夏休み 兄帰省
更に2ヶ月が経過し夏の季節が巡ってきた。
兄は今年から、王都にあるアーレス騎士学校に入学しており、夏休みになったので明日到着する予定であることを事前に手紙で知らせてきていた。
久し振りに家族で過ごせることから、両親は落ち着きがなく、あたふたと兄を迎い入れる準備に勤しんでいた。
翌日、昼過ぎに玄関のドアが開き目をやると「ただいま~」と大きく張りのある声が響き、光りを背に兄が佇んでいた。
父と同じ、赤い髪に紅い瞳、顔つきは短期間のうちに精悍になり、体格も一回り大きくなっている様な感じがした。
「兄ちゃんおかえり~」
「サイモンお帰りなさい」
「元気そうでなりよりだ」
姉と僕、母、父がそれぞれに声をかけた。
「疲れたでしょ」
「さあ~早くお掛けなさい」
母は、兄の腕を引っ張り、そそくさと席に着かせた。
母は、家族全員に紅茶を出し一息つくと「学校はどう?」
「慣れた?」
「虐められたりしていない?」
心配そうな顔つきで尋ねた。
「濃密な授業と訓練で虐められる暇がないよ~」と兄は笑いながら答えた。
「ダンジョンでの訓練で、ミノタウロス複数体と遭遇して死線を潜り抜け討伐出来たよ~」
「お陰でレベル2にランクアップ出来たよ」
ニヤニヤ笑う兄に、父母は顔面蒼白で
「余り無理するな」
「そうよ、無理してはダメよ」
「そうだね、今回は自分も運が良かっただけだと思っている」
「もっと慎重に行動して危険を回避出来る様にならないとね」
真顔で兄が答えた。
「皆の顔を見たらお腹が空いてきたなあ~」
ニヤニヤ顔の兄を見ながら母が
「腕によりかけて晩御飯を準備するわね~」
と言いながら台所へとパタパタとかけていった。
その晩は、何時もより少し豪勢な食事と家族の語らいで夜が更けていった。