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第2話 何かがおかしい




妾の目に映っているのは、薄汚れ、所々穴の空いている天井。



『どうやら、無事転移できたようだな』


『転移先の器は、確か生後3ヶ月の女の赤子だったはずだ』


『生後3ヶ月なら、もう立てるだろう』



んっ

ほっ

とっ



『うん?体が動かせんぞ。おいダリア、見ているか?』

『はい。眩耀神様』

『生後3ヶ月というのに、赤子の体が動かせんのだ』

『げ、眩耀神様。確かに生まれて直ぐ立てる子もいるかもしれませんが、やはり、個人差があるのです』

『個人差か。この器はハズレのようだな』


《ごめんなさい。眩耀神様と元の赤ちゃん》



手足は思うように動かせないが、目だけなら少し動かせそうだ。

目線を下に向けると、妾の視界の先に、人間が2人いて、何やらこちらを見ながら話している。



「どうしてあんなにかわいいリリーナ様がこのような目に遭わなければならないのでしょうか•••」

「私も同じ気持ちですよ。ですから、こうして付いて参ったのです」



声から男と女だということが分かった。

ただ、この2人がどうして妾を見ながら悲しそうな顔をしているのかが分からない。



妾は再び、視線を天井に戻した。


『庶民とはいえ、ここまで酷い家に住んでいるとはのー』


《眩耀神様は王族を庶民と勘違いしていますが、ダリアの認識も間違っていたのです?王族の子に転移したはずなのに、どうしてこんなにボロい家なんです?》




「おや、目が覚めたのかな?」


妾の声が聞こえたのか、男が反応し、女を連れて近づいてくる。

そして、妾の元に来ると、2人とも妾を見下ろしてきた。


この神よりも偉く高貴な悪神に向かって、たかが人間如きが上から見下ろすなどあってはならぬことだ。


後悔するがいい。

妾の【不敵な笑み】を使って、お前達を石にしてくれよう。



悪神:『ニヤリ(不敵な笑み)』

現実:《にまぁ(天使の笑み)》



「まあまあ、なんて素敵な笑顔なのでしょうか。かわいい、ではなく、美しさすら感じます」

「おお、また笑顔を拝見できるとわ。爺は幸せです。おや、顔色がいいようですね?」

「ほ、本当です!!」



女が妾の額や脇の下を触ってくる。

この眩耀神に向かって何と無礼なことをするのだ。

しかし、このハズレの器の所為か、【不敵な笑み】が発動せず、こやつらに反撃できぬ。



「お、お熱が下がっています」

「な、なんと、生死を彷徨っていたというのに•••、あぁ、神よ感謝いたします」


2人は手を取り合って喜んでいる。

妾には何を喜んでいるのか分からぬが。



『ダリア、この2人は何なのだ?』

『はい、眩耀神様。この者達は、乳母と執事のようです』

『乳母?執事?それは何なのだ?』

『乳母は、生みの親に代わってお乳をあげる人で、執事は、う〜ん、ダリアみたいな人です』

『庶民というのに、随分贅沢だのー』



それにしても、この2人は随分妾のことを見て喜んでいるな。

今は2人とも泣いているし、この赤子に何か起こっていたのかもしれんな。



『ダリア、何か分かるか?』

『はい。眩耀神様のように未来を見たり、人生そのものを生み出したりはできませんが、ダリアでも過去は確認可能なのです』

『うむ、頼む』



『はい、調べ終わりましたのです。眩耀神様が器として転移した赤ちゃんは、リリーナという名で、本来は少し前に死ぬことになっていたみたいです』

『ほう』

『しかも、乳母と執事は気づいていませんが、リリーナは毒を盛られたようです』

『何と』



妾がリリーナに器を決めた際、確かに死期が迫っている表示がされていたな。

だが、悪神であり、毒等、あらゆる状態異常が無効な妾が転移したことで、この器は元気を取り戻したということだろう。



『それにしも毒とは、庶民も悪よのう』

《••••》



乳母と執事は、妾を抱き上げると、優しく抱きしめてきた。

妾に触れるなど、人間如きに許される権利ではない。

どうしてくれようか。



「リリーナ様。美しい美しい、リリーナ様」

「なんと可愛らしいのでしょう。元気になられて本当に良かったです」



『う、美しい?か、可愛らしい•••?

この言葉は知っているぞ。ダリアもよく妾にそう言ってくるからな』

『そう、です。ズバリ、その2人は、眩耀神様のあまりの美しさと可愛らしさに参っているです』

『そ、そうなのか•••。まあ、今回は大目に見てやるかの』



2人はしばらく妾を抱っこした後、乳母は妾に乳を飲ませ、執事は机で何やら書き物を始めた。

それにしても、ダリアに教えてもらったが、この乳というものを飲まなければ赤子は育たないのだな。


まあ、不味くないからよいが。




「おや、また雨漏りでしょうか?」


書き物をしていた執事が天井を見上げると、穴の空いた場所から水が滴っていた。



ふむ

妾を褒めてくれた礼に、直してやるかの



あれ位なら、【不敵な笑み】より神気を使わないで済みそうだから何とかなるだろう。



妾が瞳に神気を込めると、左目が一瞬、元のリリーナの目色である青から黄色に変化する。

その瞬間、天井に空いた穴がみるみる塞がり、雨漏りは止まった。



「あ、雨漏りが急に•••」

「天井の穴が無くなっています」


『妾にはかかればこれ位•••、なんで•••も•••』


「あらあら、リリーナ様はおねむなんでしゅねー」



妾の意識は次第に無くなり、どうやら眠りについたようだ。

次に目を覚ましたのは、恐らく、この世界の時で数時間後だろう。

妾のお腹から「ぐぅぅぅ」という妙な音が鳴り、知らない間に目を覚ましてしまったのだ。


それにしても、神気を少し使っただけで眠りに入るとは、この器はなんと脆いのだろうか。


『徐々に慣らしていく、のです』

『それしかあるまいな』

『あっ、お乳の時間みたいですよ』


「リリーナ様。お腹がしゅきましたねー」

『な、なんだその喋り方は、無礼な!!』

《現実:あ、あい。たーいの》


「まあまあ、本当にリリーナ様は可愛いでしゅねー」

『く、少し優しくしてやれば調子に乗りよって!!』

《現実:と、とあたたなにゃの》



『眩耀神様、キュンでーす、なのです』

『ダリア、何だそのおかしな言葉は!?』

『神のシン様に聞いたのです。可愛くてキュンキュンするという意味で、あちらの異世界でも流行っている、らしいのです』

『ほ、ほう。妾もやってみるか』



妾の目線の先には、乳母と執事がいる。

ちょうどいい。

異世界で流行っている最先端の言葉を授けてやる。


『キュンでーす!!』

《現実:きゅん、なの》



「「か、かわいいーーー!!」」





▪️本作品について

赤ちゃん、幼女を主人公とした作品を初めて作ってみました。

皆さまは、こういった作品は好きでしょうか?


是非、感想や★マーク、どんな形でもいいので教えて下さい♪


また、今後の更新間隔は現段階で未定のため、ブックマーク後に通知機能をONにして待っていていだけると嬉しいです⭐︎



▪️眩耀神様が登場する他の作品

https://ncode.syosetu.com/n4490hn/

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