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32.ヤブ医者

 僕達は二週間の探索を行い。

 ダンジョンの46階迄の探索が終了した。


 僕達は無事にとは言えないが、なんとか【帰還】してきた。


 何があったかというと……

 山下さんを、敵の攻撃から守るために僕が片腕を失った。

 探索終盤での出来事だったのが不幸中の幸いだったが、45階と46階では急激に難易度が上がっていた。

 その結果、僕はモンスターの剣撃を片腕に受けてしまった。


 片腕が切断されているため、相当な痛みを伴うのが普通なのだが……

 コレはゲームという設定なので、色んな便利アイテムが存在している。


「今回使うのはコチラ、疲労がポンと取れるお薬じゃなく、、よーく効く痛み止め」


 あまりにも二人が心配そうにしていたので、テレビ通販のノリで僕はアイテムを使用した。


 よーく効く痛み止めの薬を、飲んで教室に戻ると皆が大騒ぎになっていた。

 

 人吉の腕が……

 これで探索班は終わりだとか……

 そんな感じの言葉が聞こえたりとある意味面白かった。


 周りの反応はガン無視して、二週間の稼ぎを教室の机に置いて、僕は【医者】に治療してもらうことにした。


「ちょっと治療に行ってくるから、二人はココで待ってて」


 僕は、医者の部屋へと自らの足で向かい、医者である薮さんの部屋兼治療室のドアをノックした。


「薮さーん。

 治療してくれー」と、言った。


「開いてるから入ってきな」と、ぶっきらぼうに答えられた。


 薮さん、もといヤブ医者による治療に入る前に、【医者】は僕の怪我の状態を確認した。

「アンタ。

 腕が無いじゃないの……痛く無いの?」


「探索班にはよく効く痛み止めって、やつがあるんだよ。

 多少は無理しないと押し通せない時があるからね」


「見たところ腕の治療かい?

 切り落とされた腕はあるのかい?」


「あぁ、あるよ」と言って、【アイテムボックス】に入ってる自分の腕を医者に渡した。


「そこの椅子に座りな」と、僕は医者の指示の通り椅子に座った。


 僕の切り離された腕を身体にくっつけるようにして、【医者】は医者専用のスキルを発動させた。

 すると、腕が肉体に繋がり無事修復が完了した。


 最後のケアとして、医者に回復剤を腕にぶっかけられて、その上から回復魔法みたいなものをかけられた。


「ホレ、腕を動かしてみな」と、医者の言う通りに治療した方の腕を動かしてみた。


 問題なく動いたし、痛みも発生しない。


「うん、動くな……。

 ありがとう薮さん。

 いや、薮医者か?」


「続けて言うのはやめろ!!

 ヤブ医者みたいに聞こえるじゃないか!!」


「それで代金はいくらだい?」


「あぁ、今回の探索の代金から勝手に請求させてもらうよ」


「あぁ、解った。

 そうしてくれ」


「あまり私の出番を作ってくれるなよ」と、最後に薮さんは言い残した。


 教室に再び戻りパーティの二人と合流した。


「ただいまーー!!」と、両手を振って二人に挨拶した。


「ごめんなさい!!

 私を守るために……腕が」


「ん? いや、いいよいいよ。

 最終的に二人が頑張ってくれたから、46階まで到達できたんだし」


「しかし、人吉の言った通り……。

 本当に、あっさり治療できるんだな」


「あー、これくらいなら軽い方だよ。

 巻島が死にかけた時は、一日中治療に時間かかったしな。

 それと申し訳ないが、治療費は今回の稼ぎからヤブ医者が引いておくって言ってたんでよろしく」


「おう。余った分で装備の新調と、市民班への分配でいいんだな」と金子が聞いてきた。


「あぁ、それでいい。

 それより金子は探索にも出て、装備を作る時間はあるのか?」


「あぁ、それなら心配ないさ。

 手間がかかるのは人吉の盾くらいのモノだよ。

 他の装備は、【鍛冶屋】のスキルでの取り寄せ品みたいなモノさ」


「そっか、それならいい」と言って、僕達は各自自分の部屋へと戻っていった。


 しっかし、ゲームとはいえやり過ぎたな。

 まさか腕が切り落とされるとはなぁ。

 僕は自分の部屋で切り落とされた腕を見ていると、部屋の奥にある空の物置から、山下さんが出てきた。


「あぁ、山下さん。

 いらっしゃい」


「急にごめんね。

 私を守るために、拓郎君が腕が切られたから凄く心配で……。

 私がわがまま言ったから、この結果になったのかなって」


「あぁ、それは違うよ。

 多分、一人だったら……

 小西達と同様に45階で足踏みしてたよ。

 急ごしらえではあるけど、山下さんと金子が探索班の流れをしっかり覚えてくれたおかげで46階まで攻略できたんだ。

 感謝する事はあっても、君たちを非難することはないよ。

 それにさ、僕は君を守るって言ったし」


「でも……

 無理はしないで!!」


「うん、そうする。

 僕も軽装過ぎたかなと反省してるんだ。

 今回の件で……

 まぁ、金子が現場に居たんだし、装備に関しては何か対策してくれるだろ」


「うん、そうだね。

 私、攻撃魔法より回復魔法とか使ってみたいな。

 拓郎君が怪我したらすぐ治してあげれるし」


「それも、鍛冶屋に要相談だな。

 とりあえず今日は、お風呂入ってから寝ろうと思ってたけど……

 今日も泊まるのかい?」


「今日は大丈夫。

 でも、明日はお願いするかも……」


「ほんと、ピエロ男の人形劇は無理して見ないほうがいいからね。

 精神的に病むよ……あんなの見てたら」


「うん。それじゃ部屋に戻るね」と言って、彼女は僕の部屋の物置から自室へ帰っていった。


 風呂入って寝よう……

 誰が襲撃されてるのかはすでにわかってるし。


 ……

 …………


 朝が来た……

 市民班からすると、勇者パーティに人狼が手をつけ始めた。

 それがわかる一日なハズだ。


 いつものように、ピエロ男がノリノリで朝のアナウンスを行っているので襲撃者が出たのだろう。

 身支度を行い僕は教室へと向かった。


 いつものように席に座ったが、ピエロ男が襲撃者の発表を始めない……何故だ?


「あーあー!!

 皆さまに、ご連絡がございます」と、ピエロ男が話し始めた。


「約二名ほど、自室に引きこもっているため会議が進められません。

 私ができるのは、その部屋の鍵を開ける事までです。

 是非、皆さまのご協力お願いします」


 うわっ……このピエロ男ひでぇ。

 市民班に私刑のチャンスを与えてるのか。


 僕、金子、山下さんは探索班なので、私刑には不参加だった。


 市民班のメンバーは、男性は小西を女性は御影を強制的に部屋から連れ出してきた。

 その際に、色々とあったことは言うまでもないだろう。


 小西の顔はひどいアザだらけになっているし、御影の服も軽く切り刻まれボロボロになっていた。

 そして、罪人のように縛られて、モニターの前の特等席に設置されている。


「はーい!! 皆さん揃いましたね。

 ダメですよー、勇者と魔法使いの二人が、戦線離脱しちゃ。

 見習いの方に代わってもらいますよ」と、ピエロ男が言った。


 つまり、小西と御影には死んでもらおうって話だ。

 市民班からコイツらを処刑して、早くクリアをしてしまおう的な声もちらほら出ており。

 僕自身、なんだろうな……と思う部分があった。


「あのさ、市民班はさ……探索班に攻略してもらってるのに、平気で私刑を行うんだな。

 コイツらも曲がりなりにも45階まではダンジョンの攻略してんだぞ?」


「いや、それでもコイツらは市民班にお金を落とさないじゃないか!!

 お前と違って!!」と、市民班の【料理人】の藤崎から声が上がった。


「いや、そう言う事じゃねーんだよな。

 巻島なんかは軽く死にかけた状態でも探索に出続けたし、僕なんかも先日に腕を切り落とされたよ。

 その覚悟もないヤツが、勝手に探索班を私刑にかけてんじゃねーよ。

 何が殺すだふざけんな!! 市民班にそんな権利あるわけないだろうが」


「なんだよ!!

 お前は小西達の味方すんのかよ!!」


「いや、お前らが私刑するのが不当だって言ってんだよ。

 別に、コイツらが会議に参加せずとも、コイツらは人狼に殺されるだろうが。

 ピエロ男も余計な事でクラスを煽んじゃねーよ!!」


「ウェヒヒヒ、サーセン!!

 話も片付いたみたいだし、楽しい人形劇の始まり始まり!!」


 ……と、微塵も楽しい要素がない人形劇が始まった。

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