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30.探索班の脱落と新探索班の結成

 人狼会議の時間だと言うのに、山下さんが僕の部屋にいるって言うのは不思議な感じだ。


 モニターを再びつけなおして、今日の襲撃相手を真剣に選んでいた。

 僕のその姿を彼女に一部始終みられていた。


 僕は今日の襲撃相手の目星は既につけていた。


 名取と巻島の【守り手】二人がカミングアウトしたのだ。

【占い師】の占い結果も野瀬の利敵により、市民班への占いが回りきっていない。


 この状況で、僕は【静寂なる狼】から【凶悪なる狼】へと役職替えを行う。

【守り手】を失った、御影と小西の恐怖する姿が、今にでも想像できそうだ。

【守り手】は三人いるはずだが、カミングアウトは二人だったので処刑で死んだか、すでに襲撃された人物だと()()した。


 僕は役職の変更を行い、本日の襲撃相手を名取と巻島の取り巻きコンビを選択した。

 襲撃相手を選択すると、いつものようにモニターにピエロ男が映った。


「やぁ!! 占い師への結果を【黒】に変える勇気を見せたんだね!!

 あと、二人位は【白】でいられたのに……」


「それでも……

 このタイミングで【守り手】二人同時に失った方が精神的にクルだろ。

 僕としても、アイツらを許す気は微塵も無いしな。

 それに、僕も二度程、吊り押されるているし。勝負は勝負だ」


「そこの市民班の占い師ちゃん、人狼君の暴挙を止めなくて良いのかい?」


「私は拓郎君が言ってくれた言葉を信じてますから」


「ほう、さよけ……

 ここで占い師ちゃんが裏切って、人狼君が絶望する姿も見てみたいなぁ」


「僕は彼女を信じている。

 彼女に裏切られるくらいなら……」と、言葉を濁した。


「それで、二人同時に襲撃なんだけど演目はどうするの?

 何か提案はないのかい人狼君。

 前回みたいに、みんなの反応がある話がいいねぇ」


「また人形劇だろ」


「もちろん」


「僕が提案しなければ?」


「すっごくファンシーな感じに仕上げてみせるよ」


「……と、まぁ山下さん。

 人狼の僕としては前回はこんな感じで困ってたわけだ」


「えぇ……」と、言葉を言って彼女は察してくれたみたいだ。


「二人か……

 二人同時って形なら【リジー・ボーデン】かな」


「うわぁ……君もひどい人狼だねぇ。

 クラスメイトの惨殺を望むのかい?」


「普通に襲撃しても惨殺してんじゃねーか」


「あぁ、人狼君のお父さん、お母さん、息子さんがグレちゃってますよーー!!

 斧持って40回と41回襲撃されちゃいますよーー!! あひゃひゃひゃひゃ!!」


「人形劇でファンシーにされて、ターゲット連中の思考に余裕持たれる方がよっぽど迷惑だしな」


「あらあら、私はみんなが同じような襲撃映像じゃ面白くないだろうと趣向をこらしてるのにヒドイなぁ」


「もう僕は、最終盤面にまで来てると思っているから。

 立ち止まる気は微塵も無い。

 この問題を片付けて、残りのクラスメイトを皆救ってみせる」


「それに襲撃された人間や、処刑された人間は含まれていない訳だ」と、ピエロ男が煽ってくる。


「僕はアイツらを人だと思いたく無い……

 アイツらは人の皮を被った何かだ!! 躊躇などするものか」


「占い師ちゃん、この子の心は壊れちゃってるけど良いのかい?

 人として殺してあげるのも優しさだと私は思うよ!!」


「拓郎君は壊れてませんよ、優しい心を持ってます!!

 彼が考えた上での行動ですし。

 小西君達に任せると、もっと酷いことになるのがわかってますから」


「あらあら、このクラスの【勇者】は相当不甲斐なかったみたいだねぇ……。

 普通にやってれば、英雄扱いで色々美味しい役職なのにねぇ。

 ()()()()()の【勇者】なんかは女をとっかえ引っ換えして遊んでたのにねぇ」


「ん? 他のクラスって言ったか?」と、僕が聞いたら。


「おっと、口が過ぎたみたいだね。

 それじゃ、今日はこの辺でさようならー!!」


 ……と言って、ピエロ男はモニター外へ消えていった。


「……と、まぁ、こんな感じに一人で行う人狼会議にあのピエロ野郎はチャチャ入れに来るんだよ。

 もうね、心が荒んで仕方ないよ」


「人狼も大変なんだねぇ……。

 探索もしてるし更に大変なのかな」


「そう、探索に市民班が誰も参加しようとしないのも、小西達をつけあがらせた原因かなぁ。

 もしそうじゃなかったら、僕も市民班の処刑や襲撃簡単にはできなかったし。

 けど、その選択をできた僕はピエロ男の言った通り既に壊れてるのかもしれない」


「大丈夫……」と言って、彼女は僕を抱擁してくれた。


「や、山、山下さん!?」と、僕は急な抱擁にドモってしまった。


「拓郎君は優しい人だよ、壊れていないから安心して」と言ってくれた。


 僕はその言葉に安堵して、彼女の優しさに包まれたまま眠りについた。


 ……

 …………


 僕は、誰かの気配を感じて目を覚ました。


 僕のベッドに山下さんが一緒に寝ている……?

 果て?何があったっけ?

 彼女の服装が乱れているわけではないので、ナニカを致した訳では無いみたいだ。


 あぁ、昨日の出来事を思い返すと……

 僕が軽く泣き言を言ったら彼女が抱擁して落ち着かせてくれたんだ。

 それで、僕はそのまま眠りについたんだな。


 クラスメイトに対する処刑や襲撃で、僕の心は本当に弱っているのかもしれない。

 それでも、歩みを止めるわけにはいかない。


 僕が彼女を無事に帰還させる……と、僕は彼女の寝顔を見て再び決意を決めるのだった。


 そして僕は自室に彼女を残し、探索に出る準備を始めた。

 自室から教室へ移動すると、鍛冶屋の金子が僕の装備を準備して待ってくれていた。


「よっ!!

ウチのクラスの稼ぎ頭っ!!」と金子から茶化された。


「はいはい。

新装備作ってくれたみたいだな」


「おう!! アローシールドの盾の部分の材質を強化して、弓部分も扱いやすくしてあるぜ!!」


「いやぁ、この盾は本当助かってるよ」


「だろぉ!!

 オレの最高傑作かもしれない!!

ワハハハハ!!」


「けど金子、オマエ人狼のターゲットに上がってなかったか?

 なんで、そんなに明るいんだ? 小西達は軽くお通夜状態だろ?」


「名取に言われて、佐々木に仕方なしに投票しちまったのは事実だし。

 オレが殺されても仕方ないが【鍛冶屋】のオレが仕事しなきゃ、クラスメイトを助けれねーだろ」


「そっか、強いじゃん金子。

 小西なんかより、オマエが【勇者】だったら良かったよ」


「ハハハ!! それもいいねぇ!!

 ……という冗談は置いといて、いつもだったら既に来ている。

 小西達がまだ来てないんだよ」


「なんかあったのかな?」と、ワザとらしくすっとぼけておいた。


「いや、アイツらのパーティの誰かが襲撃されたんだろ。

 結局アイツらは45階から階層進めれてないし、人吉は今回で46階位まで攻略を目指すんだろ?」


「まぁその予定だね」


「こんなことなら……

 佐々木とお前に、オレ達の命運賭ければ良かったよ。

 もし、生きて帰れてもギャンブルだけは、やらないようにしとかないとな」


「まぁ、人狼も鬼じゃないだろう。

 佐々木に挙手した十三人がターゲットだけど。

 十二人の処刑や襲撃がクリア条件みたいだし、金子が本当に反省してるんなら生き残れるかもしんないな。

 少なくとも、パーティが死んだからと言って探索に行かないやつは、市民班から私刑にされるんじゃ無いか?」


「なぁ?

 今からでも探索班に入るのって可能か?」


「はっ? 来るの?

 まぁ止めはしないけど安全マージンとって、一度41階あたりでパワーレベリングすればいけると思うけど……」


「探索で死んだなら、その時はその時だ!!

 オレなりに佐々木に対して罪滅ぼしがしたい。

 連れて行ってくれるか? 人吉」


「仕方ねえなぁ……」


 僕は金子の熱意に推されパーティへの同行を許可した。


「あーー!!拓郎君、早いよー!!

 ちょっと待ってーー!!」と、山下さんも教室に現れた。


「えっ? どうしたの?」


「昨日の夜、拓郎君の話を聞いてから。

 私も君について行くって決めたの」


「えっ!? 昨日の夜?

 人吉、、オマエ……山下さんとそんな関係なのか!?」


「違う!! 金子。

 オマエが思ってるような事は何もなかった!!」


「わかってるよ。

 人吉に、そんなことできる度胸はなさそうだもんな」


「えーと、本当に二人とも探索班に入るの?」


「一人きりの拓郎君が見てられないからついてく……」


「罪滅ぼしのためだ……」


「二人とも決心してるみたいだし、仕方ないね。

 僕がタンク兼アタッカーで、状況判断するから二人は絶対に無理しないでね。

 無理に倒さなくても、パーティ組んでれば経験値入るから無理はしないでくれよ」


 こうして、探索班に新しいメンバーが加入した。

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