夢で逢えたら
「おじいちゃん来世でも一緒になれるといいですね」
そう言われて僕は目を閉じた。
今まで生きた90年の人生を走馬灯のように思い出していく。
この世に生をなした時まで遡ると、思考すらも真っ暗になった時、視界が開けた。
照明の光が妙に眩しい。
「お疲れ様です。以上で人生仮想シミュレーションゲームを終了いたしました。またのご利用お待ちしております」
西暦2040年、加速装置と仮想現実が発達したこの世界では加速型VRMMOが流行っている。
先程まで僕が体験していたのは人生シミュレーションだ。
1時間で90年を体験する、今の技術がなければできないことだ。そして只のシミュレーションではなく、オンライン型シミュレーションなのである。登場する人物は全員シミュレーション体験者だ。
仮想世界で俺こと佐藤成海が70年人生を共にしたのは小宮涼奈という人物だ。
このゲームの一番のデメリットは実名でしかプレイできないことにある。
それにしてもお腹が減った。仮想世界では90年分の食事をしたが、この世界の自分は空腹だ。
ゲームセンターの近くのファミリーレストランで食事することにした。
その時の気分でオムカツとドリンクバーを頼もうと、呼び鈴で店員さんを呼んだ。
何処かで見たことがある雰囲気の女性の店員さん出てきた。
名札に記されていたのは小宮涼奈という文字。
僕は頼もうとしていたメニューを変更して、大盛りナポリタンとメロンソーダフロートを注文した。
もし彼女がそうであるならばこの暗号ほどではない秘密を解けるはずだ。