

『少し違う気もしますが、飲んだり食べたりする意味では、同じ、です』



遂にこの時が来た。

人間体験を開始して9ヶ月。

そもそも、妾が人間体験を始めたのは神様シンが人間世界の食べ物やアルコールが美味いと聞いたからなのだ。


《第1話で否定してましたけど、自分で飲み食い目当てって、認めた、です》



それがこの世界にきてから、やれ乳だ、やれ離乳食だ、そんなものしか食べていない。


そんな妾に、やっと飲み会の機会が訪れた。

絶対に中止になんてさせない。



『絶対に中止になんてさせぬぞ!!』

《現実:ちゅう、しぬのだめ!!》



妾は無意識の内にベッドの上で立ち上がり、仁王立ちをしていた。



「り、リリーナ様?」

「どうされたのですか?」


ミアナとコルネは妾を不思議そうな顔で見てきた。



『母親の所に案内せい』

《現実:はは、あんないちゅる》


「リリーナ様。お母様の所に案内しろと言っているのですか?」


『そうじゃ』

《現実:ちょう》



妾はルルーの手を取りベッドから降りると、ミアナとコルネ、ダニーの間を通り抜けて部屋を飛び出す。



とととと(走っている音)



『どっちじゃ!!』

《現実:どってぃ》


「次の扉がお母様の部屋です」



妾はふふっと自然に笑うと、ノックもせずに部屋に入った。

部屋の中は広さこそあるが、カーテンが締め切られ、ベッド以外の余分な物が置かれておらず、どこか陰鬱な感じだった。


ベッドの上には大人の女が寝ており、苦しそうに呼吸しながら、侵入者である妾達を見てきた。


この女がルルーの母親であろう。

髪色は金色で、目の色は青。ルルーと同じであった。



「はぁ、はぁ、も、もしや、リリーナ様ですか?」


『いかにも』

《現実:あい》


「こ、こんなお姿で、申し訳ありません」



『ダリア、こやつの病気はなんだ?』

『重い肺炎、です。この世界では薬はなく、治癒魔法でも治せない、です』

『肺炎?その程度なら、妾の治癒魔法で充分じゃな。レコードを直接編集する必要はない。まあ、飯のためなら幾らでもレコードを編集するがな』


《まあ、レコードを作れるのも、編集できるのも悪神様だけですから、も、文句は、ないです•••》



その時、妾を追いかけてコルネ、ミアナ、ダニーが慌てて部屋にやって来た。

妾は関係なくルルーの母親が寝ているベッドに近寄り、そのままベッドに飛び乗る。



『グラン•リペア』

《現実:ぐやん、りぴや》



ルルーの母親を金色の光が包み込み、やがて部屋中が光に包まれた。



「「リリーナ様ーー!!」」

「お母様ーー!!」

「ルーシー!!」



やがて光が収まると、先程まで苦しんでいたルルーの母親であるルーシーがベッドから上半身を起こし、その横で仁王立ちしている妾がいた。


ルーシーは、何かを確認するように自分の体を手で触って、苦しみも痛みもないことが分かった時、涙を流した。



『中止になどさせぬ!!』

《現実:ちゅう、しぬのだめ!!》



「死ぬのは、ダメ•••」

「ああ、リリーナ様が神の力で私を治して下さったんですね」



ルーシーはそう呟くと、人目を気にすることなく嗚咽した。

走り寄ったルルーとダニーは、ルーシーを抱き締めると同じように泣いていた。



「ああ、リリーナ様。また、神の奇跡を起こしたのですね」

「爺はもう、涙で前が見えません」



その後、落ち着きを取り戻したルーシーとダニー、ルルーは妾に何度もお礼を言ってきた。




▪️本作品について

赤ちゃん、幼女を主人公とした作品を初めて作ってみました。

皆さまは、こういった作品は好きでしょうか?


是非、感想や★マーク、どんな形でもいいので教えて下さい♪


また、今後の更新間隔は現段階で未定のため、ブックマーク後に通知機能をONにして待っていていだけると嬉しいです⭐︎



▪️眩耀神様が登場する他の作品

https://ncode.syosetu.com/n4490hn/

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