44.新パーティ結成
朝だ……。
探索班の集合時間が近づいている。
3人の中で僕が一番先に起きたのか?
目の前には唯香が寝ている、僕は唯香の頬をつついた。
「おはよう、新人二人に説明しなきゃいけないから。
二人とも起きろ」
「んー? 朝?」と、唯香は軽く寝ぼけていた。
「なんで? 人吉が一番に起きてんだよ?
遅刻魔代表だろオマエ?」
「ちゃうわ!! 懐中時計つけてからは遅刻は減ったよ。
余計なことして遅刻する事はあるが、元々から寝坊で遅刻する事はない」
金子にドヤ顔で弁明をした後、唯香に話しかけた。
「唯香、起きろ」
寝ぼけ目を擦りながら、唯香は目を覚ました。
「あっ、おはよう。拓郎君」
「おい、人吉。 寝起きって、彼女もああなるんだな」
「可愛だろ?」
「あぁ、はいはい」と、金子は僕の惚気をスルーした。
唯香は顔を赤くして、お風呂場に顔を洗いに行った。
「金子も探索の準備あるんだから、一旦部屋に戻るといいさ。
夜の間、僕が襲撃しなかったのは確認しただろ」
「あぁ、そうさせてもらうよ。
オレは新装備の準備があるんで、新人二人には先に説明を始めておいてくれ」
「あぁ、わかった。
そしたら、説明が終わったら金子が来るのを待ってるよ」
「あぁ、それじゃ。
また後で……」と言って、金子は僕の部屋から出て行った。
流石に唯香を置いて、勝手に自室から出るのは拙いと思い。
僕は浴室へと向かった。
カゴの中には、唯香の脱いだであろうパジャマと可愛い感じの下着が……
青の縞か……って、いかんいかん。
磨りガラス越しに水音が聞こえてくる。
そう、磨りガラスなのだ局部はわからないが、肌色のシルエットがはっきりと見えている。
も、戻ろう。
僕は何も見ていないし、何も聞いていない。
……と、言うことにしておこう。
僕は彼女が戻ってくるまで、ベッドに座って待っていた。
……
…………
朝から邪念がぁ~。
邪念撲滅!! 邪念撲滅ぅ!!
すると、何事もないかのように唯香が風呂場から帰ってきた。
「拓郎君。朝っぱらから、そんな表情してどうしたの?」
お、おう。唯香……キミが、それを言うのか。
「いや、ちょっと思う所があってね」と、言葉を濁しておいた。
縞だとか、シャワーとか、決して言わないぞ!!
「私がお風呂入ってたのを覗いたとか?」
「ち、ちがう!! 僕は青色の縞なんて見ていない!!」
か、語るに落ちるとはこの事だ。
「あっ!! すいません。
磨りガラス越しに見えました」
「あはは、拓郎君は正直だなぁ。
人狼やってる時とえらい違いだね」
「うっせ!!」
「あっ、そのセリフって佐々木君といた時に良く言ってたよね。
照れ隠しとか、困った時に良く使ってたよね」
「あぁ、よく覚えてたね」
「そっか、拓郎君と少しは近くなれたのかな? 私」
「いろんな意味で近づけたと思ってるよ。
僕の手を伸ばせばとどくほど近くに君がいるなんて元の世界じゃ考えれえない事だし」
僕は唯香に向かって手を伸ばした。
「そうだねーー」と言って、唯香も僕の手を握ってくれた。
「二人で一緒に帰ろうね」と、唯香が言った。
「うん、帰ってから。
告白の結果を聞きたい」
「また言ってる。
キスじゃ伝わらないのかな?」
「いや、そう言うんじゃなくてケジメ的な奴ね」
「ふーん。
それじゃまた後で」と言って、彼女は僕の頬にキスをして自室へ帰って行った。
僕の部屋に三人もいたわけで、急に静かになったな。
とりあえず、僕も身支度してから部屋を出よう。
……
…………
身支度を済ませて、僕は新人二人が待つ教室へと移動した。
【勇者】と【魔法使い】になった元市民班の二人は顔を強張らせていた。
「やぁ、おはよう。
二人とも良く眠れたかい?」
「いや、緊張であまり眠れなかった」と、【勇者】になった男子は答えた。
【魔法使い】の女子は、首を振って緊張して眠れなかった事を伝えてきた。
「二人とも、そんなに怖がらなくてイイよ。
装備に関しても、元勇者達が使ってたモノより良いものを渡すし。
何より、戦闘の【ゲームモード】に変えるから危険性が減るからさ」
詳しい事は、変えたことがないので知らないけど……な、ソレを敢えて言うのも野暮ってもんだ。
ソレに、小西達でも【ゲームモード】に変えさえすれば45階まで探索できるんだし、難易度がかなり下がるのは想定していた。
「そ、そうか。
それなら良かったよ」と、【勇者】は答えた。
「ただし、僕が指示を出すから。ソレには従ってもらうからね。
それを無視して、大怪我しても責任はとらないからね」
【勇者】と【魔法使い】の二人は首を縦に振った。
怪我や死にたくないのは、みんな同じだし反応としては正しいんだろうな。
しばらく、二人に探索についてレクチャーを続けていると、唯香と金子も教室にやってきた。
「お待たせー!! 拓郎君」
「待たせたな。人吉!!」
僕は二人の挨拶に手を挙げて反応した。
「とりあえず、新人二人にはレクチャーは済んでるんで、金子はこの二人に装備を渡してくれ。
後、僕達の新装備の準備も頼むよ」
「おうよ!! そしたら、新人二人はコッチに来な」と金子が言って、新人二人を別のテーブルに連れて行った。
「拓郎君。
新人さんに、レクチャーお疲れ様」
「うん、ゲームモードを変えるって言って連れて行くんだけど。
実のところ、僕自体がゲームモードを変えた事ないんだよね。
経験値と稼ぎが三倍変わってくるからさ……相当、ヌルくはなると思うの想像できるけど」
「そしたら、今の内に変えておいたら?」
「そ、そうだね」と、僕は唯香に言われるがまま戦闘のゲームモードの変更を行った。
・致命傷、重症、即死、部位欠損のステータス異常がなくなります。
・恐怖によるステータス減少などがなくなります。
・戦闘の攻撃・防御のサポート機能が使用できます。
・所得経験値とドロップする金額が通常に戻ります。
「え……ナニコレ。
ヌルゲーじゃん」と、僕は素直に声を出して言った。
「え?どういう事?」 と、不思議そうに唯香が聞いてきた。
「部位欠損とか、致命傷、即死にならない。
所謂、ゲームのアバター化するって感じかな。
大事になってくるのはHPという数値だけって感じね。
ボス戦とか戦闘で、恐怖を感じるとステータスが減少させられてたんだけど、それもなくなる」
「それは、便利だねー。
それなのになんで、小西君達は先に進めなかったのかな?」
「んー? それは45階迄は余裕あったけど急に45階から難易度上がってたから。
戦闘が追いつかなくなったのかな。 まっ、戦闘数不足のレベルが足りてないって所かな。
後、部屋の拡張とかそっち方面に金を使いまくってたとか?」
「そっか、戦闘数じゃ拓郎君が圧倒的に多いし。
それに経験値と稼ぎでへそくりを作ってる拓郎君と違って、戦闘数の少ない小西君達はそこから四分割じゃカツカツだよね」
「そ、そういう事かぁ。
狩れる数が少ないなら、長期間ダンジョンに籠もれば、どうにでもなった話じゃないか。
その内に慣れるのに、最後までヌルくやった結果だろうなぁ」
しばらく、僕と唯香で話を続けていると金子が新人二人を連れてやってきた。
「おう!!待たせたな。
新人二人に装備を配り終わったぞ」と言って、金子は僕達の前の机に装備を置き始めた。
「スキルで購入できる店売りの品だけど、今までのものよりイイものを買ってる。
装備してくれや」と、金子が言ってきた。
「おう、サンキュ!!」
僕達は、新装備を身につけていった。
「それと、昨日は人吉の部屋にいたから。
シールドアローの新調はできなかった。すまんな」
「まぁ、それは仕方ないだろ」と、答えておいた。
「とりあえず、ゲームモードの変更も済ませたから。
かなり簡単になったと、だけ伝えておくよ。
唯香には話したが、金子は実際に経験して驚くなよ」
「そ、それはどういう意味だ?」
「それは行ってからの、お楽しみだ!!
それじゃ、行くぞ!! 48階!!」
……と、僕は皆に宣言してダンジョンへと進む扉を開けた。




