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45.呪い

 僕達はダンジョンの48階に進み戦闘を繰り返していった。


「装備もあるし、指示さえ出せば新人でも48階で通用してるよな」


「山下さんが支援役に回ったから、バランスの良い編成になった感じだよな。

 後、何より今までと比べてヌル過ぎる。

 オレが全力で盾の後ろに貝のようになって、耐えてた恐怖が一切ない。

 防御をすると考えただけで、オートガードしてくれるし」


「どう? 初のダンジョン探索は?」と、僕は【勇者】と【魔法使い】に聞いた。


「考えていたより拍子抜けしたわ」と、魔法使いの女子が答えた。


「オレって、凄いんじゃね? 余裕で戦闘できてるんだけど?」と、勇者の男子は調子に乗っていた。


「二人とも、調子に乗らないで。

 拓郎君がお金を貯めてくれてたから、今の装備があって、指示を出してくれてるから。

 通用してるだけだよ!!」と、唯香が二人を注意した。


「ご、ごめん(ごめんなさい)」と新人二人は謝っていた。


「けど、この戦闘の感じなら今までの貯金(レベル)で最深階まで行けるくらいの感じはするよ。

 正直なところ」と、僕は素直に言った。


「うん、私もそう思う。

 今までの探索がなんだったの? ……って位に簡単になったよね」


「あぁ、50階迄の様子を見ながらだけど。

 クリアできるのなら、今日でこのクソゲーをみんなで脱出しよう」と、僕はみんなに言った。


 皆が思い思いの返事で僕の言葉に呼応してくれた。


 ……

 …………


 何事もないかのように48階を攻略してしまった。

 いつもなら、一日か二日かけて攻略できるレベルなのに……早すぎる。


 そんな調子で49階をサクッと攻略、そして、最深階である50階もボス部屋の扉を見つけるところまでサクサクと攻略を進めてしまった。


 僕は胸の懐中時計を確認するとまだ、一日半しか経っていなかった。

 僕はボス部屋に続く大きな扉を見た。


「探索終了まで時間には余裕があるから、疲れを取るために半日はココで休憩を取ろうと思う」


 ……と、皆に提案した。


「いやいや、そこの部屋にいるボスを倒せばクリアなんだろう!! このまま行こうぜ!!」

 ……と、【勇者】の男子が言った。

 そして、それに【魔法使い】が同調した。


 新人二人の意見には同調せず、

「拓郎君の意見に(人吉の意見)に賛成!!」と、金子と唯香が答えてくれたので、休憩を取ることが決まった。


 この部屋はモンスター が湧かない場所で、所謂、安置みたいな場所だったので皆で休憩を取ることにした。


「なんで、休憩なんかするんだよー!!

 お前は早くクリアしたくないのかよ!!」


「お前らが、そんなんだから休憩してるんだよ」


「「えっ!?」」と、新人二人が言った。


「お前らの状態は元勇者達が、15階の中ボスに半壊させられた時とソックリだよ。

 準備もせずに覚悟もなくボス戦に挑んで、泣きながら僕らに助けを求めてきた御影達とな」


「あぁ、あったな。

 人吉が風呂入ってて、そこに御影が入っていったやつだろ!!

 あん時は小西達を助けるために、急いでたから新調した装備も持たずに二人はボス討伐に行ったよな」


 佐々木……お前がいたら。

 こんな状況でも、どうにかしてくれてたんだろうな。

 ……と友人の事を考え、僕は軽く顔を塞ぎ込んだ。


「金子君、佐々木君の事は言わないであげて」と、僕の様子を察した唯香は耳打ちで金子に伝えた。


「あぁ、すまん。人吉」


「あぁ、いやいや。

 あの時、僕達に助けられといて、最終日に佐々木を処刑するんだもんな。

 小西・名取・巻島の三人がさ、率先して佐々木を取り押さえてさ。

 僕は、あの時何もできなかった……。

 いや、僕が止めようとしたのをアイツが静止したんだよ」と、僕は完全に塞ぎ込んだ。


「僕を守るためにアイツは死んだんだ」


 そんな僕を見て唯香が僕を抱きしめてくれた。


「大丈夫!! 佐々木君は、拓郎君が凄い人ってわかってたんだよ。

 紆余曲折あったとしても、結果的にみんなを助けてくれるって解ってたんだよ」


「そ、そうかな」


 そっか、、彼女は僕の事をわかろうとしてくれてるんだ。

 ……と、僕は気持ちが落ち着いた為、彼女の胸で眠りについた。


「なぁ……人吉は人狼なんだろう?

 なんで、山下さんとあんな関係になってるんだ?」と、空気を読まない【勇者】が言ってきた。


「お前らが佐々木を殺したから、人吉は軽く壊れちまってんだよ。

 あの子が一番近くで、それを見てきたんだよ」


「違う!! オレは佐々木の処刑に投票してない!!

 投票したのは、お前じゃないか!!」


「あぁ。

 人吉はそんなオレを許してくれたんだぞ。

 アイツは【人狼】じゃない、オレ達のクラスメイトだろ?」


「そう言っても、【人狼】は、今回だけでも12人を殺してるじゃない」と、【魔法使い】が言った。


「だから、と言って【人狼】の人吉に頼りきりじゃないか!!

 最後の投票で、お前ら人吉に投票するんじゃないだろうな?

 それなら、オレがお前らをココで殺すぞ!!」


「金子君。

 拓郎君が眠ったから静かにして!!」


「あっ、すまん」


「三人に言っておくけど、【人狼】って、本当にかわいそうなんだよ。

 拓郎君に聞いたけど、彩湖さんは市民班から無視されるようになって孤独を感じて自殺したって……

 それを【人狼】の口封じだなんて言って疑って、その次は能丸君でしょ」


 唯香は聞いた話を三人に吐露している。


「最初は四人で仲良く、クラスメイトをみんな連れて帰るって明るくモニター越しで会議してた人狼会議も人が減ったって、軽く涙目になりながら話してくれたんだよ。

 それで市民班の裏切りで友人の佐々木君を処刑しちゃうでしょ。

 拓郎君は誰と話をすればいいの?」


 ん……?なんか話し声が聞こえる。

 いかん、ここはどこだ? 柔らかくていい匂いがする。

 目線をあげると唯香が誰かと話ししているようだった。


「一人になった彼を、さらにピエロ男さんが追い打ちをかけてくる訳。

 それに市民班も必死になって人狼を探すし」


「それは、ピエロ男が……」


「黙ってろ!!  山下さんが話してんだろ」と、金子が【勇者】の反論を遮った。


「彼にとって、クラスメイトのみんな()だったんだよ?

 それなのに、みんなのために無理して、怪我しながらダンジョン探索してくれて……

 やってる事、矛盾してるし壊れない方がおかしいよ。

 これじゃ、佐々木君の思いが彼には()()になっちゃってるよ。

 私達を見捨てて、彼は脱出できるんだよ?」


 呪い……か。


 目を覚ました僕は唯香から離れて発言した。


「ごめん、唯香。一つだけ訂正させてくれ。

 佐々木と約束した事は別に呪いじゃないし、僕が脱出しないのもクラスメイトを守るためじゃない。

 僕が唯香を守りたい。だから、最終階まで攻略してキミを無事に元の世界に返したいだけだ」


「起きてたんだ」


「うん、唯香達が何か言ってたみたいだったから、それで起きちゃった。

 内心としては、もっとあの場所にいたかったけどね」


「拓郎君のエッチ」と言って、唯香は顔を赤くしていた。


「まぁ、唯香から色々聞いたと思うけど……

 探索ってこんなに簡単じゃないから、新人の二人も調子に乗るのはやめてくれよな。

 とりあえず、僕からはそれだけかな」


 それから、新人二人は何も話さなくなった。


 ……

 …………


 皆で休憩を取り時間が過ぎていった。

 そして、胸の懐中時計がボス戦の扉を開く時刻を示した。

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