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8.ゲームマスター

 だ、()()が大浴場に入ってくる。


 女子か? もしかして、山下さん?

 そんな後先を考えない謎の期待を僕はしてしまっていた。


 と、と、扉が開く。

 扉の開いた先には、上半身裸のピエロ男が腰にタオルを巻いて大浴場の入り口で立っていた。

 はぁ? 誰、コイツ? 男の純情を踏みにじりやがって!!


「チェンジで……」と、僕は間髪入れず口に出した。


「おっーとー!!

 お風呂の入りに来た我輩を一目見るだけでチェンジ発言は非常に残念だねー」


 ん? どこかで聞いたことのある声だな?

 どこだっけ? と、軽く考え込んだ。


「おおよその所、(なんじ)はダンジョンに入る前に朝風呂でも入って気持ちを落ち着かせようとでも考えていた。

 そこに誰かが入ってこようとしたものだから、女性じゃないかと期待したところにゲームマスターの私が半裸で出て来て、非常に気を落としている少年よ」


 あっ、そうだ!! この声は謎の声の主だ。


「お前が、この状況作った元凶か!!」と、声を上げて僕はピエロ男に殴りかかるため立ち上がった。


 大きく水音を立て、水面を割りながら僕はピエロ男に近づく……

 そして、湯船の出口手前でピエロ男が話を続けた。


「おっと、少年よ。私に攻撃を加えても無駄だよ……

 今ここにいる私は、ただの映像だ。私は君と話をしに来ただけだからな」


 うーむ、せっかくあったまったというのに中途半端な状態で、湯船から出るのも癪だな。


 そうだ……

 【アイテムボックス】から、いつもの木の棒を取り出しピエロ男に全力で投げつけた。


 ピエロ男のいうとおり、ピエロ男をすり抜けてコーンと音を立てて大浴場のガラスに当たった。

 しかし、ガラスには傷一つ付いてなかった。

 ガラスも割れないこの武器の存在価値って…… 違う違う、それよりは目の前のピエロ男だ。


「おっと、武器を投擲してくるなんて、私は歓迎されてないみたいだねぇ。

 あぁ、そうか君は山下さんが好きなんだってね? それなら……」と、ピエロ男がバスタオルを巻いた山下さんへと姿を変えた。


「これで、私と話す気になったかい?」


 僕は山下さん(仮)のバスタオル越しに見える女性特有の体の曲線(ライン)が気になりつつも話を進めた。


「話はしてやる。その姿じゃなく元の姿に戻してくれ」


「君が期待してたから、姿を変えてやったのに仕方ないねぇ。

 君もワガママだねぇ」と言って、ピエロ男は姿を元に戻した。


 姿を戻したピエロ男に、僕は間髪入れず質問を行なった。


「まず僕から、質問させてもらう。

 なぜ女性のいや、山下さんのお風呂姿に化けることができる?」


「そんなの簡単だよ……

 この世界で起きる事象全て僕は把握できているんだ。

 ゲームマスターだからね」と、ニヤリとピエロ男が笑いながら返答してきた。


「そうか、それなら全て筒抜けってことか。

 それで僕に対しての要件はなんだ?」


「それは簡単なことさ?

 なんで君達は()()()()()をまっとうしないんだ?」と、ピエロ男は質問してきた。


「クソが、、わかってる癖に!!

 僕達に人殺しが出来る訳ないだろ!!」


「それでも、もし全員が無事にこのダンジョンをクリアできたら……

 君達、【人狼】はココに取り残されちゃうんだよー? そこの所は理解できてる?」


「たとえ、そうだとしてもクラスメイトに手をかけるなんて出来ないよ」


「まぁ、私はそれでも良いんだけどね!!」と、あっけらかんにピエロ男は返答してきた。

「それじゃ、また次に話できる機会を楽しみにしているよ」と言って、ピエロ男は消えていった。


「クソッ」と言って、僕は水面に拳を叩きつける事しか出来なかった。


 ピエロ男との初の遭遇があり困惑している部分はあるが……

 身体は温まったので風呂から上がり、困惑している気持ちを切り替えて佐々木達と合流することにした。


 僕はいつも通りに「おはようー!!」と、教室にいる佐々木と鍛冶屋の金子に声をかけた。


「はいはい、おそようおそよう。

 もう小西達は探索に出てるよ。金子君を待たせてんだから少しは早く起きようぜ?」


「チッチッチッ!!」と、僕は指を振って佐々木に反論した。


「起きてはいた!!

 一時間程、風呂に入ってただけだ!!」と、ドヤ顔で宣言した。


「あー、ハイハイ」と、佐々木がいつものように流してきた。


「あー、ゴメンね。 金子君。

 せっかくできた風呂だったからし、使わないまま探索いくのももったいなくてね。

 僕達の稼ぎでできた大浴場だし、やっぱり使っておきたいし」


「あぁ、良いよ良いよ。

 あれだけの時間探索を続けてるのが原因で、探索スタートが遅れるくらいなら余裕で目を潰れるし。

 何より稼ぎの大半を市民班に渡してもらってるし、オレは小西達より君達を評価してるよ」


「へへっ、だってよ。佐々木」と、嬉しかったので佐々木に言った。


「そうは言っても、遅刻して良い理由にはなんないよな」と言って、佐々木は僕に釘を刺してきた。


「へいへい」と、いつもの調子で僕は返事した。


「僕はすでに金子君から装備を渡してもらっている。

 早く拓郎も、装備を受け取って探索に行こうぜ。

 三日間って、制限つけられたんだし」


 ぐぬぬ、そう言えばそうだったな、制限とかしょうもない事しやがって。


 金子が佐々木に促されて新装備の説明を始めた。


「とりあえずは、全身用の防具を揃えて、次に今まで使っていた剣の上位装備を用意したよ。

 あと、弓をこの前拾ってたみたいだから、属性矢と通常の矢を一通り用意しておいた。

 とりあえず、装備としてはこんなもんかな」と言って、金子はテーブルに装備一式を置いた。


「おう、サンキュー」と、言いながら僕は装備を身につけていった。


 金子の用意した装備を全てを身につけた感想は、重くもなく軽すぎもせずちょうど良い感じだった。


「いいじゃない!!

 コレ装備して30階までチョチョイっていてくるわ」と、意気揚々に探索に出かけようとした所でストップがかかった。


「はい、ストップ!!

 人吉(ヒトヨシ)はコレをつけておくように」と、懐中時計みたいなアクセサリーを金子から手渡された。


「えー、つけんのコレ?」


「多少は防御力もあるから、良いじゃん?

 時間もわかるし、便利だと思うよ」と、金子が笑顔で答えてきた。


「しょうがないなぁ」と、言いながら僕はアクセサリーを首からかけることにした。

「制限時間を三日間で、セットしとけば良いんだよね?」と言って、アクセサリーに時間をセットした。


「コレで準備は大丈夫かな?」と、佐々木が言ってきたので。


「オッケー!!」と、僕は軽く返答しておいた。


「それと、このダンジョンなんだけど……

 一度行ったことのある階層は任意で指定できるみたいだから。

 前回の最終階の11階から、探索を始めようか?」


「へぇ、それは便利な仕様だこと。

 それじゃ、それでオッケー!!」


「よし、準備は済んだし。

 行くよ、拓郎!!」と、リーダーが出発の号令をだしたあと。


 教室の扉を開けて、僕達のパーティは11階の地に足をつけた。


「へぇ……

 ほんとにコボルトの住処マップの平原じゃん。

 小西達も到達地点も、このマップ付近って言ってたよな」


「まぁ、そうなんだけど……

 僕達のスタートが一時間以上遅いからね。

 小西達が先の階に行ってるかもね」


「まぁ、気楽にいこうや!!

 新装備の使い心地も試したいし」と、僕は佐々木の皮肉をスルーしておいた。


 そして、僕達のパーティのダンジョン探索が再開された。


 ……

 …………


 新装備の性能を試しながら、11階から15階まで探索を進めたところで今回の探索は終了した。

 結論から言うと、良い装備があれば探索は非常に楽だ……って話だ。


 属性矢があるので、遠距離からの射撃も使えるし……

 近距離戦でも新武器が十分に通用しているので、三日間の探索だったが十分に攻略を進めることができた。

 そして、僕の胸にかけていた懐中時計が指定時間を示したので、僕達は教室へと帰還した。

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