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これはアタシが彼に恋をする話

かわいいっていいよね。

このツインテール、かわいいでしょ?

この豆柴アクセもかわいいし、スマホの待受画面の豆柴もかわいいでしょ?

この制服は……この辺の高校の中で一番かわいいかなぁ?って思ったんだけど、う~ん、かわいいけど、ちょっと物足りないかなぁ。

アタシはアタシの周りを全部"かわいい"で埋め尽くしたい。

友達もかわいい方がいいし、かわいくない子はかわいくする。

でも、もちろん押し付けるっていうかわいくないことはしないよ?ちょっとアドバイスするくらい。

やっぱり女の子はかわいくないとね。

せっかくの三年だけの高校生活をかわいくいきたいじゃない?

あ、ごめんごめん。はじめましてだよね。

はじめまして。

私はかw……ゲホゲホッ!!かわいッックション!!

……はあ……もういいや。

とにかくアタシはかわいいものが大好きな現役女子高生!!

今年入学したばかりの一年生!!

私の周りにはかわいいが溢れてる!!

でも、たった一つ。

たった一つだけ無いものがある。

それは"カレシ"。

4月の終わりごろスッゴいイケメンの人にナンパされたんだけど、その人スッゴい背が高くて、カッコいいんだけど、かわいくないからって断ったんだ。

ああ、どこかにかわいい男子いないかなぁ~。そんなことを毎日考えてた。


だけど、見つけた。


桜がほとんど散って、青い葉っぱの割合が増えてきてかわいくなくなった頃。

私はいつも通り電車に乗って登校中。

代わり映えしない毎日の風景が、その日は特別な風景になった。

だって、運命の出会いを見つけたんだもん。


「な、なんだ、君は!?」


「ちk……」


「なに!?いいから放せ!!」


「は、はは、放すもんか!!この痴漢野郎!!」


そう、あの痴漢騒動!!

その痴漢を捕まえた"彼"!!

小柄で制服の上からでもわかる細身な体。

必死に痴漢を放すまいとしながらも恐怖で震える姿。


まるでチワワみたい!!


声も震えているし、今にも泣き出しそうな目!!

かわいい!!

かわいい!!

かわいい!!

かわいい!!

かわいい!!

かわいい!!

スッゴくかわいい!!

これってぜったい運命!!

でも、落ち着くのよ、アタシ。

いくらアタシがかわいくても普段話さない人からいきなり告白やデートの誘いなんて警戒されちゃう。

ここは少し奥手に……そう、電車や学校で挨拶する程度にしておこうかな。

それで徐々に仲良くなって、いろんな雑談していけば……100日で恋愛成就(オト)せる……!!



ううん、100日で恋愛成就(オト)してみせる!!



って息巻いていたんだけど、思わぬジャマな存在がいたんだ。

そう、あの女巨人先輩。

何で電車に乗ってくるといつもいっつもアタシのキュートなオタク君の後ろに入り込むの?

ほら、あなたがそこに入り込んだせいで、オタク君が大変そうじゃない!?

オタク君もオタク君!!わざわざ女巨人先輩を入れなければ…………ああ、そういうこと。

アタシは気付いた。

アタシはあの日以来電車内の二人の様子を観察して、確証を得た。

あれは壁だ。

あの女巨人先輩、オタク君の優しさに漬け込んで自分を守る壁を作らせているんだ。きっと「ボディーガードやって~」とか何とか都合のいいこと言って、誑かしたんだ!!

かわいくない!!

きっとオタク君はまだ自分が都合のいいように使われていることに気付いてない。

教えなきゃ!!

ああ、でもでも、何なの!?あの達成感に溢れた嬉しそうな顔!!

なんて、かわいいの!?

尊い!!

悔しいけど、もう少し様子を見ていようかな。

うん、そう!!これはあくまでも"観察"!!

オネエさんも言ってた。


「好きな子に好かれるには、まず相手のことをよく観察して、よく知ることよ」


だから、アタシは観察を続けた。

オタク君の好きな漫画、ラノベ、アニメ、ゲーム。

さすがに全部を網羅することは出来なかったけど、アタシも同じ作品を読んだ。

あとはタイミング。

あまり周りを気にしないで作品について語り合える場所に行って、二人っきりで過ごしてこう言うの。


「こんなに気が合う人、アタシ初めて」


そうするとオタク君はこう言うの。


「ボクも……こんなに気が合う人は初めて……です。あ、あの良ければ、ぼ、ボクと……付き合って……ください……!!」


クゥ~!!たまんねぇぜ!!

……コホン。

でも、そんな日はなかなか訪れない。

だって、登下校中はオタク君は女巨人先輩と一緒にいて話せない。

学校で挨拶しようとしてもアタシの周りにはいつも友達がいて、なかなか声を掛けられない。

でもでも、アタシはぜったい諦めない。チャンスはきっとあるって信じてる。



あれから、しばらく"観察"を続けてるんだけど、ある日を境に、オタク君の顔から笑顔が消えた。

何かあった?

ううん、たぶん気付いたんだ。

"自分が都合のいいように使われていること"に気付いたんだ。

決定的だったのは、中間テストを目前に控えたある日の登校中。

いつも通り壁役をさせられているオタク君の顔色が急に青ざめた。

でも、オタク君が制服の右ポケットに入れているスマホを確認すると、安心したように顔色が元に戻った。

何があったんだろう?

電車が駅に到着すると女巨人先輩はそそくさと下車して、オタク君は……


「あ、まっ……」


何か言おうとして、あわてて口をつむいだ。


チャンス到~来!!


何があったのかはわからないけど、少なくとも二人の関係に溝が入ったのは、まちがいない。

あとは、いつどこで声をかけようかな?

ふふふ♪

お話するの楽しみだなぁ♪

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