25.ステータス
僕の発言が気に食わなかったらしく……
「40階だと!!
嘘を言うな!!」と、小西が激怒してきた。
「それは市民班に聞けばわかるんじゃないか?
僕は市民班に稼ぎを渡してるからね」
「嘘だっ!! 信じないぞ!!」と、小西が言い始めた。
「おーい!! ピエロ男ーー聞いてるかー!!
聞いてるなら返事してくれー!!」
僕はゲームマスターに語りかけると、案の定あらわれてくるのがピエロ男である。
「なんだいなんだい? 公正公平なゲームマスターの私になにかようかい?」
「僕、個人でステータスって見れないんだけど、見る方法はあるのか?」
「あーりますよぅ〜」と、嬉々としてピエロ男が言ってきた。
「方法は簡単!!
その日の夜の占いは出来なくなるが、自分がお願いしたい占い師にステータスを占ってもらうだけ。
あいにく二人の占い師がいるんだし、人吉君と小西君が好きな方の占い師を選んでお願いしに行くといいさ」
「あぁ、それなら。
野瀬さんは僕の事を嫌ってるみたいだし。
山下さんお願いできるかな」
「じゃあ、僕は野瀬さんだね」
「あっ、そうだ!!
ステータス結果は占い師のみ知ることができて、その人の真の役職も解っちゃうよー!!」
え? マジ? 詰んだんじゃね?
内心の所、しまったぁぁぁ〜〜!! と、叫び出したいところだが平常心で僕は答えた。
「今日の昼の会議の処刑者はなしで……
次の会議は占い師による僕達の【ステータス】の開示後、昼の会議を進めよう」
クッソ!! また、吊り位置だ。
今度は逃げれないぞ。
僕としても市民班の役職持ち以外のメンバーで、ターゲットはすでにいないし市民班だと役職持ちは金子がターゲットなだけだ。
鍛冶屋にはもう少し働いてもらいたいので、まだ生かしておきたいし……
このタイミングで野瀬を襲撃するのは得策じゃないし、バカ勇者どもは頭お花畑な【守り手】3人に守られている。
誰も襲撃できない状態になっていたので、これは仕方ない流れなのかもしれないと僕は考えを堂々巡りさせていた。
「拓郎君。 夜の時間に私の部屋を訪ねて来てね」と、山下さんからお誘いの言葉を受けたが……
ある種の死刑宣告で、なんとも言えない気持ちになった。
「あぁ、うん」と、僕は答えておいた。
そして、夜の自由時間がやって来た。
誰かと、この時間を過ごすのって久しぶりだな。
ステータスの開示しなきゃ、僕も詰んじゃうし。
それなら、山下さんに決めてもらおうと覚悟を決めた。
占い師の彼女の部屋の前に僕は移動した。
そして、僕は覚悟を決めて部屋の扉をノックした。
コンコンコン……と、扉をノックした。
「はい、どうぞ」と、言って彼女は扉を開けてくれた。
「お邪魔します」
「いらっしゃい、拓郎君」
部屋に入ると、女の子の部屋らしく綺麗に整頓されていた。
僕が緊張している事に気づき山下さんは、こちらを見て笑顔で返してくれた。
くっ……可愛い……
それにお風呂上がりなのか、顔が赤いし、いい香りがする。
僕が死ぬ前に……彼女を……力づくで……
いや、ダメだ、ダメだ。
そんな事をするくらいなら、僕も彩子さんと同じように……
「お好きな椅子に座ってね」
「あぁ、どうも」と言って、僕は彼女に勧められた椅子に座った。
「今日は占うんじゃなくて、拓郎君の【ステータス】を確認するんだよね?」
「はい、お願いします」
「最初に確認しておいていい?」と、彼女が質問してきた。
「ん? 何?
別にいいけど」
「拓郎君……
人狼でしょ」と、彼女に言い当てられた。
【ステータス】確認を行う前に、見抜かれてたのか。
「なんで、そう思うの?」と、僕は問いかけた。
「襲撃された人と処刑された人は、みんな佐々木君に投票した人だった」
「それは、佐々木の友人が他にいるかもしれないよ」
「絶対に違うと思う。
拓郎君は佐々木君が吊られた時に気丈に背筋伸ばして振舞ってたけど、目に涙浮かべて佐々木君のいた場所を見つめてたもの」
「いや、僕もみんなと同じように自分の願いを書いたクチでさ」
「それも違うと思うよ。
拓郎君は優しいから、私達の為にいまだに一人で頑張ってるし。
私は拓郎君達が皆を助けたかったの知ってるもの」
「ハァー!! 敵わないな。
山下さんには」
「やっぱり……」
「ご明察の通り僕が【人狼】だ。
佐々木の仇を討ちたかったが、ここまでかな」
「なんで? 私を殺せばいいじゃない」
「絶対に嫌だ!! 君を殺すなんて僕にはできないよ。
正直、小西達に探索班として跡を託すのが心残りだけどね。
君だけは、無事に元の世界に返したかった」
「そっか、それじゃ。
【ステータス】の確認しましょう」
「え?【ステータス】確認したって無意味なんじゃ?」
「小西君達ってひどいよね。
自分達は守られてるからって市民班は適当に扱って、自分達は蚊帳の外で平気な顔して市民班の処刑に投票してるのよ」と言いながら、彼女は【ステータス】の確認を行った。
「わぁー!!すごい!!
本当に一人で40階まで、探索してたんだね。
レベルも121って、すごいのかな?」
「121? 限界は99じゃないのか……。
それと役職はどうなってました?」と僕は言った。
「静寂なる人狼だったよ」
「そっか……」
市民側の人間に僕の役職がバレてしまった。
これで、人狼側の敗北が確定した。
「一つ、質問していいかな? 拓郎君」
「うん」
「佐々木君の仇をとったら、どうするつもり?」
「僕は明日吊られると思うけど……
そうだね。佐々木の気持ちを継ぎたいかな。
みんなを無事に元の世界に返してあげたい」
「そっか……」
「そしたら、お休み。
最後に君と話せて嬉しかったよ」と、僕は言って彼女の部屋から退散した。
そのあと人狼会議の時間になったが、【守り手】三人のせいで小西達に襲撃する事が出来ないので今日は大人しく襲撃をしない事にした。
くそッ、、【守り手】が誰かわかってれば手が打てるのに……
ターゲット以外のグレーを襲撃すれば、僕はただの人狼になってしまう。
僕は結果を受け入れるつもりだった。
そして、死の恐怖の為に眠れぬまま夜が過ぎていき、僕は死の恐怖に怯えていだが、それでも自ら命を絶つことは出来なかった。




