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38.名前呼び

 会議用のモニターが勝手についた。


「いや、いやいや……

 お二人さんお熱いねぇーー!!」


 と、空気を読まない能天気な声が聞こえてきた。

 ゲームマスター事、ピエロ男の登場だ。


「おい!! なんで【ロンドン橋】で御影が人柱になってんだよ。

 それに、あの結末は酷すぎるだろ」


「えっーー!! 最高に喜んでくれてたじゃないか。

 男性諸君は大喜びで、女性陣は何者にも得難い恐怖を得られただろ。

 死んじゃった【魔法使い】は良いカラダをした女性だったからねぇ。

 君もきっと思わず前屈み状態だったのかな? アヒャヒャヒャ!!」


「そんな訳ないだろ、ドン引きしたし。

 オマエが演劇とか言い始めた事を理解しておくべきだったと反省さえしたさ」


「ふーん。

 そういえば、そこにいる【占い師】もスタイルは彼女程ではないけど、見た目も良いしイイ身体してるよね」


 と、言いながらじゅるりとピエロ男が舌なめずりをした。


「イヤ……」と、軽く涙目になりながら彼女が言った。


「彼女を処刑位置には絶対にさせないからな!!」


「ふーん。

 それは残念だ。これだけの器量良し相手だし、男性諸君は大いにハッスルしてくれると思うのになぁ。

 あっ、そうだ、そうだ!! とりあえず君達は察していると思うけど。

 次に処刑位置に女性が上がったら、クラスの男子に襲わせるからよろしく!!」


「この、ゲス野郎が!!」


「えー。

 君もイイ思いすればいいじゃないか」と、ニヤニヤしながらピエロ男は言った。


「そんな展開になった瞬間、クラスが壊滅しかねないし絶対にそれだけはやらせない!!」


「ヒュー!! まるで正義の味方だねー!!

 中身はクラスメイトを何人も殺した極悪非道の【人狼】なのにね」


「あぁ、 それでもイイさ。

 僕は彼女さえ守れれば、なんだってやってやるさ。

 絶対にオマエの企みが成る前に、ダンジョンを攻略して脱出してみせる」


「あー、ハイハイ。頑張ればいいんじゃないかな?

 私はゲームマスターだから、面白くなればそれで良いし。

 それで今日は、【勇者】を襲撃するんだろ?」


「あぁ、そのつもりだ。

 小西の襲撃をした後は、僕はそれ以降は襲撃はしない」


「えー。

 金子君は襲撃しないのかい?

 面白くないなって、次で12人目の死亡者か。

 襲撃しなくても、人狼は追加の目標達成だし仕方ないね」


「今日も何かしら、僕からお題を出す必要があるのか?」


「いいや、前回と同様で演劇でいいよ。

 既に、相応わしい題目は僕が考えているさ」


「題目は? なんだ?」


「それは見てのお楽しみに……」と、ピエロ男はニヤつきながら話している。




「それじゃ、襲撃相手も決まったし。

 私はこの辺で失礼するよ」と言って、上機嫌に何かの言葉をつぶやきながら、ピエロ男は去っていった。


 ・誰がコマドリ殺したの?

 ・それは私だよとスズメがいった。

 ・私の弓で、私の矢羽で……

 ・私がコマドリ殺したの。


 ピエロ男の呟きは僕達にしっかりと聞こえていた。

 ピエロ男の去った後、僕は山下さんに訊ねた。


「山下さん、今日はどうする?

 あんなの見せられたんだ、男性が怖くないかい? 」


「ココにいる。 一人で寝る方がよっぽど怖いよ。

 部屋には鍵はかかってるけど、侵入されて襲われそうで」


「うん、わかった。

 そしたら、一度部屋に戻ってから。

 君の部屋から、僕の部屋においで……

 来客履歴で、夜も僕の部屋にいたなんてバレると色々面倒だしね」


「そんな事しなくて、いいんじゃないかな?

 クラスで拓郎君が宣言したみたいなものだし」


 そ、そういえばそうだった。


「いやいやいや、男子の部屋に夜の間、女子がいるってことは、つまりそういうことで……」と、状況を説明していたらしどろもどろになってしまった。


「拓郎君なら、イイよ。

 けど、今日は辞めてほしいかな。

 あんなの見せられて男の人が少し怖い」


 アッサリとオッケーを貰いつつ、今日はNGを食らってしまった。


「え? 今日じゃなければいいの?」


「う、、、ん……」と、顔を赤くして彼女が言ってきた。


「そ、そっか」と、僕は答えるしかなかった。


 彼女は男性を怖がっているハズだが、僕に引っ付くようにして眠りについていた。

 僕は、そんな彼女に緊張して、気が気じゃなく簡単に眠りにつく事ができなかった。


 彼女の体温を感じる……吐息を……匂いを……

 頭の中が、そんな事ばかり考えてしまい目が冴えてしまった。

 どうせ緊張して、眠れないんだし彼女を見ているか……と、眠る事を諦めた。


 ……

 …………


 そして、今日も朝がやってきた。


 緊張しすぎて一睡もできなかった。


「拓郎君も一睡もできなかった?」と、僕の事を見て彼女が僕に声をかけてきた。


「うん、 僕の思い人が目の前にいるんだし。

 緊張して眠れなかったよ……。

 って、もしかして山下さんも?」


「思い人かぁ……。

 ねぇ、拓郎君。

 この際だから、ハッキリしとこ」


「えっ? 何を?」


 彼女がベッドの上に正座した。


「拓郎君は脱出してから、告白の結果を聞くって言ってたけど。

 もう、結果は知ってるよね?」


「あっ、ハイ」と言って、僕はベッドの上に正座した。


「もう、私達は恋人の関係だよね?

 拓郎君も私の事を名前呼びしてくれてもいいんじゃないかな?」


「えーっと、 唯香さん」と、言うと首を横に振られた。


 名前にさんづけじゃ、ダメなのか?


 唯香ちゃん? 唯香君? 唯香氏? いやいやそれは無いよな……


唯香(ユイカ)で、良いのかな?」と、僕が言うと彼女は無言で頷いた。


「やっと、下の名前で呼んでくれたよね。

 私は拓郎君って呼んでたのになぁ」


「いや、そう言うのに耐性が無くてですね。

 どうすれば良いのかわからないんだよ!!」


「うん、知ってる」と言われ、彼女にからかわれたみたいだ。


「拓郎君、これからもよろしくね」


「うん、こちらこそ。

 よろしく、 ユイカ」


「それじゃ、私は部屋で探索の準備してくるね」と、言って彼女は僕の部屋の入り口から堂々と出て行った。


 もう、彼女は隠す気ゼロなんだ……と、僕は察してしまった。

 これは男子勢から嫉妬の声が、飛んで来そうだな。


 ……

 …………


 よし、気にするのはやめとこう。

 僕も風呂入って身支度が済んだら教室に向うとしよう。

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