54.あれから
あれから……
11年の月日が経った。
僕達4人は神隠しにあった、という事で有名になってしまった。
その兼ね合いで、金子と薮は大金を作り悠々自適な生活をしている。
……と、言うより僕達四人はある理由があり同じ敷地内に各家庭に家を建てて半ば共同で生活していた。
ダンジョンで生活していた際のステータスと役職が維持されていたのだ。
その為、人前での生活が厳しく、お互いが知り合っている四人での半共同生活を行なっている。
秘密を守る上でのパートナーということもあり金子と薮は二人が付き合い始めるのは早かった。
秘密を守る仲間ということで、【大金を欲しい】と願った金子と薮の二人からダンジョンを抜け出せた感謝の気持ちとして、僕と唯香は一生生活が出来そうな大金を貰っていた。
僕と唯香はあれから、一年も経たず結婚して……11年の間に3人の子供を作った。
金子と薮にも二人の子供がいる。
僕らの中で金子は刀剣職人として、薮はモグリの凄腕医者として、唯香は占い師の技能を生かして本を執筆してるエッセイストになっていた。
僕だけが、絶賛無職だ。
【人狼】と言う役職が、肉体労働しても明らかにおかしい動きで働く為まず無理。
接客業なんかも、スキル:ウルフヴォイスが発動でもした日には……大惨事になったのでもうこりごりだ。
色々やってみたが、無理だった。
運動関連で華麗にデビューでもしてしまえば、オリンピックでメダルを取ることは容易いとまで言える身体能力になっている為、禁止。
そういう意味でも、僕は働くことができなかった。
なので、僕達はあの神隠しがあったあの土地を金子達が買取をして、僕が元学校の付近を日々調べるという無為な一日を過ごしていた。
電源だけ入った、モニターを持っていき。
学校のあった場所で反応を調べる。
何度か、あの場所が映ったこともあり、あの場所に戻る気は無いが色々と情報を調べていた。
そんな生活をしていたが3人は僕を非難することはなかった。
そんなある日、小学校に進んだ僕の息子がとある事を言い始めた。
「お父さん。
たまにだけど、ピエロさんが僕にダンジョンにおいでおいでってTVに映って怖い」
「えっ、他に見たことあるか?」……と、僕は長女と次女に聞くと。
「うん、お兄ちゃんとテレビ見てたら、変なピエロさんが映って怖かった」
「ピエロぉーー。きゃっきゃっ!!」と、次女が年相応に喜んでいた。
「ちょっと、お母さんと話し合いしてくる。
三人はここにいなさい」
……
…………
「唯香、息子達がピエロ男を見たって言ってるんだが?
しかも、ピエロ男が息子達を呼ぼうとしているみたいだ」
「辞めてよ。思い出したくないのに……
子供達も元気に育って幸せなのに、あのピエロ男さんはそれさえもぶち壊しにするの?」
「そ、それでも……。
子供達の害になるのなら僕は親として、それを排除したい」
「えっ? 拓郎君。
また、あのダンジョンに行くとか言わないよね?」
「わからない……。
もし、僕が行かずに子供達を失うようなら僕は死ぬに死にきれないよ」
「わかった……。
金子さん達も同じようになってるかもしれないから、金子さんとも相談しましょう」
僕達は、金子と奥さんの元薮さんに会うために彼女たちの家にお邪魔した。
ピンポーンと、家のチャイムを鳴らすと可愛らしい女の子が扉を開けてくれた。
「おじちゃんとおばちゃん、いらっしゃい」
金子の娘さんだ。ウチの娘の次に可愛いと思う。
「お父さんとお母さんは、いるかな?
お話があって、きたんだけど」
「居るよー。呼んでくるーー!!」
……と言って、トテトテと可愛らしい足音を鳴らしながら廊下を走っていった。
「おとーさん、おかーさん。
おじちゃんとおばちゃんがきたよー」
大きな声で二人を呼んでいるので、玄関にいる僕達にもまる聞こえだ。
金子と元薮さんと、もう一人の娘さんも一緒に僕に挨拶しに来てくれた。
「人吉のおじさんとおばさん、こんにちわ」
この子が金子の家の長女になる、ウチの長男と同じ年齢で、少しおませさんな所がある。
「「こんにちわ」」
……と、挨拶を済ませたら娘さんは自室へ戻っていった。
「やぁ人吉、 と唯香さん。
急にどうしたよ」
「あぁ、急ですまないが重要な要件があって話し合いにきた」
「重要か……。もしかしてアレかな?
お前が働いていないのが、気になってとかそういうことか?」
「違うわ、働きたいけど、色々あって働けないんだよ。
やれるとするなら、リアルに傭兵家業やるしかないぞ」
「わかってる、わかってる。
冗談だ」
「もう、お父さんったら。 人吉君ごめんなさいね。
私たちは適用できる力があったけど、あなたの力は抜けすぎてるから私たちが囲うような形になって」
「いいよ、いいよ。
金子と薮さんにゃ息子や娘、一同まとめて世話になってるしな」
「それで、なんだ?
世間話しに来たのか?」
「あっそうだった。
お前の所の娘さん、TVに映ったピエロ男から誘いが来てないか?」
「な、なんだソレ? 聞いてないぞ?」
「嫌な、ウチの息子と娘が見たらしいんだよ。
ピエロ男がダンジョンにおいでおいでってな」
「ちょっと、娘に聞いてくる」と、焦るような感じで金子は娘の部屋に向かっていった。
「ねぇ、人吉君。
ダンジョンに行って、原因を潰そうとか考えてないよね?
私たち、子供も生まれて元気に育ってくれて、それで十分に幸せだよ」
「うん、だからこそ奪われたくない。
アイツの非情さは【人狼】の僕が一番よく知っているから」
ダダダダダ……と、駆け足で金子が僕達の元へ走ってきた。
「嘘だろ!? うちの子も見たことあるって言ってるよーー!!」
「そ、そうか……。
唯香、すまない子供達の面倒を見てくれないか?
僕は、息子達を守るためにダンジョンに乗り込むつもりだ」
金子夫妻が僕のことをキョトンとした表情で見ている。
「いやいや、ダンジョンへ乗り込むって、お前どうやっていくんだよ?」
「それな、俺が無職をやらせてもらってる間。
ひたすら学校の周りを調べさせてもらってたんだよ。
そしたらな、たまに教室内の映像が映るんだよ」
「お前なら、そこまでわかってればピエロ男に話しかければダンジョンに招待されるってわけか」
ウンウン……と金子は首をうなづいていた。
「薮さん、いや京香、俺も人吉の事を手伝いたいと思う。
娘達と唯香さん達の事を任せていいか」
「いや、お前は娘もいるし仕事もあるだろう」
「お前が娘達の為に命を張ってくれてんだ。
ココでオレが命張らないで、何が父親だ!!
父親はお前だけじゃねーぞ。
それにな、佐々木への罪滅ぼし本当にできたのか……不安なんだよ」
嫁二人は諦めたようにして、ため息をついていた。
「「いってらっしゃい」」
「「あぁ」」
「絶対、帰ってきてね。拓郎君」
「娘達の事は私に任せなさい!!
だから無事に帰ってきてよ。アナタ!!」
「あぁ、帰ってこれたら……四人め作ろう」と僕はおどけていってみた。
「バカッ……」と言って、唯香は赤くなってた。
「ウチも三人めを……次こそは男の子を!!」
「ハイハイ……。
作るからアナタも無事に帰ってきてよね」
そして、それから三日後……
色々な準備を済ませた僕達二人は教室内が映るモニターに対して呼びかけた。
「おい、ピエロ男!!
ウチの息子にちょっかいかけるんじゃない!!」
「やぁ【人狼】君、久しぶりだね。
いや、君はチラチラとこちらを覗き込んでいたよね」
「誰も映らなかったけどな」
「いやぁ君達が居なくなって僕は退屈したよぉ。
結局99階まで用意したダンジョンを誰もクリアしてくれないし」
「フン、あんな人狼ゲームの要素混ぜたら、誰もクリアできるわけないだろうが!!」
「なになに? 君達が再び挑戦してくれるのかい?」
「ソレを期待して、役職とLVはそのままにしてるんだろうが!!」
「へへへへッ!! わかってるね人狼君」
「ダンジョンクリアの報酬はなんだ?」
「前回と同様になんでも、好きな願いを叶えてあげるよ」
コイツの犠牲になった人間を蘇らせて元の世界に連れ返す!!
「あぁ、それなら構わない。
最後に99階に着いたらお前のそのニヤケ面をぶん殴らせろ!!
僕がお前をぶっ殺してやる!!
公正、公平なゲームマスターなんだろう? 僕達が絶対に勝てない勝負は挑んで来ないよな?」
「アッハハハハハハハハハ!! ほんとうにキミは面白いね。
それは凄くイイね楽しみだね……99階に君達が来るのを首を長くして待ってるからね。
それと、今回は二人しかいないから役職がなくても、教室の施設を自由に使えるように設定しておいたよ。
医者でも鍛冶屋や料理人の設定自分たちで自由にいじってくれな。
さぁて、私は今から君達と楽しむためのプランを考えるから」
「あぁ、望むところだ!!」
「それじゃ、お二人様 ダンジョンへご案内」と、ピエロ男が言った後ピエロ男は指を鳴らした。
そして、僕達の本当の戦いは始まった。




