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34.思考の沼

 昼の会議から帰ってきた、僕は今後の事を考えていた。


 ・次の襲撃者は誰にするのか。

 ・50階にいるであろうボスの対策。

 ・探索班となった鍛冶屋の金子を襲撃するか否か。


 まず一つ目は、僕の中では小西と御影を許すつもりは微塵もない。

 コイツらは、友人の佐々木を吊り押した主犯みたいなものだからだ。


 次に、50階のボスモンスター対策は実のところ一つ考えてある。

 ダンジョン探索をしたことがないズブの素人を、強制的に戦力にするには……

【見習い】のパーティ加入後は、戦闘モードを変更してしまえば、ズブの素人だろうと戦力になると踏んでいた。


 復讐をしながら強制的に五人パーティを作りボス戦に挑める訳だ。

 最後に、金子の件だが決めかねていた。


 ……

 …………


 いくら考えても結果が出ない。

 考え事を繰り返していくと、時間ばかりが過ぎていった。


 しばらく、考え込んでいると物置の扉が開く音が聞こえてきた。

 物置と言っても何もない部屋だ、最近は山下さんの出入り口となっているので彼女が来たんだろうと察した。


「お邪魔します」と、山下さんが奥の物置部屋からやってきた。


「いらっしゃい」と言って挨拶した。


「今日もアレかな。

 僕の部屋で眠っていくのかな?」


「うん、そうさせてもらうね」


「だけど、前回のアレで、今回は警戒して映像は見ないようにしなかったの?」


「そうしたいのは山々だけど、クラスの子がね」


「あぁ、怖がって山下さんに抱きついてくるとか?」


「うん、そう言うことがあるから。

 見たくなくても見てしまうし、聞こえてしまうの」


「今回は、ピエロ男が姿を化けれるってわかったしね。

 クラスメイトも気が気じゃないだろうね」


「ん? 拓郎くんはまるで知ってたような口ぶりだね」


「うん、知ってたよ。

 僕が大浴場に入ってた時に、ピエロ男が風呂に入る真似して僕をからかってきたし」


「へぇ……

 そうなんだ」


 決して、バスタオル一枚の山下さんに化けたとか、なんて口が裂けても言えないな。


「それで、ピエロ男は誰に化けたの?」


 ……

 …………


 そこを聞いてくるか。


「えーっと、佐々木かな。

 すぐ元の姿に戻らせたけど」


「ふーん……それで、本当は誰?

 拓郎くん、さっき少し目が泳いだよね。

 答えるのに少し躊躇したし」


 うへぇ……。

 山下さん以外と鋭いな、僕の人狼も見抜いてきたし。


「えっと、バスタオル一枚の姿の山下さんに化けたよアイツ。

 例え、中身がピエロ男でも緊張して話せなかったので、すぐ元の姿に戻らせた」


「ふーん」と、山下さんはアッサリと答えてきた。


「まぁ、そう言うことがあったんで、ピエロ男がクラスメイト全員に化けれる事は僕は把握済みだった」


「それで、拓郎くんは私のバスタオル姿にどう感じたの?」


 えっ!? そっち!?


「見たい気持ちがあったけど、申し訳ない気持ちが勝ったかな」


「タテマエはいいから。

 正直に……」


「えっ!? 言わないとダメ? 」


「ダメです!!」と笑顔で答えられた。


「想像通りの体型だったし、予想より胸あるなって思った」


 正直に答えたら、彼女は赤くなって「バカっ!!」と、答えを返してくれた。


「だから、言いたくなかったのに……

 ヒドイよ、山下さん」


「怒ってないから、大丈夫」


「それなら、いいけど」


「話を戻すね。

 拓郎くんが、本題に入れなさそうだし」


「是非、そうしてくれると助かるよ」


「まず一つ目ね、なんでクラスメイトと敵対するような行動をとったの?」


「あぁ、それは簡単な理由だよ。

 僕が稼いでくるのが、アタリマエと思われたくない。

 次に、小西達が軽く市民班に暴力めいたものを食らってたでしょ。

 ピエロ男がかなり活発に動き出したせいで、クラスメイトが軽く殺気立ってるのを感じたかな。

 こんな流れだと市民班が何をやらかすかわからないから、とりあえず僕にヘイトを向けさせておけば最終階までは君達を守れると思った」


「へぇ……

 だから、あの時に小西くん達を庇ったんだね」


「市民班は探索班を舐めすぎてる。

 あの状態でも小西が暴れたら確実に死人が出てるよ。

 だから、探索班の力を見せつける必要があったんだ」


「それでも、小西くん達は……」


「そうだね。

 その二人は確実に襲撃するよ」


「二つ目は、金子君はどうするの? 襲撃するの?」


「……。

 わからない、金子は探索班の佐々木と僕に普通に接してくれてたしな。

 金子が挙手したのは名取のせいってのも聞いてるし、探索班として出てくれた事は評価したい」


「私が止めても、小西君と御影さんには襲撃するってことよね。

 けど金子君に関しては、決めかねてると……」


「うん……。

 最初は佐々木の仇は全員、襲撃するつもりだったけどね。

 そこに悩んで、時間が無駄に過ぎていったよ」


「それじゃ、私から提案していい?」


「どうぞ」


「【勇者】と【魔法使い】が死んでから、金子君の事はしっかり考えましょう。

 50階に何がいるのかわからないんだし」


「そ、そうだよね……。

 うん、わかった。そうさせてもらうよ」


「それで、今日は小西君? 御影さんのどっちを襲撃するの?」


「うーん……小西は最後にと考えてるから。

 御影かな」


 と言って、僕は【魔法使い】の御影を襲撃の相手に選択した。


 こんな流れで、モニターをつけずに勝手に人狼会議みたい事が始まっていた。

 すると、勝手にモニターが付いて……


「ウェーィ、ウェーイト、、Wait!!

 ゲームマスターの私を放っておいて、君達は勝手に話を進めてるのかな。

 それに【占い師】のキミぃ!! 君は人狼陣営じゃなく、市民陣営なんだよ!!

 市民陣営を裏切るのかい?」


 ……と言って、ピエロ男が僕達の会議に乱入してきた。


「裏切るつもりがないから、拓郎君に協力してるんです。

 ココで下手に彼等を救っても、拓郎君が疑われる機会が増えるだけだし。

 それなら拓郎君に協力して、ダンジョンクリアした方が早いでしょ」


「フフフフフ……

 それなら、占い師のキミは【勇者】の彼や【魔法使い】の彼女がどうなってもいいのかい?」


「ピエロ男さん、貴方が私に拓郎君を裏切らせたいのはわかりますが……

 現状、拓郎君しかダンジョン攻略をマトモに進めれる人いないですよね」


「いやいや、時間をじっくりかければ君達だって大丈夫だと思うよ」と、ニヤニヤしながらピエロ男が言った。


「その場合にゲームマスターのお前は、攻略の進まない市民班に何もしない訳ないだろうが」と、僕はピエロ男に言った。


「私は信用されていないんだねぇーー!!

 ざんねーん!! でも、良いんだ。

 攻略の進行が硬直した市民班を、気長に見てやる訳ないだろうね」


「少なくとも僕は佐々木の仇さえ打てれば、他を襲撃するつもりはないんだ。

 山下さんが、僕に協力してくれるのは別に不自然でも裏切りでもないだろ」


「拓郎君」


「ん? でもでも、人狼君。キミは鍛冶屋の彼を襲撃するか迷ってたよね?

 彼も襲撃しないと、今までに襲撃された人達が可愛そうと思わないのかい?

 その中には、勇者パーティの連中に強制されたのかもしれないのに?」


「そ、それは……」


 ピエロ男の発言に、僕は再び思考の沼にハマり込んでしまった。


「ピエロ男さん、金子君の事はダンジョン攻略の兼ね合いもあるんです。

 とりあえず、二人の襲撃が終わってから考えるって決めてるんです!!」


「チッ!! 面白くないねぇ」と、ピエロ男が言葉を吐き捨てた。


「あっ、そうだ。

 次は御影さんなんだろ……。

 せっかく、いい身体してる女なんだ。

 男性諸君を喜ばせてやろうや、人狼君よ!!」


 まぁ、要するに複数の男性の慰み者にさせようと提案してきているのだ。


「嫌だ!! そんな襲撃の仕方をするくらいなら、普通の惨殺の方がまだマシだ!!」


「チッ!! つまらないねぇ。

 じゃあ、私の提案を断ったんだ。

 何か考えはあるのかい? ないのなら、私の好きにさせてもらうよ」


 ぐぬぬ……。提案しなけりゃ市民班の男性陣の慰みものにされて御影は殺される。

 そうなったら確実にクラスメイトの男性陣がブッ壊れるのが目に見えてる。

 できれば性的なイメージからは離れたい所だ。

 あっ、あった……有名どころで一つ思い出した。


「だったら、【ロンドン橋落ちた】だ」と、僕はピエロ男に提案した。


 これなら、妥当なところのイメージは圧死だろ。

 クラスメイトが暴徒と化する事はないだろう。


「ふーん、【ロンドン橋】ねぇ……。

 人形劇も飽きてきたし、次は演劇でもやろうかな!!」と、ピエロ男はニヤニヤしながら言ってきた。


「それじゃ、私はこの辺で失礼するよ。

 次の演目をお楽しみに」と言って、ピエロ男は【ロンドン橋】を口ずさみながらモニター外にフェードアウトしていった。


 ・ロンドン橋が落ちる〜落ちる〜

 ・ロンドン橋が落ちる〜

 ・My(マイ) fair(フェアー) Lady(レディ)(可愛いお嬢さん)


 ……と、ピエロ男の歌が耳に残っていた。


「ピエロ男は演劇って言ってたよね。

 何をするつもりなんだ? 【ロンドン橋】なんて落ちるだけじゃないのか」


「うん。 私もわからないよ」


 結局、その日はピエロ男の真意は分からぬまま、僕達は眠りについた。

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