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57.ただいま

 視界が揺れる――そして視界が広がっていく。


 ココは何処だ? 何も無い、広いグラウンドみたいな場所だ。

 僕達の神隠しが起きた際に学校も消えてしまっていた。

 だから、ここは元学校のグラウンドだ。


 僕の視界に色々な人達が視界に飛び込んでくる――先生、生徒……様々だ。


 元学校があった場所に、たくさんの人たちが集まっていた。

 いや、神隠しにあった人間すべてが集められていた。


 金子と佐々木は無事か? それと、彩子て能丸の二人は?

 僕は溢れかえる学生の人混みの中、探し人を探し続ける。


 金子は、すでに学生では無い。

 30代前半の中年に片足突っ込みかけた男だし、目につけばわかるはず。


 混乱している状況を、先生らしき人物が収拾をつけようとしてくれている。


 あっ……。僕の担任の先生だ。

 金子も担任の存在に気づいて、担任の元に集まっていた。


 金子が僕の目の前に現れた。


「無事だったのか?」


「いや、多分……死んだんだと思う。

 ありがとう人吉……お前のおかげで家族に会える」


「あぁ、僕の方こそありがとう。

 金子が助けてくれたからこそ……この状況が生まれた」


 僕達はお互いに感謝をして、パァンと響く音をたててハイタッチをした。

 ハイタッチの音で、注目が僕達に集まったみたいだ。


 担任の教師が、


「人吉、 金子? キミ達は僕の生徒の二人かい?」


「「はい」」


「何がどうなってるんだ? 教えてくれないか?」


 先生が僕らに質問を投げてきたので僕が返答した。


「何処から話をすればよろしいですかね?

 ピエロ男が原因で、僕達は神隠しにあい……10年以上の時間を彷徨っていました」


「僕のクラスで、無事に脱出できたのは僕とここにいる金子。

 そして、山下さんと薮さんの四名です」


「そ、そうか……」


「無事、僕達が脱出が出来て11年、僕達は神隠しのことは考えないように生活してきました。

 しかし、ピエロ男の魔の手が僕達の家族にまで及ぼうとしていました。

 それを阻止する為に、僕と金子は自らの意思で再びダンジョンに潜りました」


「つまり、人吉と金子が私達を救ってくれたと?」


 僕は全てを語らずに、首を縦に振り頷いた。


「僕達が脱出してから11年と3年の月日が経っています。

 僕は既に33歳ですよ。先生と変わらない年齢になっちゃいましたね……」


「そ、そうか……。

 記憶がないので時の流れを理解出来ないな」


「先生、僕達のクラスメイトを集めて頂けませんか?」


「あぁ、状況を理解させる為に一度集めてみよう」


 先生は一息いれるようにして、大声を張り上げた。


「3-Aのクラス人間は私の前に集まって下さい!!」


 僕と金子は、担任の横でクラスメイトのみんなが集まるのを見ていた。


 あっ……小西……御影……。

 コイツらも蘇えれたんだな……。


 コイツらは()()()()()()、佐々木は? 彩子さんと能丸は無事か?


 集まってくる、クラスメイト達の中から3人を探していく。

 いない……。 何でだ?


 僕達の背後から、懐かしい声が聞こえてきた。


「先生、お久しぶりです。

 拓郎はココに来てませんかね?」


 佐々木?


 僕は親友がいる方に振り返ると、佐々木、彩子、能丸の三人が集まっていた。


 よ、良かった。


「おおぅ、佐々木。

 驚かないで聞いてくれよ、そこにいる男性がお前が探している人吉君だ。

 それと、金子君もな」


「ちょっ!! 先生、オレをオマケみたいに言わないでくださいよ」


「佐々木……」


「拓郎が僕達を救ってくれたんだろ?」


「あぁ……。キミ達三人を救えなかった事が僕にとっての心残りだったから」


「そっか……。拓郎、アレやるぞ!!

 今度こそ、上手く行ったんだろ?」


「アレか……」


 僕と佐々木はアレという言葉で何をやるのかと察し、僕と佐々木は思いっきりハイタッチの音を響かせた。


「すまない、キミ達を救い出すのに14年もかかってしまった」


「通りで老けたんだんだな。 人吉」「ダメだよ。能丸君そんなこと言ったら」


 そして、能丸と彩子は一息入れて謝辞を述べた。


「「人吉君、金子君ありがとう」」


 そんな流れで、彩子と能丸が僕達の会話に加わってきた。


「人狼四人……無事に帰れたな」


 ……と言って、僕は達成感で泣きそうになっていたので視界を片手で塞いでいた。


「人吉と金子は、そこにいるだろ? 山下さんと医者の薮さんはどうした?」


 僕と金子は、お互いを見合わせていた。


「「山下(薮)さんと結婚したんだ」」


「「「へぇ……」」」


「なんだって、人吉。お前は山下さんと結婚したのか?」


 ――と、担任が興味津々になって聞いてきた。


「拓郎くーん!!」「あなたー!!」


 ――と、約二名が声を上げている。

 この中でこの敷地内に入れて、既婚者は僕達二人だ。


「ココだー!!」


 手を振りながら、唯香と薮さんに合図を送った。

 僕達の存在に二人は気づいた様子で、僕達の方に近かづいてきた。


「唯香!!」「拓郎君」


「どうして、君達がここに?」


「外が騒がしくて、たくさんの生徒さんがいたから、拓郎君達が帰ってきたと思ったの」


「そ、そっか。 ただいま」


「おかえり。拓郎君」


 唯香の姿に僕は違和感を感じた。

 ん? 唯香が抱いている子供は?


「なぁ唯香……その子は? 」


「拓郎君の子供だよ……女の子。 1歳半だよ……パパの事わかるかな?」


「うおおおぉぉ!! 人吉ぃぃぃ!! ウチに念願の男の子が生まれたぞー!!」


 僕達の感動の再会の裏で、金子達も感動の再会があっていたみたいだ。


「もしかして、金子。お前のところもあの三日間で……当たった口か?」


「お前のところもそうみたいだな……」


 唯香と薮さんが子供を連れてきていたので、なし崩し的にクラスメイトが集まってきた。


 ・可愛い〜!!

 ・あの綺麗な人妻は誰?

 ・ちっちゃい〜!!


 ―― だの 、色んな言葉が飛び交っている。


「センセー? そこのオッさん二人は誰?」と、御影が担任に聞いてきた。


「お前達の同級生の人吉と金子だよ……」


「「やぁ」」


 僕はクラスメイトに向けて手を振った。


「お前達、人狼のせいでオレ達は酷い目にあったんだぞ!!」


「私なんか――海賊に……」


「あんな場所から飛び降りする羽目に……」


 コイツらの中では、時間が止まっているんだろうな。


「あぁ、その人狼達は処刑されたはずだけど? キミ達にね……」


「そ、それは……」と、小西が言葉を詰まらせた。


「最初に言っておく……。僕が助けたかったのは人狼の三人だけだ。

 キミ達は申し訳ないがついでみたいなもんだよ……。

 君達が僕達にやった仕打ちを忘れてないと思うなよ」


「人吉……。キミ達に何があったのかわからないが、そのあたりにしておこう。

 まずは、私達の無事を家族に伝えようじゃないか」


 険悪な雰囲気になるのを担任が止めた。


 そ、そうだ……電話をしよう。と、皆が電話を一斉にかけるが通じない。

 そう、14年も経っているのだ……契約は解約されているのは当然のことだ。


「センセー!! 電話が繋がらない!!」と御影が言った。


「唯香、電話持ってきてない?」


「あるよ。 ハイ」


 僕が電話をかけたのは110番……だ。

 立ち入り禁止の私有地に沢山の学生が入り込んで対応ができないという旨で()()した。


「拓郎らしいねぇ……」「あぁ、人吉らしいな」


 佐々木と金子はすべてを理解してるように言っていた。


「拓郎君……それはあんまりじゃ……」


「いやいや、神隠しがとか言っても取り合ってもらえないでしょ?」


「ん? ここは私有地なのか?」と、先生が訪ねてきた。


「正確に言えば……金子と薮さんの所有地ですね。

 神隠しがあった土地なんて不気味で買い手もいませんし。

 神隠しの原因を探すために金子達に買い取ってもらったんですよ」


「金子と薮に何故そんな大金が?」


「金子と薮は、ゲームのクリア者ですよ。

 僕と唯香は金銭について望みを書いてなかったので金持ちじゃないですけど」


「先生。 お久しぶりです。

 それで、拓郎君は11年かけてピエロ男さんにリベンジしようと情報を集めてたんですよ」


 と、唯香が語ってくれた。


「11年って、恐ろしい執念だな……」と、小西が言った。


「えっ? 拓郎らしいじゃん?」と、佐々木が言った。


 なんとも言えない気分になり僕は頭をかいて誤魔化した。

 話を変えるために、僕は先生に違う話をすることにした。


「まぁ、今から警察来るからさ。

 先生は他の生徒がパニックにならないように他の先生にも連絡入れといてよ」


「あぁ、そうだな」


 そう言って、先生はこの場を離れた。

 しばらくして、サイレンを鳴らすパトカーが複数台で僕達の元へやって来た。


 パトカーから、一人の警察官が降りてきて僕達に話しかけてきた。


「警察へ連絡を頂いた方はどなたですか?」


 僕は手を挙げて警察官を呼び寄せ、それに気づいた警察官は僕の元へ近づいた。


「通報したのは僕です。 現状を見ていただけるとわかると思いますが……

 この土地の所有者はそこにいる、金子夫妻で管理は僕がやっています」


「それで、得体の知れない学生が私有地で集まっていると……」


「まぁ、ソコはご想像におまかせします」


「先生、警察の人と話しておいて!!

 あとは任せていい?」


「あぁ」


 ……

 …………


 先生と警察で話をしていたが、ラチがあかず結局は僕が話をする羽目になった。


「えーっと、お宅がココを管理している。人吉さんで隣にいるのが奥さんかな。

 なんで、こんな事になってるんだ? キミ達も11年前に神隠し事件の被害者って事で有名になってただろ」


「その神隠しの隠し場所を、偶然に見つけることができたんで現状に至ります」


 そう発言した後、事の顛末を警察に打ち明けた。


「君達4名は、11年前に神隠しから脱出した。

 貴重な人物だった……と、その魔の手が実の子供達に及びそうだったので自ら出向いた訳だ。

 うーむ。 なるほど……。

 嘘は言って無いようだが、警察へ連絡を何故入れなかった?」


「流石にそれはないでしょう。

 貴方達に奇異な目で見られるのが関の山でしょうし。

 現に、僕達が帰ってきた11年前も受け入れてもらえませんでしたよ。

 だからこそ、僕達四人は半分共同生活の形をとってるんですから」


「う、うむ……。解ったそういう事にしておこう」


「警察は、帰ってきた生徒たちの親御さんへの連絡を手伝ってあげてください。

 14年前のスマホなんです。既に契約も解除されて連絡が取れないんです」


「あぁ、その件は我々が協力しよう」


「ありがとうございます」


「金子、ちょっといいか?」


「ん? なんだ?」


 金子が僕に近づいてきたので、耳打ちして今後の事を提案した。

 金子はその提案に対して、頷き話を進めていいと意思表示してくれた。


「警察さん、11年ーーいや、14年経ってるんだ。

 連絡がつかない生徒や、生活が厳しい者もいるだろう。

 ここにいる金子は、11年前の件で資産家に成り上がった人間だ。

 今回の被害者に対する保証を金子が負うと言ってくれているが、問題ないか?」


「何故? キミ達がそこまでやるんだ?」


「ふ……僕はコイツらを殺した。

 ーーと、言っても貴方にはわからないだろうよ。

 金子もそうだ……コイツらの犠牲の上で11年無事に過ごせたんだ。

 負い目がないわけじゃないのさ」


「殺したとは……物騒な事を言うね。

 まぁ良い、その件というか……保障に関してはこちらとしてもありがたい限りだ」


「それじゃ、後始末は貴方達に任せて、僕達は自宅に帰らせてもらって良いかい?

 流石に色々あって疲れたよ」


「あぁ、君達は既に身元もわかっているし家もこの敷地内だしな。

 何かあったら呼びに行くから帰ってもらって構わないよ」


「どうも」


 ……と言って、警察に向かって礼をして僕達は担任に続けて言った。


「警察さんに伝えた対応を金子がやってくれるらしいから。

 他の生徒にも伝えておいてください。賠償とかじゃないってことは理解してださいね。

 あくまでも善意での保障ですよ。ピエロ男の件を訴えられてもウチらは知りませんから」


「あぁ、わかっている。私達は無事に帰れただけでも儲けものだよ」


 担任にそう告げて、僕達は帰宅しようとした。


「拓郎!! 僕達四人で最後の人狼会議やろうぜ」


「そうだ!! オレの憧れの 山下さんとの件詳しく教えろよ」


「あっ、私も気になる」


 モニター越しじゃない四人での会話が、凄く新鮮に思えた。


「あぁ、最初から最後までキミ達に教えてやるよ。

 人狼が歩いた軌跡って奴をね……」


「拓郎君……。笑ってる」


 唯香の言葉で僕が笑えていることに気づけた。そっか、僕は笑えたんだ。

 僕は壊れた人狼だったかも知れないけど、コイツらとならやり直せるよな?


「拓郎。早く行こうぜ」


 例の指輪の件は、()()()で良いよな。

 家に帰ろう、僕達を待つ我が家に……


「ただいま」


 〜THE END〜

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― 新着の感想 ―
[一言] すごくおもしろかったです!
[良い点] いつもは100話未満で完結してるお話ってあまり食指が動かないんですけど、このお話は結構好きです。 人吉君、冷酷に見せかけて、最終的にはお人好しなところがええですのぉ〜。「おひとよし」と「じ…
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